最終更新日: 2014/11/16

雑記帳 (その他編-20)

 

 

● 2014/11/16(日) カープ・新井貴浩選手の移籍問題について

 

日記帳にも書いたが,あれだけだと十分に意図が伝わらないかもしれないので,改めて何が問題

なのかをここにまとめておきたい。最初にお断りしておくが,以下の文面には新井貴浩選手への

人格攻撃めいた内容も含まれるので,特に新井ファンの人が読んだら不愉快に思われるかもしれない。

また,1つの言動や行動をもってその人の全人格を否定するのは不穏当なので,以下の話はあくまで

2007年と2014年に新井選手がカープ→阪神→カープと所属球団を変えた件だけを問題にしている

ことをお断りしておく。

まず,事実関係をおさらいしておこう。2007年のシーズンオフに,当時カープの四番打者だった新井は

FAの権利を行使して阪神へ移籍した。そして2014年のオフに,再びFAでカープへの復帰が決まった。

FAで出た選手がカープに復帰するのは今回の新井が初めてである。そして,ここが重要な点だが,

川口・江藤・金本・黒田・大竹ら,カープを去った他のFA選手に対して多くのカープファンは特に強い

反感を持ってはいない。しかし新井だけは,かなり多くのカープファンに嫌われている。

これは事実と言っていいだろう。



◆ 2007年に何があったのか?


当時の新井の会見は,ユーチューブで見ることができる。

https://www.youtube.com/watch?v=9Bly4xJ3pSk

このとき彼は,次のように語っている。

「カープが大好きなので,つらかったです」

「環境を変え,野球人として前に進みたかった」

「僕が喜んで出て行くのではないということは理解してほしいです」


これらの発言を論理的に解釈するなら,次のようになるだろう。

「自分はカープが好きだから,できることなら残りたい。しかし今の環境では,野球人として

前に進めない。だから仕方なく出ていくのだ」

ここで1つの疑問がわく。「今の環境」が新井自身にとってどう悪いのか?

新井自身はそれ以上語っていないので想像するしかないが,考えられる主な理由は次の3つだろう。

(A)給料が(他のチームに比べて)安い。

(B)チーム内に問題がある(たとえば人間関係)。

(C)チームが弱い(から達成感が味わえない)。

このとき新井の会見を聞いた多くの人は,新井のFA移籍の理由が(C)であると想像した。

多くの人の新井に対する「怒り」の理由がそこにある。

「チームが弱いから出て行きます」という発言のどこに問題があるのか?答えは言うまでもない。

チームが弱いことに対する責任は,四番打者である新井自身が背負うべきじゃないのか?

つまり,新井のFAの本質はたとえて言うなら,会社の営業部長が,自分が無能なせいで会社の

財務を悪化させておきながら,部下を見捨ててより大きな会社に移籍するようなものじゃないのか?

と多くのファンは考えた。「カープが大好きだ」「出ていきたくて出ていくのではない」という新井の

言葉は,そんなファンの心理を完全に逆撫でした。一口で言えば,2007年オフのFA会見で新井が

流した涙は,偽善者の涙にほかならない(より辛らつな言い方をすれば,今年大きな注目を集めた

兵庫県の「号泣県議」の涙と本質的には変わらない)。彼自身は気づいていなかっただろうが,

あの涙は,自分の良心の責め苦と周囲の人々の批判からわが身を守るための自己防衛本能,

あるいは自分の醜い部分から目をそむけた現実逃避の感情から出たものだ。

 

もう一度,新井の発言の社会的意味を考えてみよう。

多くの人は,上で述べたように「カープが弱いから自分はカープを出ます」というメッセージを,

新井の会見から受け取った。

その言葉を聞いた多くの人は,おそらく次のような感想を持ったはずだ。

●四番打者としての自分の責任を棚上げして,しかも自分だけチームから逃げるのは卑怯だ。

●「自分を責めないでほしい(悪いのは自分じゃない)」という言い訳がましい態度が女々しい。

●チームを出て行く人間に,チーム愛を語る資格はない。

●「カープは弱い(から出たい)」というメッセージを世間に対して送ったことは,カープ球団と

   選手,および全カープファンに対する侮辱だ。

あの温情主義の松田オーナーが新井に対して「愛憎はあるが」とわざわざ「憎」と言うくらいだから,

2007年の新井の発言が多くの関係者を不愉快な気分にさせたであろうことは想像に難くない。

 

◆2014年の新井の復帰の何が問題なのか?


事実を解釈することは簡単だ。ほぼ間違いなく,新井は2007年に自分が犯した「失敗」あるいは

「罪」を理解していない。だから今回も,同じ失敗を繰り返した。

彼は今回も「悩みました」と語っているが,自分の悩みの本当の理由を理解していない。それはこうだ。

2007年に彼がFA宣言したのは,彼にとって「カープへの愛」よりも「自分の欲望」の方が強かったからだ。

その欲望が金であれ向上心であれ,カープ愛の方が強ければFA宣言などするはずがない。

しかし,カープへの愛やファンへの責任よりも自分の欲望を優先すること自体は,プロ野球選手としても

社会人としても,少しも悪いことではない。FA選手はみんなそうだ。

新井がダメなのは,「自分は大義よりも個人的欲望の方を優先したのだ」という心の痛みに正面から

向き合う勇気を持っていないことだ。だから言い訳をし,(自分への言い訳として)涙を流すのだ。

今回もその構図は同じだった。カープに復帰することに道義的な問題があるということは本人も

わかっているだろう。しかし,結果的に彼は(おそらくはカープ以外から声がかからなかったために)

カープで選手生活を続ける道を選んだ。つまり今回もまた,「筋を通すこと」よりも「自分の欲望」を

優先したのである。その事実を認めるのが怖いから,「悩みました」という聞き苦しい言い訳が

口をついて出るのだ。

良心が痛むのなら,「7年前のFAでファンの皆さんを裏切る形になって申し訳ありませんでした」と

最初にファンに詫びを入れてから「その借りを,来年活躍して返します」とでも言えばよかったはずだ。

2007年も2014年も,新井の会見には彼の「心の弱さ」が強くにじんでいた。

女だったらそれを「かわいい」と思うかもしれないが,男の目からは「筋を通さないダメ人間」にしか見えない。

この説明が多くのカープファンの声を代弁しているかどうかはわからないが,自分はそのように思うわけだ。


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