2015/7/11 up

大人の英文法100−所有格の関係代名詞(whose) 

 

ここで取り上げる関係代名詞は,下のピンク色の分類に入るものです。全体像は 097 を参照してください。

品詞分類 その関係詞が作る節 該当する関係詞 用法の分類 関係代名詞の格
関係代名詞 名詞節 what    
形容詞節 who/whose/whom/which/that 限定用法/補足説明用法 主格/所有格/目的格
副詞節 what    
関係形容詞 名詞節 what(/which)    
副詞節 which    
関係副詞 名詞節 when/where/why/how    
形容詞節 when/where/why 限定用法/補足説明用法  
副詞節 when/where    

     ※上の表では複合関係詞(whoeverなど)は省略しています。

 

098 の表をもう一度見てみましょう。

 

先行詞が人

先行詞が人以外

主格

(a) who/that

(b) which/that

所有格

(c) whose

(d) whose

目的格

(e) who(m)/that

(f) which/that

 

まず,上の表の(c)と(d)の例を1つずつ挙げます。それぞれ「人+whose」「人以外+whose」の形です。

(a) I have a friend whose father is a lawyer. (私にはお父さんが弁護士の友人がいる)

上の文の下線部は,前の名詞(a friend)の意味を限定しています。次のように考えてかまいません。

I have a friend.+His/Her father is a lawyer. (私には(1人の)友人がいる。彼[彼女]の父は弁護士だ)

下線部をwhoseに置き換えて先行詞(a friend)に続ければ,上の文になります。

(b) He works for a company whose name you know well. (彼は君が名前をよく知っている会社に勤めている)

先行詞(a company)に対して,You know its name well. という説明を加えたものです。この文の its を

whoseに置き換えて先行詞(a company)に続ければ,上の文になります。

 

このような文の一般形は,主に次の2種類です。

@ 先行詞+whose A+V [be動詞] = Vする[である]Aを持つ○○

A 先行詞+whose A+S+V= SがVするAを持つ○○

黄色の部分が関係詞節。その節中で,@の下線部はS,Aの下線部はOの働きをしています。

それをふまえて,上の2つの例をもう一度見てみましょう。

(a) I have a friend [ whose father is a lawyer]. (私にはお父さんが弁護士の友人がいる)

                                                 S             V         C

(b) He works for a company [ whose name you know well ]. (彼は君が名前をよく知っている会社に勤めている)

                                                            O                   S        V

このように,関係詞には次の2つの働きがあることを確認してください。

● 関係詞は,関係詞節(前の名詞を修飾する)の先頭に置く。

● その関係詞節の中で,関係詞(+名詞)はS・C・Oのどれかの働きをする。

 


 

◆ whose(関係代名詞)の実際の使用頻度について

 

「アトラス総合英語」でも触れていますが,次のように覚えておいてください。

 

● 関係代名詞の whose は,会話ではなるべく使わない方がよい。

 

書き言葉では whose は普通に使われますが,特に〈物+whose〉の形は「自分は使わない」と言う

ネイティブもいます。そういう人に理由を尋ねると,「だって,whoやwhoseは人間に対して使う言葉

じゃないか」と言います。つまりネイティブにとって,疑問代名詞の who(se) と関係代名詞の who(se) 

とは基本的に同じものだ,と認識されているわけです。

 

実際に,「whose を使わなければ表現できない内容」はそう多くありません。たとえば次のような文は,

下のように whose を使わない文で言い換えることができます。

・I have a friend whose father is a lawyer. (私には父親が弁護士の友人がいます)

  → One of my friends' father is a lawyer. (私の友人の1人の父親は弁護士です)

・The dictionary whose cover is torn is mine. (表紙が破れている辞書は私のです)

  → The dictionary with a torn cover is mine. (破れた表紙の辞書は私のです)

・This is a proverb whose meaning I don’t know. (これは私が意味を知らないことわざです)

  → This is a proverb (that) I don’t know the meaning of. (これは私が意味を知らないことわざです)

  → I don't know the meaning of this proverb. (私はこのことわざの意味を知りません)

なお,このような「シンプルな文への言い換え」は,whose以外の関係詞にも適用できます。

・I have an uncle who lives in Hokkaido. (私には北海道に住むおじがいる)

