2014/11/30 up

大人の英文法089−分詞構文とは 

 

「アトラス総合英語」の制作過程で,私が「著者としてここは譲れない」と主張し,編集部と

激しく意見を戦わせた学習項目がいくつかありました。その1つが分詞構文です。

私たちが高校生の頃,分詞構文は次のように教えられていました。今でもこの方式の説明を

行っている参考書が多数あります。

(a) As he was sick, Tom didn't go to the party.

(b) Being sick, Tom didn't go to the party.

(病気だったので,トムはパーティーに行かなかった)

上の例で言えば,高校生の頃の私(たち)は分詞構文を次のように理解させられていました。

@ (a)を「変形」すると(b)になる。(その変形にはいくつかのルールがある)

A (b)のように分詞(being)に接続詞(と述語動詞)の働きをさせる形を分詞構文と言う。

B (b)の分詞(being)は「理由」を表す。そのほか,分詞構文は時・譲歩・条件などを表す。

私の考えでは,上の@ABの説明はすべて間違いです。

桐原の編集部からは「学校では上のような説明が一般的に行われているので,それと大幅に違う

説明をすると現場が混乱する」と言われました。教育的(あるいは営業的)な観点からは確かに

そうだろうと思いますし,私が編集者の立場でも同じことを言うかもしれません。

しかし,「ここは譲れない」と強硬に主張して,著者の「わがまま」を通してもらいました。

アトラスでは,分詞構文の最初に次の例文を挙げています。

・She is in the kitchen, making a cake.

(彼女は台所にいるよ,ケーキを作りながらね)

著者としては,「分詞構文を接続詞を使って言い換えようとするのはナンセンスだ」ということを

強調したかったので,この文を最初に置きました。(この文は接続詞では言い換えられません)

 

ここから何回かにわたって,分詞構文の本質を説明していきます。

ただし,この先の説明は,必ずしもオーソドックスな文法書に書かれているとおりではありません。

いわば私流の「分詞構文論」のようなものです。英語の全体像のとらえ方に関する1つにヒントに

なる面もありますので,学校で学んだ知識はとりあえず忘れて,読んでみてください。


 

◆分詞で始まる句の働き

ここではシンプルに「句=2つ以上の単語がまとまった意味を表すもの」と考えておきます。

英語では一般に,句を名詞句・形容詞句・副詞句の3種類に分類します。

【参考】理屈から言えば,たとえば I have lost my key. の have lost は2語で1つの動詞の働きをしているので

         「動詞句」だと言えますが,伝統的に「動詞句」という言葉は使われていません。have lost は1つの V

        (述語動詞)と考えます。

参考までに1つずつ例を挙げてみましょう。

My dream is to become a soccer player. (私の夢はサッカー選手になることだ)

    ※my dream と to become a soccer player はどちらも名詞句。

・I want something to write with. (私は何か書くための道具がほしい)

    ※to write with は形容詞句。(something to write with は名詞句)

・I went to the library to borrow some books. (私は本を借りるために図書館へ行った)

    ※to the library と to borrow some books はどちらも副詞句。

これらの例からわかるとおり,不定詞で始まる句は,名詞句・形容詞句・副詞句のどれにでもなれます。

一方,分詞(現在分詞・過去分詞)で始まる句は,名詞句にはなれません。

(c) Who is that boy eating the hamburger? (ハンバーガーを食べているあの男の子はだれ?)

    ※ eating the hamburger は前の名詞(that boy)を修飾しているので形容詞句です。

(d) I saw the boss eating a hamburger. (上司がハンバーガーを食べているのを見た)

    ※ eating the hamburger は SVOCのCに当たるので,文法的には形容詞句です。

(e) I often drive eating a hamburger. (私はよくハンバーガーを食べながら車を運転する)

    ※ eating the hamburger は動詞(drive)を修飾しているので副詞句です。

一般には,(e)の eating the hamburger のような形を分詞構文と言います。

つまり,「分詞構文=分詞で始まる句が副詞の働きをするもの」と定義することができます。


 

◆これは分詞構文か?

では,次の文の下線部は,分詞構文だと言えるでしょうか?

(f) I spend Sundays golfing. (私は日曜日はゴルフをして過ごす)

(g) They are busy preparing for the party. (彼らはパーティーの準備をするのに忙しい)

学校英語では,次のような熟語(あるいは基本構文)として暗記させられるのが一般的です。

・spend+時間+〜ing = 〜して時間を過ごす

・be busy+〜ing = 〜するのに忙しい

しかし,(f)の golfing は spend (Sundays) を,(g)のpreparing 以下は are (busy) を修飾しているので,

文法的には副詞の働きをしていると言えます。よって,(f)(g)の下線部は分詞構文です。

後で説明しますが,〜ing で始まる分詞構文の本質的な意味は「〜しながら」です。

(f)は「私はゴルフをしながら日曜日を過ごす」,(g)は「彼らはパーティーの準備をしながら忙しくしている」

と考えることができます。

 

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