日記帳(10年2月7日〜2月11日)
今日(11日)は祝日だが天気も悪いし,普通に仕事。
休みの日をまるまる仕事でつぶすのも切ないので,ちょっと休憩してこれを書いている。
最近のトップニュースについて一言。民主党・小沢幹事長の献金疑惑の件だ。
まず,ネットから引用した2つの相反する論評を示しておこう。(下の@A)
@は2月10日の中国新聞の社説(2月10日),
Aは「JANJANニュース」というネット上の市民参加型新聞の記事(2月4日)だ。
@ 小沢幹事長続投 国民は納得していない
政権交代から間もなく5カ月。政治が変わると期待していた国民の中には、裏切られたように
感じる人もいるのではないか。
鳩山由紀夫首相が、民主党の小沢一郎幹事長の続投を了承した。小沢氏が、資金管理団体の収支報告書への虚偽記入事件で不起訴になったことを受けての判断だ。しかし元秘書らが
起訴された責任は依然残る。
国民の目の厳しさは、共同通信社の世論調査でも明らかだ。「不正な金はない」との説明に「納得できない」と答えた人は87%に上った。「幹事長を辞めるべきだ」は72%。「続けてよい」の
22%を大きく上回った。
ところが小沢氏のおとといの会見は、民意との隔たりが目立った。例えば潔白が証明されたとの主張である。不起訴になったのは虚偽記入に関与した証拠が十分集まらなかったからにすぎない。
ほかにも国民の間には疑問がくすぶる。報告書を偽ってまで何かを隠そうとしたのか。なぜ全国で不動産を買ったのか。原資の一部にゼネコンからの裏金が入っていなかったか。
そんな疑問に納得がいくまで答えるべきである。ところが小沢氏は「強制捜査を受け、2度事情を説明した」として、これ以上の説明は必要ないと強気だった。
検察には、それで済んだかもしれない。しかし国民への説明責任を果たしたとはいえない。
これは小沢氏だけの問題ではない。どうけじめをつけるか、鳩山首相も問われている。
「幹事長を続けていいか」と聞かれて、「はい」と即答し、お墨付きを与えたという。そのやりとりに象徴されるような、小沢氏が首相より優位に立つ権力構造が浮かび上がる。「幹事長を辞職
すべきだ」が7割を超えた背景には、こうしたいびつな関係への国民のいらだちもありはしないか。
「一生懸命頑張ってほしい」と首相から激励された、とした小沢氏に対し、首相は「そんな言葉は使っていない」とわざわざ否定した。少し距離を置こうとする気配が見えなくもない。
党代表としての責任を果たそうとするなら、鳩山首相はまず政治倫理審査会など国会で堂々と事実を述べるよう小沢氏に勧めなければならない。それでも国民の納得が得られないようであれば、
いつまでも幹事長にとどめておくべきではない。
昨夏の衆院選では、金権とは無縁で透明度の高い政治への転換を願って投票した人も多かろう。こんな事態に陥ったのでは何のための政権交代だったのか、首をかしげたくなる。
起訴された元秘書で衆院議員の石川知裕被告への民主党の対応も甘すぎる。野党の出した辞職勧告決議案の採決には応じない方針だ。「秘書の時の問題で審議するには当たらない」という
理由で誰が納得するだろう。
本人が議員辞職も離党も考えていないなら、党としてけじめをつけさせることが必要ではないか。
http://www.chugoku-np.co.jp/Syasetu/Sh201002100183.html
A「小沢幹事長不起訴」国民をなめきって暴走続ける特捜部
民主党の小沢一郎幹事長の政治団体「陸山会」の政治資金報告書の虚偽記載について
捜査していた東京地検特捜部は、2月4日に元秘書の石川知裕・衆院議員の拘留期限が
切れることを受けて、石川議員を起訴するとともに、小沢さんについては「嫌疑不十分」で
不起訴にする方針を固めた、ということです。
本当の事を言えば、これ自体がリーク記事で、けしからん話です。それはそれとして不起訴は当然だと思います。
■ なぜ「受託収賄」で立件しない?
