074 では,It seems that he ...→ He seems to ...
のような「主語繰り上げ構文」を説明しました。
これと同様に「目的語繰り上げ構文」という形もあります。
「ジーニアス英和辞典」(G4)では,p.737の
find の項に次のような例が出てきます。
(1) I found
that John was boring. (私にはジョンは退屈な人であることがわかった)
S
V
S' V'
(2) I found John
to be boring. (私は(自分で判断して)ジョンが退屈な人だとわかった)
S
V
O
C
(2)のJohnのように,that節中の主語が文全体の目的語になった形が「目的語繰り上げ構文」です。
(1)と(2)の違いについて,G4では次のように説明されています。
繰り上げ構文の意味特性として,「直接的なかかわり」がある。英語は一般的傾向として,
対象となっている「人」や「もの」と主語が実際に直接的かかわりがある場合は,それを
直接目的語とするが,間接的にしかかかわらない場合はワンクッション置いて
that節
中の主語で表す。
例えば hear
では直接聞いたことは目的語とするが,伝聞で耳にしたことはthat節で表す。
この「直接的なかかわり」の意味の差により,繰り上げ構文は個別的・主観的であり,
that節を用いた(1)のような文は普遍的・客観的という違いが生じる。
繰り上げ構文(2)は「私(I)」がジョンと実際に会って感じた場合などの直接的なかかわりの
中で判断を下した文であるが,(1)にはそのような判断を下すといった含みはなく,外的な
証拠などを基に客観的にそうわかったという場合になどに用いられる。
ただし日常的な文脈では,細かい意味の差異は無視されて,フォーマルに響く(2)の不定詞
構文を避けて,that節を取る(1)の構文がよく用いられる傾向がある。
G4のこの説明にはいくつかの重要な情報が含まれていますが,ここでは下線を引いた箇所に
着目してください。(1)と(2)を再掲します。
(1) I found
that John was boring. (私にはジョンは退屈な人であることがわかった)
(2) I found John
to be boring. (私は(自分で判断して)ジョンが退屈な人だとわかった)
この2つの形のうち,会話では(1)の方が好まれることがわかります。
なお,会話では接続詞のthatは省略することが多いので,(1)
は普通は I found John was boring.
と言います。また,(2)の to be は省略して I
found John boring. と言うことができます。
次の例も同様です。
(a) I think (that) the
third plan is the best. 〈口語的〉
(a') I think the
third plan to be the best. 〈フォーマル≒文語的〉
(私は第3案が最善だと思います)
目的語繰り上げ構文をとる主な動詞として,G4には次のような語が挙げられています。(抜粋)
believe(信じる),think/suppose/consider(思う),expect(予想する),feel(感じる),
find(わかる),imagine(想像する),know(知っている),understand(理解する)
これらの動詞は〈S+V+O+(to be) C〉の形で使うことができますが,to
be 以外の不定詞を置く
場合もあります。
(b) I expect (that) he'll
come on time.
(b') I expect
him to come on time.
S V
O C
(彼は時間通りに来ると思う[予想する])
この例では,(b')は〈S+V+O+to do〉の形になっています。
そして him to come は「彼が来ること」
という意味的関係を持つので,〈O+C〉だと考えられます。075
で示した文と比べてみましょう。
(c) I want
Tom to buy some fruit. (私はトムに果物を買ってきてもらいたい)
S
V
O C
(b')と(c)は同じ構造を持つと言えますが,(c)は that節を使って言い換えることができません。
× I want (that) Tom will buy some fruit.
そこで結局,〈S+V+O+to do〉の形で使う動詞には次の3タイプがあることになります。
@ tell
型 : I'll tell him to
come. (彼に来るように言います)
S V O O
Awant
型 : I want him to
come. (彼に来てもらいたい)
S V O C
B expect
型 : I expect him to
come. = I expect (that) he'll come. (彼は来ると思う)
S V
O C
そして B型の動詞は,話し言葉では
that節を後ろに置く形が好まれる(thatは省略する)と
いう点を覚えておきましょう。