大人の英文法-130 否定文中の現在完了進行形
SKYWARD総合英語p.26のこの例文と解説について読者の方から質問があったので,詳しく解説します。 これは「英語教育」(2017.6)のQBからの引用で,回答者は柏野健次先生です。質問者の「広島県 塾講師」とは,実は私です(匿名にしてもらいました)。 柏野先生の回答を要約して示します。 ・ア〜オの容認可能性を10名のネイティブに尋ねた結果は,下のとおり(カはseeに多義性があるので除外)。大ざっぱに言えば,ア・ウは可,他の3つは不可。 (ア) 〇(10)・△(0)・×(0) (イ) 〇(3)・△(5)・×(2) (ウ) 〇(8)・△(2)・×(0) (エ) 〇(0)・△(3)・×(7) (オ) 〇(0)・△(3)・×(7) ※〇=acceptable,△=odd,×=unacceptable ・「継続」には,@切れ目のない継続,A切れ目のある継続(=反復)とがある。ア〜オからnotを取り除いて肯定文で考えた場合,ア・イのように副詞(句)の表す時間の幅が短いときは@,ウ〜オのように長い時間帯ならAと解釈されるのが普通。 ・まず,ア〜オからnotを取り除いた肯定文の意味を考える。(1)(2)は継続,(3)〜(5)は反復の意味。 (1)I
have been feeling well since morning. (朝から気分のいい状態が切れ目なく続いている) (2)I
have been eating something since morning. (朝から切れ目なく何かを食べ続けている) (3)I
have been doing some exercise recently.
(最近繰り返し運動している)
(4)I
have been wearing this shirt for a year.
(このシャツを1年間繰り返し着ている) (5)I
have been washing this shirt for a month. (このシャツを1か月間繰り返し洗っている) ・(1)(3)は自然な状況,(2)は特殊な状況,(4)(5)はまずありえない状況と考えられる。その〇△×の判断が,否定文にもそのまま当てはまる。 またエは「このシャツを1年間何度も着る機会があるのに,その度ごとに着(ることができ)ない」という意味であり,そういう状況は(4)の肯定文以上に考えにくい。
SKYWARDの例文で考えます。 @I
have been cleaning my room for two weeks.(×) AI
haven’t been cleaning my room for two weeks.(×) @Aとも,英米2人のインフォーマントは不自然だと判断しました。その理由の1つは,cleanが継続動詞だからかもしれません。 動作動詞には,瞬間動詞(一瞬で終わる行為や出来事を表す)と継続動詞(一定時間続く行為や出来事を表す)とがあります。 ・瞬間動詞の進行形は,差し迫った未来(〜しかけている),段階的変化(だんだん〜してきている),反復(何度も〜している)の意味を表す。 ・継続動詞の進行形は,行為の進行(〜しているところだ)を表す。「英語語法レファレンス」(pp.382-4) cleanは継続動詞だから,have been cleaningに含まれる進行形(be cleaning)は,理屈の上では「反復」(繰り返して掃除をしている)の意味になったとしても, 「継続」(掃除をしているところだ)の解釈がいわば邪魔をして,for two weeksだと意味的に整合しないように(for two hoursなどの方が自然に)感じられるのではないか?という気がします。 Aが×である理由を詳しく言えば,次のようになります。 ・この現在完了進行形が「継続」の意味であるなら,「2週間継続して掃除をし続けている」という肯定文は状況的にありえない。だからその否定文も誤りである。 ・一方,この現在完了形が「反復」の意味であるなら,Aは(エと同様に)「自分の部屋を掃除する機会が2週間の間に繰り返し訪れたが,その度に私は掃除しなかった[できなかった]」という意味を表すことになる。これもまた状況的に不自然である。 |
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