今回の事件については、「事件」とさえ呼べるのか?という疑問がわきます。そもそも、特捜部は小沢さんが水谷建設からお金をもらい、それを不動産購入の原資に当てた、
というシナリオを描いていました。
しかし、それを立証するだけの証拠などなかったのでしょう。ただ、水谷建設の元社長を「お前、小沢さんサイドに裏金を渡したよな」と締め上げ、「はい」という返事を得るのは
簡単でしょう。
それをマスコミを通じて流す。それによって小沢さんに対して嫌がらせをする。そういう按配ではないでしょうか?
2009年3月3日に、小沢さんの会計責任者の大久保秘書が西松疑獄で逮捕された後にも似たようなことがありました。
「小沢さんから天の声があった」と、大久保秘書が反論できない西松建設元社長・国澤幹雄さん(執行猶予中)の裁判の冒頭陳述で検察官は主張しました。しかし、
実際に「天の声」があったなら、特捜部はぼんやりしている場合ではありません。
小沢さんを直ちに受託収賄で逮捕すべきなのです。
小沢さんは幹事長どころか、議員も辞職すべきでしょう。ところが受託収賄を立件もしないで「天の声があった」と「冒頭陳述」で主張するだけです。実に、奇怪ではありませんか?
■ 「大岡越前」的風土悪用し、小沢さんに嫌がらせ?
結局、西松疑獄でも今回の「事件」でも、「立件する」だけのネタはないが、「小沢さんが怪しい」というイメージを拡散するためだけに東京地検特捜部は動いているように見えてしまう。
この西松疑獄では、小沢さんの大久保秘書は逮捕する一方、二階さんの腹心の泉信也被疑者(参院議員、元国家公安委員長)らは、検察審査会の不起訴不当議決にも
かかわらず「不起訴」としてしまった。
そして、人々がすかっり事件を忘れたころに、政策秘書の略式起訴でお茶を濁してしまう。略式起訴ですから、正式裁判で、二階さんと西松の癒着が明らかにされる機会は失われました。
野党だった小沢さんと違い、与党で閣僚を何度も務めた二階さんこそ、「職務権限ありまくり」で、
小沢さんよりよほど「怪しい」と見られても仕方がない。なのに、この有様です。特捜部は国民を
なめきっているのではないでしょうか?
(中略)
■ 「政治と金」より「もっと大事なことがある」
そもそも、「政治と金」ばかりを今の国政のメインテーマにするのは間違っていると思います。実を言えば、わたしは、野党第一党が政治と金で民主党を追及することに力を割きすぎる事を
苦々しく思っていました。「もっと大事なことがある」と思っていました。「クリーンで無能」よりは
「少々ホコリがあっても有能」な政治家のほうが良い、というのが合理的な判断だと思います。
政治資金では日本共産党は一番クリーンでしょう。無所属でいえば、浅野史郎さん(元宮城知事)は非常に金には厳しい。しかし、多くの政治家なり政治勢力は、叩けば大なり小なりホコリが
出てきます。もちろん、日本共産党が個人からの党費やカンパ、新聞で財政をまかなっている
のは立派です。民主党もそういったしっかりした財政と組織を確立すべきだと思います。
企業団体献金禁止に向かうべきです。
それはそれとしても、「今まで散々金権政治をやってきた自民党」が、「政治と金」ばかりを追及するのはいかがなものでしょうか?国会審議で大事なのは、一にも二にも、生活再建、
経済再建ではないでしょうか? 今はその議論に集中すべきだと思うのです。そうしないと、
冗談抜きで失業者がもっと増えるし、日本は取り返しがつかないことになりかねないと思います。
http://www.janjannews.jp/archives/2534430.html
結論から言うと,ぼくの意見はどちらかと言えば2番目の記事の立場に近い。
「小沢氏は辞任すべきか?」という問いに対するぼくの答えは,イエスだ。しかしそれは,
「金の疑惑」が理由ではない。そんなものは,上の記事にもあるとおり,国会議員なら
多かれ少なかれ誰でも身に覚えがあるだろう。小沢氏に辞任してほしい理由は,
1つには最近の氏を見ていると「権力闘争」が自己目的化しているように見えること,
もう1つは「組織内で一人の人間に権力が集中しすぎると,プラス面よりマイナス面の
方が大きくなりがちだから」という素朴な経験則にある。
今回の件でもう1つ引っ掛かるのは,これもつい最近報道された,村木厚子・元厚労省局長の裁判のニュースだ。ネットで検索するといくらでも関連記事が出てくるが,この事件は最初から
