● かぶせ釣りでは,この魚を対象魚に含めるかどうかで,タックルが全く違ってきます。かぶせ釣り師の中には,コブダイをチヌ釣りにおけるボラのような「外道」として扱う人もおり,そういう人たちはコブダイの食味を問題にします。煮ても焼いても食えない,というわけです。しかし,調理方法によっては十分おいしく食べられます(⇒釣魚クッキング)。また,それ以外の理由からも,私はこの魚をかぶせ釣りの主要な対象魚の1つだと考えています。それは,下のような理由です。


● この魚はカキが大好物であり,かぶせ釣り以外ではごくたまにしか釣れません。また,瀬戸内地方では(底に根がありさえすれば)どの波止にも居着いていると思います。波止でのかぶせ釣りでは最もヒットする確率が高い魚と言ってよいと思います。特に冬場は,コブダイを相手にしなければボウズの確率がかなり高くなります。

● とにかくパワーがすごい!コブダイとイシダイ以外の魚なら,道糸・ハリス直結の1.5号ラインで十分取り込めます。しかしコブダイを対象魚に含めるなら,道糸は最低でも3号が必要になります。それほどまでにこの魚は,瀬戸内の波止釣りでは最強と言ってよいほどの引きの強さを持っています。釣り味の点から言えば格別と言ってよいでしょう。

● いささか不純な動機ですが,釣り人には「自分の釣った魚を誰かに見てもらいたい」という思いがたいていあります。スカリに大きなコブダイが入っていれば,見物人の注目を一身に集めることは確実(人の多いファミリー釣り場ならなおさら)です。もちろん最大の目的は「食うために釣る」ということですが。

● コブダイは,かぶせ釣りの初心者にとっては一番釣りやすい魚です。取り込むのは楽ではありませんが,魚の引きを味わうには最高のターゲットです。これから波止でのかぶせ釣りを始める方には,入門編としてコブダイから入ることをお勧めします。


タックルは,次のような感じになります。

● 竿は,コブダイ専門に狙うなら3m以上の磯竿の方が確実に取り込めるかもしれません。アイナメやチヌも同時に狙うのであれば,感度と合わせを重視して,2m以下のイカダ竿を使うべきでしょう。

道糸とハリスは,最低でも3号が必要です。また,根ずれに強いタイプのハリスを使うことも大切です。このタイプの糸を使っていれば,ハリスがギザギザになってもどうにか持ちこたえることがありますが,普通のハリスだと一発で切れてしまいます。(→かぶせ釣り事典(道具編)<ハリス>を参照)

● ハリは,チヌバリの3号くらいだと,大型がヒットした時に折れたり曲がったりすることがあります。グレバリを使うなら10号程度が適当です。私は,軸のやや太いチヌグレの4号,または伊勢尼の9〜10号を使っています。


釣り方に関する注意点は,次のとおりです。

サシエのカキは,できるだけ大きなものを使います。身の質はあまり気にしなくてもよいと思います。半透明の(生育不十分の)カキでもかまいません。

竿は手持ちでなくてもかまいませんが,竿から離れるのは禁物です。置き竿にして釣り場を離れると,竿を海へ引きずりこまれます。かぶせ釣りの初心者なら,たいていそういう経験をするはずです。なお,尻手ロープをつけておけば釣り場を離れてもいいか?と言えば,それもダメです。魚が走り出してから竿を持っても,たいてい根に潜られてラインブレイクを起こします。

● 私の場合,尻手ロープを使うときは,クーラーなどの固定物ではなく,ズポンのベルトに結び付けています(クーラーにつなぐ場合は,すぐ外せるようにしてあります)。大型のコブダイと短竿でやりとりするためには,魚の引きに合わせて波止の上を動き回らなければならないケースもあるからです。特に魚が横に走ったとき,釣り座を移動せずにリールを巻くと,必ず岸壁のカキに道糸がこすれて高切れしてしまいます。 


● 魚を掛けるまでは簡単です。「コーン」という感じの明確な当たりが出て,大型の場合は竿先がフワッと浮き上がります。合わせのタイミングは多少遅れてもかまいません。コブダイは「向こう合わせ」でも釣れる数少ない魚であり,当たりがあればまずハリ掛かりします。ただし,50cmオーバーになると,取り込める率はかなり下がります。大型を釣り上げるためのポイントを以下にまとめておきます。

● 向こう合わせでも釣れるとは言っても,魚が走り出してから合わせたのでは,大型魚のパワーを止めるのは困難です。当たりがあったらすぐに合わせて,頭を向こうに向けさせないようにするのがベターです。

● 最大のポイントは,「やり取りの際,なるべく糸を送り出さない」ということです。短竿を使うためタメがききにくく,ある程度糸を出さざるを得ない場合がありますが,バラシの多くは根ずれ(底のカキや岩にハリスや道糸がこすれて切れること)によって起こります。ドラグをなるべく締めておき,限界まで竿の弾力を使うようにします(コブダイを釣る場合,タイコリールのようなドラグなしのリールは,初心者には扱いが難しいと思います)。 通常チヌなどの大型を釣るときは,無理をせず沖で魚を弱らせてから寄せるのが常識です。しかしコブダイの場合は,魚の引きに合わせていたのではどんどん糸が出てしまいます。竿が短い分,道糸やハリスを太いものにして,できるだけ力と力の勝負で寄せるのが正しい方法です。

● タモ入れの際に岸壁のカキに糸が触れることによってラインが切れることがあるので,最後まで油断せずに取り込むようにしてください。