分詞形容詞とは,分詞が形容詞に転化したものを言います。
    つまり,形は現在分詞・過去分詞のように見えるけれど,実質的には形容詞である語
    (辞書で形容詞と分類されている語)が分詞形容詞です。たとえば次のようなものです。
     
    (a)       
    History is interesting.       
    (歴史はおもしろい)
      
    (b)       
    I'm interested       
    in history. (私は歴史に興味がある)
      
     
      
    これらの語は,       
    interest(〜の興味を引く)という動詞から生まれたものです。
      
    たとえば       
    History interests me.       
    で「歴史は私の興味を引く」という意味になります。
      
     
      
    したがって       
    interesting       
    のもともとの意味は「人の興味を引くような」,interested       
    は
      
    「興味を引かされている」ですが,これらは実際にはもはや分詞ではなく,純粋な
      
    形容詞だと考えられます。
      
     
      
    その根拠としてよく引用されるのが,「very       
    と much のどちらで修飾するか」の違いです。
      
    一般に,形容詞は       
    very で,分詞は much で修飾するとされています。
     
     
     
    ・      
    He is very [×much] rich. (彼はとても金持ちだ)
     
    ・       
    Patience is much [×very] needed for teaching. 
      
            
    (教えることには忍耐が非常に必要とされる)
      
     
      
    このように,rich(形容詞)は       
    very でしか,needed(過去分詞)は much       
    でしか修飾できません。
      
    では,(a)(b)の場合はどうでしょうか。
      
     
      
    (a')       
    History is very [×much] interesting. (歴史はとてもおもしろい)
      
    (b')       
    I'm very [×much] interested in history. (私は歴史にとても興味がある)
      
     
      
    このように       
    interesting や interested は,muchでなく very で修飾します。
      
    よってこれらはrich型の語(形容詞)であり,needed      
    型の語(分詞)ではないと言えるわけです。
     
    needed       
    と interested      
    はどちらも形は過去分詞のように見えますが,前者は過去分詞,後者は
     
    形容詞です。
     
              
    【参考】過去分詞と形容詞の中間的な性格を持ち,very       
    と much のどちらでも修飾できる語もあります。
      
     
      
    ※「ウィズダム英和辞典」には,much       
    で修飾する主な過去分詞として,needed のほかに
      
              
    loved,appreciated,improved,admired,reduced,discussed       
    が挙げられています。
      
     
      
    一般に,「〜の感情を引き起こす」という意味の他動詞の分詞は,純粋な形容詞と考えられます。
     
    たとえば   
    exciting(わくわくする),bored(退屈して)など。これらは   
    very で修飾できます。
     
    また       
    tired(疲れている)も,もともとは tire(〜を疲れさせる)という意味の動詞から生まれた
     
    形容詞です。さらに       
    born は,今日ではほとんど I was born in 1990. (私は1990年に生まれた)
     
    のような使い方をしますが,もともとは       
    bear(〜を産む)という動詞の過去分詞でした。
      
     
     
    要するに,分詞形容詞は「分詞」ではなく「形容詞」です。
     
     
     
    そこで,前述の「形容詞は       
    very で,分詞は much で修飾する」というルールに立ち返って
     
    みましょう。実は,この表現は不正確です。次のように表す方が事実に即しています。
     
     
     
    @形容詞(分詞形容詞を含む)で修飾する。
     
    A過去分詞は       
    much で修飾する。
     
     
     
    このルールの方が正確なのは,現在分詞は       
    very でも much でも修飾できないからです。
      
    次の例で確認してください。
            
    ○ His health is much improved.       
    (彼の健康は大いに改善されている)
            
    ×       
    His health is much improving. (彼の健康は大いに改善しつつある)
            
    このように improved(過去分詞)は much       
    で修飾できますが,improving(現在分詞)は much では
            
    修飾できません。正しい文は His health is improving very       
    much. です。この文の very much は
            
    動詞(improve)を修飾しているのであって,現在分詞(improving)を修飾しているのではありません。
           
     very が現在分詞を修飾する例として The       
    movie is very exciting. のような文を挙げている学習
           
    文法書もありますが,この exciting       
    は上述のとおり純粋な形容詞であり,分詞ではありません。
            
     
            
    なお,「形容詞は very     
    で修飾する」とは,「すべての形容詞が very    
    で修飾できる」という意味では
          
    ありません。 たとえば He is very dead.(彼はとても死んでいる?)はナンセンスです。
          
    同様に,たとえば     
    a broken glass(割れたコップ)を a very     
    broken glass とは言えません。
          
    もちろん a much broken glass も誤りです。(very/much   
    の詳細は副詞の項で取り上げます)
          
  
        
     
     
   
    分詞と形容詞の関係について,参考までに「こんな考え方もある」という例を補足しておきます。
  
    「1億人の英文法」(東進ブックス)には,次のような説明が出てきます。(p.447)
  
    この項目は「修飾位置での動詞-ing形」という大項目で,「A  
    説明型のing形(進行形)」という
  
    タイトルがついています。
  
    ・ Lucy is putting  
    on her make-up. (ルーシーは化粧してます)
  
        -ingを説明型(be動詞など)で使ってみましょう。-ingの「生き生きとした躍動感」が主語を
  
        説明しています  
    −「〜している」。  この形は「進行形」とよばれていますが,単に  
    -ing が
  
        修飾語として使われている形です。
  
    下線部の説明に着目してください。上の文は学校文法では現在進行形ですが,大西先生は
  
    この文の putting  
    を「修飾語」だと説明しています。この本では修飾語の働きを「前から限定,
  
    後ろから説明」の2つに分けており,上の文では Lucy  
    の後ろに修飾語が置かれているので
  
    Lucy  
    を説明している,というわけです。要するに上の文の  
    putting は,形容詞と同じだという
  
    のが大西先生の説明です。Lucy is pretty. も Lucy is eating.  
    も,どちらもルーシーを説明して
  
    いる点では変わりないじゃないか,と言われれば,それはそれで一理あると思います。
  
    この説明をつきつめれば,すべての分詞は形容詞(または副詞)の一種であるとも言えます。
  
    文法理論の組み立て方は人それぞれであり,学校で習った文法が絶対ではないということですね。