「怪しい」と思っていた。新聞や雑誌の報道を読む限り,本人を知る多くの関係者は(大臣を含め)
彼女を非常に高く評価しており,これだけ世間が官僚バッシング一色に染まっている中で,
「村木さんを支援する会」に多くの有力者が名を連ねている。しかも当時の彼女には,検察が
描いたようなストーリーに沿って行動すべき「動機」がない。法案を通したいなら自民党の議員に
接近すればいいのであって,当時野党だった民主党の議員に恩を売っても意味がないからだ。
そうした状況証拠から考えて,村木事件は「検察の捏造」という可能性が高く,実際ネット上の
声もそちらの意見の方がずっと多い。村木氏は大阪地検,小沢氏は東京地検だが,最近の
動きを見ていると,政治家への疑惑以上に,検察に対する疑惑の方をより強く感じてしまう。
前置きはこのくらいにして,今回一番書きたいことの本論に入ろう。
ぼくは,上に挙げた第一の記事(中国新聞の社説)のようなタイプの文章が大嫌いである。
理由は,「言葉が軽い」からだ。
「小沢幹事長続投 国民は納得していない」というタイトルからして,いただけない。
新聞の社説の常套句である,この「納得」という言葉。とにかくこれが嫌いだ。
たとえば,政権交代によって,予定されていたダム建設が中止になりそうな雲行きになった。地元自治体は反対する。その構図を評してマスコミはしばしば,「地元に納得のいく説明を」と書く。
この文脈で使われた「納得」という言葉には,実質的な意味がほとんどない。「言葉が軽い」とは,そういうことだ。
たとえば,ダム建設が中止された地元へ大臣が赴き,こういう説明をしたとしよう(実際はこんなことは言わないだろうが)。
「この地のダム建設を中止したのは,政権交代によって国の予算配分の優先順位が変わったからです。国家にとって,ダム建設よりも重要な事業が他にあると我々(政権与党)が判断した,
というのが,建設中止の理由です。優先順位を変えた議論の経緯は,求められればできるだけ
詳しく説明します」
この説明は十分に合理的であり(そしてそれが国側の本音であり),第三者なら「納得できる」ものだろう。しかし地元自治体は,どんなに詳しく客観的な理屈を聞いても,決して「納得」など
しないだろう。つまり,「地元が納得する説明」など,最初からどこにもないのだ。
(「ダム建設はしないがその代わり別の形で予算を回す」と大臣が言えば地元は「納得」する
だろうが,それは少なくとも新聞が言おうとしている意味での「納得」ではない)
「小沢幹事長続投 国民は納得していない」という見出しも,これと全く同じだ。
「例えば潔白が証明されたとの主張である。不起訴になったのは虚偽記入に関与した証拠が十分集まらなかったからにすぎない。」というくだりなど,完全に理性を失っているとしか言いようがない。
「党代表としての責任を果たそうとするなら、鳩山首相はまず政治倫理審査会など国会で堂々と
事実を述べるよう小沢氏に勧めなければならない。それでも国民の納得が得られないようであれば、
いつまでも幹事長にとどめておくべきではない。」と社説は主張するが,この文面を文字通りに
解釈するなら「国会で事実を述べ,国民が『納得』すれば幹事長を辞める必要はない」ということだ。
しかし,文脈から判断して,この文面にはそのような含意は全くない。この文章のコノテーション
(言外の意味)は,「小沢氏がどんな説明をしても国民が納得するはずがない。だから辞任しろ」
ということだ。
しかしこの主張には,いわゆる「マッチポンプ」の臭いがプンプンする。念のため補記しておくと,マッチポンプとは「自分でマッチで火をつけてポンプを持ってきて消火する」,つまり「自作自演」の
意味だ。どういうことかと言えば,マスコミは本能として「事件」を作りたがる。その方が読者が
喜ぶからだ。そして自分で作った事件にどんどん焚き木をくべて火の手を大きく上げておいてから,
あたかも消防車が来ましたと言わんばかりに,冷静を装った論評をする。煎じ詰めれば「小沢氏は
辞任すべきだ。なぜならこれだけ世間を騒がせたのだから」というのがマスコミの理屈であり,
世間を騒がせたのは小沢氏よりもむしろマスコミ自身だ。そういう自作自演の構図の象徴が,
「世間が納得するように」という言葉に表れているように感じられてならないのだ。