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大人の英文法－コラム(21) 大学入試問題批判(2)
(6) 実際にはありえないような内容の英文や会話を作らせる問い 入試の会話問題には，取ってつけたような不自然な会話がよく見られる。特に目に余るのが福島大。 毎年５題程度の短い対話形式の問いが出るが，まともな会話がほとんどない，と言っても過言ではない。 たとえば以下の問い（カッコ内は穴埋め問題の正解）で下線部の形を問いたいのなら，対話形式にする必要は全くない。 ●A：A
shark is no ( more ) a mammal than a salmon is. B：Of course. Everybody knows that. （2011福島大） ●A：Do
you like reading books? B：Yes,
I love reading. You know, as exercise is to the body, ( so ) reading is to
the mind.（2021福島大） ※この形を使いたいなら，reading is to the mind as exercise to the bodyとすべき。 ●A：What is U.S.A.? B：Don’t you know? It stands ( for ) the United States of America.（2021福島大） → USAが何を表すかを知らないAは，いったい誰なのか？ 以下の会話も自然とは言えない。 ●A：Hello,
Tom. B：Nice
and warm today, isn't ( it )? （2013福島大） → Bの返答は唐突すぎる。普通は最初に Hi, Cathy. などと言うだろう。 ●A：He
was really careful. That's ( why ) he succeeded in the business. B：Interesting!
Tell me more about his story. （2014福島大） → これを自然な会話だと思うかどうかは国語力の問題。 ●A：We
are looking for a person ( whose ) knowledge in that area is extraordinary. B：It
might be difficult. But it’s worth trying. （2018福島大） → Aの発言を自然な英語だと思うかどうかは英語感覚の問題。 ●A：Tom
is really good at speaking English, isn’t he? B：Really?
His pronunciation is ( far ) from perfect.（2021福島大） →
Tomが英語圏出身者なら「英語を話すのが上手」なのは当然であり，「発音が下手」とは言えないはず（日本人ならTomu）。 ●A：I
haven’t seen you for a while. What are you doing these days? B：It’s
( been ) almost five years. I work in the automobile industry now.
（2020福島大） →
Bの返答は日本人の発想。英語圏の人なら「自動車業界で働いている」ではなく，もっと具体的な仕事の内容を語るはず。 ●
A：If
you have time, I would like to discuss the next meeting with you. B：Of
course. Why ( don't ) we talk about it over lunch? （2020福島大） →
BにOf
course.と答えさせたいなら，Aの後半はcan
[could] we talk about the next meeting? とすべき。discussはtalk
aboutの方が日常的。 ●
A：Do
you like jazz? B：Well,
to tell you the ( truth ), I don’t particularly like it.（2020福島大） → 好きか嫌いかという質問に対して，「（言いにくいんだが）実は…」と答える必要がどこにあるのか？
以下は，文法的には間違っていないが内容的にどうなのか？という問いの例。 ●
Since
my secretary didn't take the name of the visitor, I couldn't [ see / be sure /
me / who / had come to ]. (2002センター本試)（整序作文） → 「秘書が訪問者の名前を聞かなかった」という状況がありうるのか？ ●
The
thief was caught ( ) a television from the hotel. 〇①stealing
②to
steal ③stolen
④stole
(2005センター追試) →「ホテルからテレビを盗む」ような愚かな泥棒が実際にいるだろうか？ ●
I’m
here not ( ) because you are rich but also because I love you. 〇①merely
②partly
③at
all ④so
far （2020東邦大） →「私がここにいるのは，あなたが金持ちだからという理由だけではなく，あなたを愛しているからでもある」―こう言われた相手はどう思うだろうか。 ●
My
grandfather is still ①live
and ②well.
He will ③turn
ninety ④next
week.（2018群馬大）（正誤判定：正解は①→alive） → stillを使うと「祖父は今もなお（しぶとく）生きている」という響きになる。 ●
むやみに実験をするのは禁止されています。 [
an / random / it / do / experiment / prohibited / to / at / is ]. （2013獨協医大）（整序作文） → 想定された正解はIt is prohibited to do an experiment at random. だが，「at randomに実験を行う」のはあり得ないこと。 ●
In
addition to love, children depend on their parents (
) food, clothing, and shelter. 〇①for
②from
③to
④with（2007センター追試） →
childrenの前にtheが必要だと思う。theがないと一般論になるが，今日ではそもそもin
addition to loveが当てはまらない例も多いのだから。 ●
( ) are not good at driving is widely believed all over
the world. 〇①That
women ②When women ③Women ④If women （2016中京大） →「女性の運転が上手ではないということは世界中で広く信じられている」― それは出題者の偏見でしかない。 ● This
is ①the
world's second highest mountain ②that
view ③has attracted many tourists ④recently.
（2008福島大） →
想定された正解は②（that → ,
whose）で，「これは世界で２番目に高い山であり，その眺めは最近多くの観光客を魅了している」の意味。 ネットで調べればすぐわかるが，世界で２番目に高い山（カラコルムのK2）は，観光客が近寄れるような場所にはない（人里離れた奥地にあり，登頂はエベレストより難しいとされている）。
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