2014/7/6 up

大人の英文法086−分詞形容詞 

 

分詞形容詞とは,分詞が形容詞に転化したものを言います。

つまり,形は現在分詞・過去分詞のように見えるけれど,実質的には形容詞である語

(辞書で形容詞と分類されている語)が分詞形容詞です。たとえば次のようなものです。

 

(a) History is interesting. (歴史はおもしろい)

(b) I'm interested in history. (私は歴史に興味がある)

 

これらの語は, interest(〜の興味を引く)という動詞から生まれたものです。

たとえば History interests me. で「歴史は私の興味を引く」という意味になります。

 

したがって interesting のもともとの意味は「人の興味を引くような」,interested は

「興味を引かされている」ですが,これらは実際にはもはや分詞ではなく,純粋な

形容詞だと考えられます。

 

その根拠としてよく引用されるのが,「very と much のどちらで修飾するか」の違いです。

一般に,形容詞は very で,分詞は much で修飾するとされています。

 

・ He is very [×much] rich. (彼はとても金持ちだ)

・ Patience is much [×very] needed for teaching. 

  (教えることには忍耐が非常に必要とされる)

 

このように,rich(形容詞)は very でしか,needed(過去分詞)は much でしか修飾できません。

では,(a)(b)の場合はどうでしょうか。

 

(a') History is very [×much] interesting. (歴史はとてもおもしろい)

(b') I'm very [×much] interested in history. (私は歴史にとても興味がある)

 

このように interesting や interested は,muchでなく very で修飾します。

よってこれらはrich型の語(形容詞)であり,needed 型の語(分詞)ではないと言えるわけです。

needed と interested はどちらも形は過去分詞のように見えますが,前者は過去分詞,後者は

形容詞です。

    【参考】過去分詞と形容詞の中間的な性格を持ち,very と much のどちらでも修飾できる語もあります。

 

※「ウィズダム英和辞典」には,much で修飾する主な過去分詞として,needed のほかに

    loved,appreciated,improved,admired,reduced,discussed が挙げられています。

 

一般に,「〜の感情を引き起こす」という意味の他動詞の分詞は,純粋な形容詞と考えられます。

たとえば exciting(わくわくする),bored(退屈して)など。これらは very で修飾できます。

また tired(疲れている)も,もともとは tire(〜を疲れさせる)という意味の動詞から生まれた

形容詞です。さらに born は,今日ではほとんど I was born in 1990. (私は1990年に生まれた)

のような使い方をしますが,もともとは bear(〜を産む)という動詞の過去分詞でした。

 

要するに,分詞形容詞は「分詞」ではなく「形容詞」です。

 

そこで,前述の「形容詞は very で,分詞は much で修飾する」というルールに立ち返って

みましょう。実は,この表現は不正確です。次のように表す方が事実に即しています。

 

@形容詞(分詞形容詞を含む)で修飾する。

A過去分詞は much で修飾する。

 

このルールの方が正確なのは,現在分詞は very でも much でも修飾できないからです。

次の例で確認してください。

○ His health is much improved. (彼の健康は大いに改善されている)

× His health is much improving. (彼の健康は大いに改善しつつある)

このように improved(過去分詞)は much で修飾できますが,improving(現在分詞)は much では

修飾できません。正しい文は His health is improving very much. です。この文の very much は

動詞(improve)を修飾しているのであって,現在分詞(improving)を修飾しているのではありません。

 very が現在分詞を修飾する例として The movie is very exciting. のような文を挙げている学習

文法書もありますが,この exciting は上述のとおり純粋な形容詞であり,分詞ではありません。

 

なお,「形容詞は very で修飾する」とは,「すべての形容詞が very で修飾できる」という意味では

ありません。 たとえば He is very dead.(彼はとても死んでいる?)はナンセンスです。

同様に,たとえば a broken glass(割れたコップ)を a very broken glass とは言えません。

もちろん a much broken glass も誤りです。(very/much の詳細は副詞の項で取り上げます)


 

分詞と形容詞の関係について,参考までに「こんな考え方もある」という例を補足しておきます。

「1億人の英文法」(東進ブックス)には,次のような説明が出てきます。(p.447)

この項目は「修飾位置での動詞-ing形」という大項目で,「A 説明型のing形(進行形)」という

タイトルがついています。

Lucy is putting on her make-up. (ルーシーは化粧してます)

    -ingを説明型(be動詞など)で使ってみましょう。-ingの「生き生きとした躍動感」が主語を

    説明しています −「〜している」。  この形は「進行形」とよばれていますが,単に -ing が

    修飾語として使われている形です

下線部の説明に着目してください。上の文は学校文法では現在進行形ですが,大西先生は

この文の putting を「修飾語」だと説明しています。この本では修飾語の働きを「前から限定,

後ろから説明」の2つに分けており,上の文では Lucy の後ろに修飾語が置かれているので

Lucy を説明している,というわけです。要するに上の文の putting は,形容詞と同じだという

のが大西先生の説明です。Lucy is pretty. も Lucy is eating. も,どちらもルーシーを説明して

いる点では変わりないじゃないか,と言われれば,それはそれで一理あると思います。

この説明をつきつめれば,すべての分詞は形容詞(または副詞)の一種であるとも言えます。

文法理論の組み立て方は人それぞれであり,学校で習った文法が絶対ではないということですね。

 

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