2014/2/2 up

大人の英文法067−不定詞の意味上の主語  

 

不定詞の意味上の主語とは,次のようなものを言います。

(a) I want you to decide now. (私は君に今決めてもらいたい)

この文は「私は君が今決めることを欲する」ということ。不定詞(to decide)が表す動作の

主体は I ではなく you です。したがって,you が to decide の意味上の主語です。

ここで,わざわざ「意味上の主語」と言うのはなぜでしょうか。

それは,この文の you が文全体の主語(S)ではないからです。S はもちろん I ですね。

このように「準動詞(不定詞・動名詞・分詞)が表す動作や状態の主体≠S(文全体の主語)

のときは,前者を意味上の主語として準動詞の直前に置きます。逆に,両者がイコールの

ときは,準動詞の前には何も置きません。言い換えれば,準動詞の前に意味上の主語が

ないときは,準動詞が表す動作や状態の主体はSに一致します。

(b) I want to decide now. (私は今決めたい)

この文では不定詞(to decide)の直前に意味上の主語がないので,「決める」主体は S,

つまり「私」だと解釈されます。


 

不定詞の直前に置かれる意味上の主語には,次の3つのタイプがあります。

@ 目的格の名詞・代名詞 (上の例文(a)のyouがそれに当たります)

A for+目的格の名詞・代名詞

B of+目的格の名詞・代名詞

Bについては069で取り上げます。ここではAの例をいくつか挙げておきます。

(c) It is necessary for you to practice harder.

  (君はもっと熱心に練習する必要がある)

意味上の主語+名詞的用法の不定詞〉の例。次の2つの解釈があります。

@ it(形式主語)= to practice harder という解釈 : この場合の訳語は「もっと

    熱心に練習することが君にとって必要だ」です。

A it(形式主語)= for you to practice harder という解釈 : この場合の訳語は

   君がもっと熱心に練習することが必要だ」です。

    【参考】 したがって,文法的には次のどちらの文も可能です。(形としては不自然ですが)

@ → To practice harder is necessary for you.

A → For you to practice harder is necessary.

(d) There are many reasons for young people to change jobs.

  (若者が転職するのには多くの理由がある)

 意味上の主語+形容詞的用法の不定詞〉の例。for 以下は「若者が転職する

(ための)」で,その全体が前の many reasons を修飾しています。

(e) This English book is easy enough for beginners to read.

  (この英語の本は初心者でも読めるくらい易しい)

 意味上の主語+副詞的用法の不定詞〉の例。for 以下は easy (enough) を

修飾しています。 


 

余談ですが,「このカレーは辛すぎて私には食べられない」は,英語でどのように

表現すればいいでしょうか。「英作文のためのやさしい英文法」(岩波ジュニア新書)

にも似たような記事を書きましたが,ちょっと考えてみてください。

 

これが学校のテストの問いなら,出題者は次のどちらかを正解と考えているでしょう。

(1) This curry is too hot for me to eat.

(2) This curry is so hot that I can't eat it.

これらはもちろん正しい文ですが,どちらかと言えば(1)がベターです。so 〜 that ...

はやや固い表現であり,会話では that を省略して This curry is so hot I can't eat it.

のように言う方が普通です。

【参考】 「(2)では文末に it が必要だが(1)の文末にはitを置かない」という点が大事だと学校では教えます。

     確かにそのとおりですが,私はこのようなことは瑣末な問題だと思います。(1)で文末に it をつけても,

     相手に誤解されることはありません。

 

では,ベストアンサーを示します。「このカレーは辛すぎて私には食べられない」という

内容を英語で表現したいとき,皆さんに最初に思い浮かべてほしいのは次の文です。

(3) This curry is too hot for me.

理由は説明するまでもないと思いますが,カレーは食べるものに決まっていますから,

「このカレーには私には辛すぎる」で十分であり,「私が食べるには」とわざわざ言う

必要はありません。もちろん(1)を使ってもかまわないのですが,英語を話すときは

できるだけシンプルに表現するよう心がける(言わなくてもいいことは省く)ことが

表現力を高めるための重要なポイントです。

 

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