2016/3/13 up

大人の英文法113−複合関係詞 

 

※以下の説明は,2016年5月ごろ発売予定の新刊本からの抜粋です(一部リライト)。発売後に改めて公表しますが,

今回書いた本は,この「大人の英文法」をお読みいただいている皆さんに自信を持ってお勧めできる本です。

〈疑問詞+ever〉の形の関係詞を,複合関係詞と言います。学校では次のように説明します。

例  名詞節  副詞節
whoever  〜する人は誰でも

(anyone who) 

たとえ誰が〜しても

(no matter who)

wherever  ×  たとえどこへ〜しても

(no matter where)

 

whoeverなど〈疑問代名詞+ever〉の形の語は,名詞節と副詞節を作ります。

一方,whereverなど〈疑問副詞+ever〉の形の語は,もともと副詞なので名詞節は作れません。

原義に立ち返って考えてみましょう。everは「どの時も(at any time)」の意味を表します。

@Have you ever seen this movie?

(今までにこの映画を見たことがありますか)

この文のeverは「(たとえ)どの時を選んだとしても」ということです。

逆の意味を表すneverは「どの時を選んでも〜ない」ですね。

一方,「(たとえ)どのものを選んだとしても」の意味はanyで表します。

AYou can use any car here.

(ここにあるどの車を使ってもかまいません)

このように,everとanyは親戚関係にあります。「時」ならever,「もの」ならanyを使うわけです。

また,everやanyは「たとえ〜でも」というニュアンスを含むため,意味を強調する働きもします。

たとえばAはYou can use the cars here. とも言えますが,ány carと言うことで「どれでも」と

いう意味が強調されます。everは次のような使い方もします。

BWho ever is knocking on the door?

(ドアをノックしているのはいったい誰だ)

このように疑問詞の後ろのeverは「いったい〜」の意味で,前の疑問詞の意味を強める働きをします。

そこで,複合関係詞のwhoeverを使った例を見てみましょう。

CWhoever comes, I won’t open the door.

(たとえ誰が来ても,私はドアを開けない)

Bと同様に,この文のwhoever comesは「いったい誰が来るとしても」と解釈できます。

下線部は副詞節ですが,名詞節の場合はどうでしょうか。

DI’ll vote for whoever promises to reduce taxes.

(減税を約束する人なら誰にでも投票するつもりだ)

この文も「いったい誰が減税を約束するとしても,その人に私は投票する」と解釈できます。

つまり,CでもDでもwhoever(いったい誰が)自体の意味は同じです。

さらに,CDを言い換えた文も見ておきましょう。

C’No matter who comes, I won’t open the door.

D’I’ll vote for anyone who promises to reduce taxes.

大学入試対策としては,このような「書き換え」を暗記すれば学習は終了です。

しかしそこでストップしていたのでは,英語感覚はなかなか養われません。

言葉の元の意味を考えることが大切です。

まずD’は,anyone自体に「たとえ誰を選んだとしても」という意味が含まれており,

その意味はwhoever(いったい誰が)と共通しています。

またC’は,matterがもともと「問題」の意味であることを意識するのが重要です。

C”It is no matter who comes. I won’t open the door.

(誰が来ようと問題ではない。私はドアを開けない)

Cは,このような2つの文をもとにした表現と考えられます。

第1文のIt isを省いてno matter who comesを副詞のかたまりとして使えば,Cになります。

*動詞のmatterは「問題[重要]だ」の意味。C”の第1文はIt doesn’t matter who comes. とも表現できます。

これと似たことが起きたのが,次のような例です。

EWe got lost. What was worse, it began to rain. 〈what was worse=副詞節〉

(私たちは道に迷った。さらに悪いことに雨が降り出した)

学校では下線部を〈what is+比較級=さらに〜なことには〉と暗記させられますが,

第2文が次のような文をもとにしていることは容易に想像できます。

E’What was worse was (that) it began to rain. 〈what was worse=名詞節〉

                     S            V                 C

(さらに悪かったことは,雨が降り出したということだった)

この文からwas (that)が脱落して,what was worseが副詞の働きをするようになったのがEです。このように

学校では別々に説明される知識の間に,言葉の原義に基づく共通の意味を見出せるケースは少なくありません。

 

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