2012年12月 up

アトラス総合英語 著者からのメッセージ(1)

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※この記事は,著者の一人(佐藤誠司)の個人サイトの一部です。桐原書店の公式HPは下記へどうぞ。

http://www.kirihara.co.jp/detail/9784342010507.html

アトラス総合英語  英語のしくみと表現 (桐原書店)

[編著] 佐藤誠司 / 長田哲文

 

※以下の記事は,2017年7月に一部をリライトしました。

 

◆アトラスとはどんな参考書か?

 

一般に本の性格は,冒頭の「はしがき」に書かれています。以下はアトラスの「はしがき」の抜粋です。

とりあえずこれを読めば,アトラスの基本的な性格はわかるかと思います。

 

この本は,従来の英文法参考書の殻を破り,「高校生にとって本当に必要な文法の知識とは何か」を

考え直すことによって生まれました。

 

この本の基本的な特長は,次の2つです。

 

@大学受験に役立つ


近年の入試英語では,細かい文法知識を問う問題が減り,代わりに読解問題の

ウエイトが高くなっています。そうした傾向を反映して,この本では次の点を重視しています。


・リーディングに役立つ知識を重点的に取り上げる。
・最近の入試での出題頻度が高い学習項目を優先的に取り上げる。


A幅広いコミュニケーション能力の向上に役立つ


2013年度から高等学校に適用される新学習指導要領に合わせて,「読む」「書く」

「聞く」「話す」の4つの技能をバランスよく高めることができるよう,これまでの

文法参考書には見られない様々な説明を加えました。たとえば,実際に英語を

使うときに鍵となる「話し言葉」と「書き言葉」の違いを考慮して,「話し言葉では

こちらの表現を使う」などの解説を入れています。


@とAは方向性が違うように思われるかもしれませんが,そうではありません。

センター試験をはじめとして,近年の大学入試の英語は「コミュニケーション重視」の

方向に大きく変わりつつあります。その対極にあるのが,昔の大学入試の一部に見られた,

実際のコミュニケーションにはあまり役立たない「文法のための文法」の知識です。

この本ではそうした「むだな知識」を選別して極力排除し,必要な知識だけを整理しています。

また,文字による長い説明はできるだけ省き,図表やイラストを多用して「見ただけで理解

できる」ことを目指しています。

 

◆4技能テストとアトラス

 

2020年度から大学入試には民間の4技能テストがオプションとして導入され,2024年度からは

国公立大志望者は4技能テストの受験が必須になります。

このような変化に対応して,アトラスには「4技能Tips」というコラム記事があります。

ここでは例を2つ挙げておきます。

 

●4技能Tips−Listening: canとcan'tの読み方 (p.80)

can/can't を発音する場合,原則としてcanには強勢を置かず,can'tには強勢を置く。

これを知っておくと,リスニングの際に役立つ。

(a) I can use this software. [k(ə)n] (私はこのソフトを使える)

(b) I can't use this software. [kǽnt] (私はこのソフトを使えない)

(a)の下線部は「アイク(ン)ニューズ」のように聞こえる(太字の部分に強勢を置く)。

一方(b)は,「アイキャンチューズ」(イギリス英語などでは「アイカーンチューズ」,

あるいはcan'tの語尾の[t]の音が消えて「アイキャ(ン)ニューズ」のように聞こえる。

したがって,tの音がなくても,canの音がはっきり聞こえたら否定文だと考えてよい。

can以外の助動詞(mustやshouldなど)も,否定のnotがつけば強勢を置く。

 

●4技能Tips−Writing: 関係代名詞を使う場合を見極める (p.216)

関係代名詞を使った次の例文を見てみよう。

(a) China is the country which has the largest population in the world.

      (中国は世界一の人口をもつ国です)

(b) My uncle is a man who often goes abroad on business.

      (私のおじは仕事でよく外国へ行く人です)

これらの文は文法的には正しいが,次のように,もっと簡潔に表すことができる。

(a') China has the largest population in the world.

      (中国は世界一の人口をもつ)

(b') My uncle often goes abroad on business.

