※ このページは,アングラー向けです。
釣り上げた魚をおいしく食べられるかどうかは,釣り場での処理によって大きく左右されます。このページでは,魚の鮮度をできるだけ保つためのちょっとした注意点をご紹介します(それくらいは当然やってるよ,という方も大勢おられると思いますが)。
〜 魚の鮮度を保つための基本 〜
釣り場で,バケツなどに海水を入れて魚を入れている人をよく見かけます。特にイワシやアジなど数釣りをする魚の場合,いちいちクーラーに入れるのが面倒になりがちですが,食べることを考えると,こういうやり方は感心しません。特に気温・水温の高い時期に生ぬるい海水の中に死んだ魚を浸けておくと,腐敗が進んでしまいます。
鮮度を保つのに一番いいのは,釣り上げたらすぐに締めて血抜きをし,氷の入ったクーラーに入れることです。このとき,ビニール袋に入った氷をクーラー入れ,海水を注いでおくのがよいとされています。氷をビニール袋に入れるのは,はだかの氷だと溶けて真水になることによって海水の塩分濃度が下がり,浸透圧の関係で魚体が水っぽくなるからです。
もっとも,その日のうちに食べるのなら,そこまでする必要はないと思います。私の場合は,小魚なら氷入りのクーラー(氷はタオルで包む)に直接入れています。大型魚はスカリに入れて生かしておき,帰るときに締めて氷入りのクーラーに入れて持ち帰ります。いずれにせよ,魚は即死させることが基本です。即死の逆を「悶絶死」と言い,魚が苦しみながら死ぬと体に悪い血が回って味が落ちる,と言われています。また,大型の場合はさらに血抜きをするのがベターです。この2点を守れば,丸のまま持ち帰った場合に比べて格段に美味しい魚が食べられます。
〜 魚の締め方 〜
一般には,写真のように目の横またはエラブタの延長上にナイフを入れるのが一番簡単な方法でしょう。なお,エラブタからナイフを差し込んで延髄(首の付け根の太い骨)を切り,さらに尾びれの付け根にも切れ目を入れて(ここから血が抜ける),頭を上にして魚体を折り曲げると,完全に血抜きできます。なお,調理して盛り付けたとき傷口が裏側になるように,写真のように頭を右にして締めるのがセオリーです。
ウマヅラハギのように血の臭いが強い魚の場合は,エラを切り取って血抜きをします。やり方は簡単です。口の下から水平にナイフを入れて頭を下にしてやると,エラから真っ赤な血がドバっと出ます。さらに,エラの両側の付け根をナイフで切り,指を突っ込んでエラをむしり取ります。あとは海水で洗ってやると,ほとんどの血が抜けます。血抜きの後は,右の写真のようになります。ウマヅラハギのさばき方には,目の上のツノの後ろに包丁を入れて,頭ごと内臓を取ってしまう(下のボラの例のように)やり方もあります。このやり方で,釣り場で頭を全部取ってしまう人もいますが,それだとキモを含む内蔵まで取れてしまいます。ウマヅラの命はキモなので,エラだけを取ってなるべく元の姿をとどめておくのがよいと思います。今まで血抜きをせずにウマヅラを持ち帰っていた人は,ぜひこの方法を実行してみてください。今までよりも格段に美味しいウマヅラを食べることができます。なお,この方法はアジやサヨリなどの小魚にも応用できます。たいていの魚の場合,最も早く傷みやすいのはエラです。小さなサイズの魚なら,釣り場でエラを取って持ち帰るのがベストでしょう。
ボラなど元の姿を残しておく必要のない魚は,頭ごと内臓を全部取り去って持ち帰るのが一番です。やったことのない人には難しいように思えるかもしれませんが,ごく簡単です。まず頭の後ろに真上からナイフを入れて,首の大きな骨を断ち切ります。次に頭のまわりと腹(肛門まで)にナイフを入れ,そのまま頭を引っ張ってやると,内臓ごとスッポリ取れます。1尾さばくのに30秒もかかりません。こうすれば家でさばく時も生ゴミが少なくなり,一石二鳥です。コブダイやヤズ(イナダ)などにも応用できます。もっとも,頭を吸い物やアラ炊きにする場合は,頭は別に持ち帰るとよいでしょう。上の写真は,ボラをさばいた後の姿です。