2014/11/9 up

大人の英文法−コラム(6) 英語として自然な文 

 

以下の記事は,ある出版社が英語教師向けに出している季刊誌の最新号に寄稿したものです。

英語学習者向けの参考として,ここに再掲しておきます。(Q&A形式で,Aが私の回答です)

 

[Q] 

生徒に生きた英語を身に付けてもらうべく,「この本は面白い」は

This is an interesting book. (×This book is interesting.) だと英作文の授業で言っています。

このように短く,かつ英語の本質をついた例が他にあれば教えてください。

 

[A]

「英語のセンス」をどう養うかという問題ですね。たとえば次のような例はいかがでしょうか。

(a)  The tail of my dog is long.

(b)  My dog’s tail is long.

(c)   My dog has a long tail.

(a)(b)よりも(c)の方が自然な理由としては,「(a)(b)は頭でっかちの文構造だから」,「英語ではSVOの形が

最も好まれるから」などが考えられます。しかし(b)を次のように変えると不自然さが和らぎます。

(d) My dog’s tail is very long and thick.

この文が(b)よりも自然なのは,isを中心として前後の語句の長さのバランスが取れているからですが,

より本質的には「文末に重い情報が置かれている」からです。文末焦点(end-focus)の原理により,

文末の情報の重要度が高い文ほど自然に響きます。4つの文のisの後ろに置かれた新情報

(下線部)を比べると,(c)は(a)(b)より情報量が多いから自然であり,同じ理由で(d)も自然だと言えます。

自然さの差を生じさせるのは文型の選択ではなく,文末に置く情報の重さです。

 

次の例も同じ理屈で説明できます。

(e) English is used by many people in the world.

(f) English is used by them.

(e)は文末の情報が重いので自然です。一方(f)では,人称代名詞は新情報を表せないので

(themが誰を指すかは相手も知っています),文末に軽い情報[旧情報]が置かれていることになり

非常に不自然に響きます。つまり(f)は受動態を使う必然性がなく,(旧情報−新情報の並びの)

They use English. の方が自然な文です。

このような感覚をつかむことが,英語のセンスを養うことにつながります。

 

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