      (私のおじは仕事でよく外国へ行く)

(a)(b)の文の問題点は,太字の部分にある。「中国は国である」「私のおじは人[男性]である」は

自明の事実であり,情報的な価値がほとんどない。(b)を次の文と比べてみよう。

(c) My uncle is an engineer who works for a computer company.

      (私のおじはコンピュータ会社で働く技師です)

この文は,下線部が意味のある情報を伝えているので自然である。英作文で関係代名詞を

使うときは,「もっとシンプルに表現できないだろうか」と考える習慣をつけておくとよい。

 

 

◆アトラスの説明の例

 

アトラスが最も重視するのは「学習効率」です。アトラスの特徴を一口で言うなら,

できるだけ労力をかけずに,必要な知識を身に付ける」という点を重視していることです。

「必要な知識」とは一義的には「大学入試で必要な知識」ということですが,「はしがき」でも触れたとおり,

今日では入試の英語と実際のコミュニケーションで使われる英語とのギャップは少なくなりつつあるので,

高校生だけでなく社会人の英語学習にも適しているはずです。

 

「労力をかけずに」とは,要するに「文字による説明の量を減らす」ということです。

ここがフォレストとアトラスとの決定的な違いです。アトラスの各章にも,フォレストの

Part1に相当する Introduction という導入説明のページがあります。アトラスの

「動名詞」の Introduction は,次のような内容です(抜粋)。

 

■ 動名詞とは

〈動詞の原形+-ing〉で「〜すること」の意味を表す形です。「動詞を

名詞に変えたもの」と考えるといいでしょう。現在分詞(進行形の-ingなど)

(→UNIT8)と同じ形ですが,はたらきが異なります。

 

■ 動名詞のはたらき

名詞と同じように,主語(S),目的語(O),補語(C),前置詞の目的語の

はたらきをもちます。

walk in the park

動詞   (公園を歩く)

walking in the park    ← 全体が名詞になる

 動名詞       (公園を歩くこと)

I like walking in the park.    ← S・O・Cなどとして使える

S V             O

 (私は公園を歩くのが好きです)

 

こんな感じの説明が,「動名詞」の冒頭に2ページほどあります。

類書の中には,文法概念をていねいに説明しているものもあります。

アトラスではたとえば「動名詞とは何か」という点に関しては「動詞に-ingがついて『〜すること』という

意味になったもの」という程度の理解があれば当面OK,というスタンスです。

(不定詞と動名詞のニュアンスの違いなどは後で説明していますが)

その代わりにアトラスが重視しているのは,「覚えるべきものは全部載せる」と

いう点です。たとえば「toに続く動名詞」は,大学入試では定番の知識です。

 

I'm looking forward to hearing [×hear] from you.

(あなたから便りがあるのを楽しみに待っています)

 

この文のtoは前置詞なので,後ろには動詞の原形(hear)ではなく動名詞の

hearing を置きます。このようなものは一種の定型表現(熟語)として丸暗記

しておくのが,入試対策としても日常会話や作文を行う上でも効率的です。

どの参考書にも,次の2つは必ず載っています。

・look forward to 〜ing (〜するのを楽しみに待つ)

・be used [accustomed] to 〜ing (〜することに慣れている)

 

一方アトラスでは,これらに加えて次の表現も示しています。

・get used [accustomed] to 〜ing (〜することに慣れる)

・devote O to 〜ing (Oを〜することに向ける[捧げる])

・object to 〜ing (〜することに反対する)

・prefer A(〜ing) to B(〜ing) (BすることよりもAすることを好む)

・when it comes to 〜ing (〜すること[話]になれば)

・What do you say to 〜ing? (〜するのはどうですか)

 

これらを加えた基本的な理由は,「大学入試に出る」からです。

アトラスは「入試に出る知識は全部載せる」ことを基本方針としています。

したがって,類書に比べると情報量がかなり多くなっています。

 

 

記事はまだ続きます。続きはこちら(著者からのメッセージ2)へどうぞ。