最終更新日: 2014/4/13
雑記帳 (その他編-18)
● 2014/4/13(日) ザ・葬儀
先日,母が亡くなりまして。
個人的なことはさておき,今回初めて喪主を務めた経験から,葬儀に関する情報を少し。
母は2か月ほど前から入院していて,医者から「あと1週間くらいの命です」と宣告されて
ほぼその通りに息を引き取った。ということは,身内は当然(そのときに備えて)葬儀の
準備をしなければならんわけで,まず(命日の数日前に)葬儀会社から見積もりを取った。
葬儀は祭壇をどのくらい立派にするかによって値段が違うが,親戚・身内が数十人くらい
集まる普通の葬儀の場合,通夜も込みで100万円くらい(うちはJAの会館を使った)。
なお,これにはお寺へのお布施は入っていない。葬儀会社からは見積もりが取れるが,
お寺はそういうわけにいかない。しかし葬祭業に携わっているヨメのルートで聞いて
もらったところ,目安になる額は次のような感じだとわかった。
(これは浄土真宗の場合です。お寺や地域によっても違います)
@臨終勤行(ごんぎょう) 1〜2万
A通夜勤行 2〜3万
B葬儀 導師様 10〜15万
C葬儀 脇導師様 5〜10万
D葬儀 法務員様 3〜5万
E永代経(えいたいきょう) 10〜30万
@は一般に「枕経」と呼ばれているもの。本人が死亡した当日の夜に,お寺から1人来て
もらって5〜10分くらいのお経をあげてもらう。当日が通夜の場合は省略する。
Aは通夜のお経代。うちの場合は本人が死亡した翌日の晩に通夜をした。
B〜Dは葬儀のお経代。一般にはお坊さん3人がお経をあげることが多いが,1人または
2人でと頼んでもよい(Dの法務員は,一般には「役僧」と呼ばれる補助員のお坊さんのこと)。
ちなみに,お寺への連絡は喪主が直接行うのが原則で,葬儀会社はタッチしない。
「うちはどの寺の檀家でもないので,適当にお坊さんを手配してほしい」と頼めば,葬儀会社が
あっせんしてくれる(その場合でも葬儀会社とお寺への支払いは別々)。
Eは戒名(院号)をつけてもらう代金で,うちが頼んだお寺の場合は「寺の維持費」的な
寄付金としてEを支払い,その対価として戒名をつけてもらうシステムだった。戒名は
長いほど値段が高いが,特に何も言わなければお寺が適当につけてくれる(うちは6文字だった)。
@〜Eはそれぞれ別々の熨斗袋にお金を入れて「臨終勤行 山田太郎」のように書き,
葬儀の翌日にお寺へお礼に行ったときまとめて渡す。(ここで次の法事の打ち合わせもする)
ついでに法事の話もすると,うちらへんでは葬儀のときに初七日の法要もまとめて行う。
なので,葬儀の次の法要は四十九日。その次が百日目,その次が1年目。
ただし百日目の法要は省く人が多いそうだ。法要にはお坊さんは1人来るだけなので,
そのとき払うお布施の目安は3万円くらい。遺骨が仏壇に置いてあれば仏壇の前で拝んで
もらう。四十九日に墓ができていれば,墓へ納骨して墓の前で拝んでもらう。納骨はいつでも
いいので,1年目の法要のときに納骨する人も多い(それまでは仏壇に置いておく)。
うちの場合は,仏壇と墓石の業者との交渉はこれからだ。この合計は葬儀費用より当然高い。
次に,葬儀当日の費用をどう工面するか?という話。
葬儀とお寺への支払いは合わせて100〜150万くらいになる。遺族が自分の預金通帳から
お金を引き出して払えるなら問題ないが,故人の通帳からお金を出そうとすると話が厄介になる。
うちの場合,死期が迫っていた頃に,葬儀費用を母本人の預金通帳から引き出しておこうとして,
本人の通帳と印鑑を持ってゆうちょ銀行へ行ったら,「本人確認ができないと払えない」と言われた。
キャッシュカードを作っていれば(暗証番号がわかれば)誰でも引き出せるが,あいにくカードは
作っていなかった。窓口で引き出すには本人確認がどうしても必要だそうだ(おかしな話だが)。
