大人の英文法-142

否定の焦点と作用域

 

次の例は「現代英文法講義」(p.667)からの引用です。

@ [I didn't leave hóme] because I was afraid of my fàther.

(ぼくは家を出なかった,だっておやじが怖かったから)

A [I didn't leave home because I was afraid of my father]. ※fatherは降昇[下降上昇]調。

(ぼくが家を出たのは,おやじが怖かったからじゃない)

両者の意味の違いを説明する方法には,以下の2つがあります。

 

A 否定の作用域の違い

否定の作用域とは,notが作用する領域のこと。上の例文では,[  ]が否定の作用域です。

@ではnotの作用域は前半のみ,Aでは全体がnotの作用域に入ります。つまり,

A=NOT+[I left home because I was afraid of my father]. ということ。

 

B 否定の焦点の違い

否定の焦点とは,notによって否定されるもののこと。

一般に否定の焦点には強勢を置きます。

B I didn't met Jóhn yesterday. (私がきのう会ったのはジョンではない)

C I didn't met John yésterday. (私がジョンに会ったのはきのうではない)

「現代英文法講義」には次の説明があります。

一つの文の終わりに文強勢の置かれた語があれば,そこまでが否定の作用域であり,その語が否定の「焦点」であるとしてよいであろう。

@ではhomeに強勢が置かれることで,notの作用域がhomeまでであることがわかります。

一方Aのhomeには強勢を置かないことで,notの作用域が文末まで続くことがわかります。

 

否定文のnotは副詞です。一般に名詞を修飾する副詞は,焦点となる名詞に強勢を置きます。

D John likes sóccer, too. (ジョンは(他の何かに加えて)サッカーも好きだ)

E Jóhn likes soccer, too. ((他の誰かに加えて)ジョンもサッカーが好きだ)

 

notの例をもう1つ。

F [Rome was not built in a dáy]. (ローマは一日にして成らず)

この文では,全体がnotの作用域に入ります。つまり,

NOT+[Rome was built in a day].

一方,読むときはdayに強勢を置きます。これにより,a dayが否定の焦点となります。

 

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