生々しい話で恐縮ですが…
90歳になるうちのオヤジは,まだどうにか一人暮らしができている。
ただ,いわゆる「終活」も考える時期には来ている。
で,月に1回うちの会社に来てくれる税理士さんに,相続税のことを聞いてみたわけだ。
その結果,だいたい次のようなことがわかった。
相続税の控除額(その額を相続財産から差し引いた額に税金がかかる)は,
最近引き下げられて,「3,000万円+600万円×相続人の数」になった。
うちの場合は相続人が1人だけだから,控除額は
3,600万円になる。
つまり,オヤジの全財産(預金・不動産・(あれば)株式など)が3,600万円を越えたら,
その越えた額に対して相続税がかかるわけだ。
ネットで調べたところ,
・課税対象額が1,000万円以下なら,その10%が税額。
・課税対象額がそれ以上で3,000万円以下なら,その15%から50万円を引いた額が税額。
・課税対象額がそれ以上で5,000万円以下なら,その20%から200万円を引いた額が税額。
・課税対象額がそれ以上で1億円以下なら,その30%から700万円を引いた額が税額。
以下,相続財産が多いほど税率が上がり,課税対象額が3億円を越えると50%になる。
単純計算すると,課税対象額が1,000万円なら,相続税額は100万円。
課税対象額が3,000万円なら,相続税額は400万円。
課税対象額が5,000万円なら,相続税額は800万円になる。
うちは金持ちじゃないから,相続税も大した額にはならない。
ただ,実家の土地と自宅の土地がオヤジの名義なので,今の時点で全財産を相続したら,
多少の税金の支払いは発生する。正直,控除額がここまで下がっているとは知らなかった。
自分のイメージで言うと,相続税とは1億円を越えるくらいの額の財産を相続する人が払う
もんであって,わしら庶民には関係ないけんね,と思っていたのだ。
脱税する気はないが,払う税金をちょっとでも少なくしようとするのは人情というもの。
少しでも相続税を減らす方法はないかと聞いたところ,1つは「嫁を自分の親の養子にする」という
手があるそうだ。そうすれば相続人が1人増えるので,控除額は3,600万円から4,200万円になる。
それから,身内にあらかじめ財産を移しておく方法もある。ただし上限があって,1人につき
年に110万円までなら贈与税はかからない(たとえば孫の口座に年間110万円まで入金してやる
のはかまわない)。相続人の口座にも年間110万円までなら非課税で入れることができるが,
親が死んだときは過去3年間に相続人の口座に移した金額は課税対象になる(つまりもらった
金を親の口座に戻して計算する)という縛りがある。
だから,親が毎年少しずつ孫や息子の嫁さんの口座にお金を移しておいてやれば,
課税対象額がゼロかマイナスになるよう調整することが理屈の上ではできる。
ただ,今から始めたんじゃ遅いだろう。
それに,親の預金通帳に金を残さなくていいのか?という問題がある。
うちのオヤジは一人暮らしだから,足腰が立たなくなるといずれは施設に入るしかない。
それには金がかかるから,その費用をキープしておく必要がある。
先に少しずつ息子の口座にお金を移しておいて,いざというときは息子の預金から支払えばいい,
という考えもあるだろうが,それだと親の口座にほとんどお金が残らないので,本人は不安になる。
で,「万一施設に入ることになっても,自分で払えるくらいの預金を残しておきたい」と親は考える。
そりゃ当然だ。しかしそうすると,これまた万一施設に入る前に親がポックリ死んでしまったら,
親の口座には将来施設の入居費として使おうと思っていたお金が残っているので,息子は
それを相続することになり,相続税の課税対象額が上がる。
まあ,うちなんか仮に相続税を払うとしても大した額じゃないんだが,世間の皆さんは相続税の
控除額がここまで下がっていることを知っているのだろうか?金持ちは困らないんだろうか?
それとも金持ちは当然それくらいのことは知っていて,もう税金対策をしているのだろうか?
これを読んでいる皆さんのお宅はどうだろうか?
というわけで,情報提供の意味をこめて書いてみました。