このとき,委任状をもらって帰って,誰かが本人の名前を書いて印鑑を押して出せば,形式上は
本人確認ができたことになるので問題なかったのだが,それは後で気づいたこと。実際は
「本人は病院で寝たきりなので,委任状に字を書くことができない」と正直に窓口で言ってしまった。
すると郵便局の職員は「それでは本人の意志が確認できないのでお金は引き出せない」と言う。
ただし例外として葬儀会社に支払う費用は,葬儀終了後に請求書(その他の書類)を持参すれば
その金額を引き出せると言う。これで葬儀会社への支払いの目途は立ったが,問題はお寺だ。
お寺への支払いはふつうは葬儀の翌日で,しかもお寺は請求書なんか出さないから,どうしても
現金を早めに用意しておく必要がある。窓口でそういう説明もしたが,受け付けてもらえなかった。
(結局自分の口座から現金を引き出して払った)
ちなみに,本人が死亡すると,その日(正確には本人の死亡を遺族が金融機関へ届け出た日)から
本人の預金口座は凍結されてしまう。この口座はいずれ解約して遺族の誰かが引き出すことになるが,
その手続きがまためんどくさい。当たり前と言えば当たり前だが,相続人が複数いる場合,その中の
誰かが勝手に故人の口座を解約してお金を自分の懐に入れてしまうと,後でもめることになる。
したがって故人の口座を解約するには,相続人全員の署名と捺印がいる。印鑑証明も添えて提出
することになっているので,ほかの兄弟の名前を勝手に書いて出すようなことはできない。
ついでに言うと,うちの場合は相続人は夫と息子の2人だけだったので話が簡単だったが,相続人が
多いと書類をそろえるのが複雑になる。たとえばA夫さん・B子さん夫婦に3人の子C・D・Eがいたとする。
Cは既に死亡しているが,Cの2人の息子F・Gは生きている。この関係の中でA夫さんが死んだ場合,
相続権を有するのはB子・D・E・F・Gの5人になる。つまり「おい・めい」までが遺産相続の対象になる。
A夫さんがずっと独身のまま死んだときは,A夫さんの兄弟に相続権があり,相続権を持つ兄弟が死んで
いるときはその子(つまりA夫さんのおい・めい)に相続権が移る。このへんは身内にそういう人がいるので
いろいろ教えてもらった。
葬儀が終わると,今度は香典返しの準備がある。参列者の名簿をもらってパソコンで住所録を作り,
香典の半額くらいの品を選んで各人に発送する(四十九日のあとで)。葬儀のプロによればこれには
「裏技」があり,「香典の一部を社会福祉事業団に寄付しました」という名目をつければ香典返しの
品は安いものでいいそうだ(実際には1〜2万円程度寄付しておけばいい)。
なお,役所で死亡の手続きをすることと,年金事務所への連絡も必要になる。
それやこれやで,葬儀の前後2週間くらいはあちこちへの連絡や手続きに追われて,悲しむ暇もなかった。
もっとも,最後の数日は「いつ呼吸が止まるかわかりません」と言われて付き添いで病院へ泊まって
いたりしたので,覚悟は十分すぎるくらいできていた。悲しいとかいうより,一仕事終えたという気分の
方が強い。死因はガンだったが,本人の意向もあってできるだけ自宅で療養することを選んだので,
死ぬ2か月前まで自宅で過ごせたし,痛みは鎮痛剤で対処してもらったし(ただし意識はほとんどなくなる),
本人の苦しみはできる限り緩和できたと思う。最後の半年くらいは,老老介護をしている父の負担や
病院・施設の確保などいろいろ考えることが多く,仕事の段取りをしているのと同じような感じだった。
親孝行と言えるほどではないが,まあ自分なりにできるだけのことはしてやれたかな,とは思う。
一番の問題は,葬儀や手続きで時間を取られたせいで,本業の時間が確保できなかったことだ。
葬儀の最中にもマナーモードにしておいた携帯に仕事の電話が入っていた。締め切りは待ってくれない。
もう生活は日常に戻っている。来週のオフ会にすっきりした気分で行けるよう,頑張って仕事せにゃ。