 → An uncle of mine lives in Hokkaido. (私のおじ(の1人)は北海道に住んでいる)

少なくとも「物+whose」の形は,「読んで理解する」ことができれば十分だと思います。

 

参考までに,私が以前「英語教育」誌の連載用に書いたものの抜粋を以下に添えておきます。

 

今回筆者は,ネイティブA氏(イギリス人)・B氏(アメリカ人)に,「〈物〉の後ろに関係代名詞whoseを置く形を使いますか?」と尋ねてみました。

その回答は,A氏がNo,B氏がYesでした。

さらにA氏は,「自分の出身のウェールズやスコットランドではwhoseを使うが,イングランドではたぶん違うだろう」と言い,

同僚のC氏(イングランド出身)を連れて来てくれました。

C氏は「自分は〈物+whose〉の形は決して使わない」と答えました。

A氏によれば,「関係代名詞のwhoseは(先行詞にかかわらず)あまり使わない」とのことでした。

次に3氏に次の例文を見せ,意見を求めました。

1 (a) Look at that mountain whose top is covered with snow.

  (b) Look at that mountain the top of which is covered with snow.

  (c) Look at that mountain of which the top is covered with snow.

  (d) Look at that mountain with a snow-covered top.

  (e) Look at that mountain with its top covered with snow.

A氏は「自分はa〜cは使わない。dが自然」と答えました。B氏は「b・cはformalな言い方,d・eは会話でも使える。

自分ならaを使う」と答えました。C氏は「aは使わない。自分はbを使う」と答えました。

次に,A・B両氏に次の各文の許容度を○(問題なし)・△(不自然)で判定してもらいました。

A氏は日常的にはwhoseを使わないので,「書き言葉では」という前提で考えてもらいました。

(  )内はA氏・B氏の判定です。

2 (a) Look at that mountain whose top is covered with snow. (1aを再掲)(△/○)

  (b) That mountain whose top is covered with snow is Mt. Fuji. (○/○)

3 (a) Look at that house whose roof is red. (△/△)

  (b) That house whose roof is read is my uncle’s. (○/○)

4 The dictionary whose cover is torn is mine. (○/○)

5 This is a proverb whose meaning I don’t know. (△/△)

6 I don’t like reading manuals whose explanation is complicated. (△/△)


この回答には,次の2つの特徴があります。

@2a・3aよりも2b・3bの方が許容度が高い。

A2人とも○と答えた2b・3b・4は,すべて〈主語+whose〉の形になっている。

@Aの理由を2人に尋ねましたが,2人とも「理由はわからないが,そのように感じる」とのことでした。

少なくとも,次のことは言えます。

3 (a) Look at that house whose roof is red.

  (b) Look at that house with a red roof.

筆者はこれまでに3aを多くのネイティブに見せて意見を求めましたが,全員がこの文を「不自然だ」と言い,

大半が3bのようにリライトしました。B氏でさえ,同じ構造の2aを問題なしと判断する一方で,3aは認めません。

同様に5も参考書などでよく見かける例文ですが,両氏とも△と答えています。

また,B氏に対して「〈物+whose〉の例を1つ挙げてほしい」とリクエストしたところ,次の文を示してくれました。

7 The car whose tire was punctured was towed away yesterday.

   (タイヤがパンクしたその車は,きのうレッカー移動された)

以上の経験から,筆者は関係代名詞のwhoseを次のようにとらえています。

@〈物+whose〉の形を好まないネイティブスピーカーは,今でも少なくない。

A〈物+whose〉の例文としては,その部分が主語になる文を示すのが望ましい。


 

補記(2024/1/8)

上の1-(c)を再掲します。

 Look at that mountain of which the top is covered with snow.

この形を認めるかどうかは,文法書によって違います。たとえば,

・「詳解英文法」には,注釈なしでこの形が載っています。

・「英文法解説」(改訂三版)には,この形は載っていません。

・「ロイヤル英文法」は,Hand me the book whose cover [the cover of which] is frayed. という文について,

「of which the coverとしてもよいが,上の2つよりも使用頻度は低い」と説明しています。

Richardは上の形を認めません。「of the mountain the topとは言わないから」という理由です。

 

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