大人の英文法-144

〈S be C〉のSとCの関係

 

「S=C」の関係が成り立つ範囲

@Ken is smart/tired. [C=形容詞]

AKen is the captain. [C=名詞]

BKen is a student. [C=名詞]

※お持ちの方は「現代英文法講義」p.44も参照してください。

 

「S=C」という言葉を「SとCは同一物である」と言い換えるなら,これらのうちS=Cの関係を表す文はAだけだと言えます。

@のようにCが形容詞の場合は,CはSの性質や状態を表します。

AはKen=the captainと言えます。

Bは一見するとKen=a studentだが,厳密には少し違います。

S=Cの関係が成り立つなら,SとCを入れ替えても文の知的意味は変わらないはず。

〇A’The captain is Ken.

×B’A student is Ken.

AではSとCを入れ替えても正しい文ができます。

(もっとも,伝えたい情報は違います。AはKenについて,A’はthe captainについて語る文です)

一方,B→B’の言い換えは誤りです。

 

ABの比較から,S=Cの関係が成り立つためには,少なくともCが定名詞[theなどの限定詞つきの名詞]でなければならないと言えます。

ただしそれは必要十分条件ではありません。たとえば

CKen is my brother.

DMy brother is Ken.

Cの話し手には兄弟が2人以上いる可能性もあります。Dの話し手の兄弟はケンしかいません。

では,AKen is a captain. でSとCを入れ替えられないのはなぜか?

 

内包と外延

内包とはある概念に共通する性質,外延とはその概念が指す具体的なもののこと。

たとえば「人間」という概念の内包を「2本足の動物のうちで理性的なものである」と表現した場合,

「2本足の動物の外延>人間の外延」という関係になります(人間は2本足の動物に含まれる)。

https://kotobank.jp/word/%E5%86%85%E5%8C%85-107439

そして一般にS be C. の形では,「Sの外延≦Cの外延」という関係が成り立ります。したがって,

(1)S=Cのとき:SとCを入れ替えても正しい文になる。

(2)S<Cのとき:SとCを入れ替えられない(入れ替えるとS>Cとなるから)。

AKen is a student. は(2)の例であり,A captain is Ken. とは言えません。

次の文はどうでしょう。

ETokyo is the capital of Japan. (東京は日本の首都です)

FWhat is the capital of Japan? (日本の首都は東京です)

EはS(の外延)=C(の外延)だから,SとCを入れ替えても正しい文になります。

では,FのSはwhatとthe capital of Japanのどちらでしょう?

答えは「S=the capital of Japan」です。なぜなら,意味を考えればわかるとおり,whatの外延の方が広いから。

したがって間接疑問は,

〇Do you know what the capital of Japan is? [what+S+V]

×Do you know what is the capital of Japan? [what+V+S]

(日本の首都がどこか知っていますか)

となります。

※What is the capital of Japan? に対する返答は,理屈の上ではIt’s Tokyo. ですが,Tokyo is. という答え方もよく聞かれます。

また,次の文はどちらも可能です。

〇(a) What do you think is the best way to learn English? 

〇(b) What do you think the best way to learn English is?

(英語を学ぶための最もよい方法は何だと思いますか)

理屈から言えば,(What is the best way to learn English? のSは下線部だから)(b)が正しいように思えます。

しかし(b)だと文構造がわかりにくくなるためか,実際は(a)の方が自然に響きます(AIもそう判断します)。

※内包と外延については,「逆転の英文法」(伊藤笏康,NHK出版新書)に興味深い説明があります。それによると,

無冠詞のdogは(抽象概念であると同時に)「犬」という個体の集合体であり,そこに「外延からの取り出し」という操作を加えることで個々の犬を表すことができます。

このとき,非限定的な取り出しはaで,限定的な取り出しはthe(など)によって行います。

 

最初の話に戻ります。「S be C. の形では〈S=C〉の関係が成り立つ」という説明は,どの程度までの範囲をカバーできるか?

たとえば「She is kindness. と言えないのはなぜか?」と問われたら,「S[人]≠C[抽象概念]だから」という回答が最も簡潔でしょう。

このように,「S=C」の関係を利用した説明が有効な場合は確かにあります。次の文はどうでしょうか。

Look, the only reason we talk like this is because we care about you

(いいかい,我々がこんなふうに話すのも君のことを気にかけているからこそなんだ)〈ウィズダム英和〉

この文には,次の2つの説明が可能です。

(A)S≠Cである。なぜならSは名詞節,Cは副詞節だから。

(B)S=Cである。この文ではbecauseが名詞節を作る接続詞の働きをしている。

他の言語的事実とつじつまが合う限り,2つの理屈の間に優劣はありません。

要するに,「自分が納得できるように,自分なりの文法的理屈を組み立てればいい」ということです。

多くの例に当たるうちに,その理屈を修正しなければならないケースも出てきます。

そのようにして「マイ英文法」をブラッシュアップしていく努力が大切だと思います。

 

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