2013/3/23 up

大人の英文法−021  分詞とは 

 

学校英語で言う「時制」では,現在・過去・未来を表す基本形と,これらに進行形

および完了形を組み合わせた形を学びます。今までに取り上げていないのは

完了形ですが,その説明に入る前に「分詞」とは何かを見ておきましょう。

分詞は動詞の活用形の一種で,「動詞から分かれてできた言葉」くらいの意味に

考えてかまいません。分詞には現在分詞・過去分詞の2種類があります。

たとえば eat(食べる)という動詞からは,eating(現在分詞)と eaten(過去分詞)が

できます。


 

分詞は中学の学習範囲ですが,中3の最後のあたりに出てきます。英語を学習する

上で,分詞の働きを理解することは極めて重要であり,また難しくもあります。

その大きな理由の1つは,次の点にあります。

・現在分詞は「現在」を表さない。また,過去分詞は「過去」を表さない。

「じゃあ,なんで現在分詞とか過去分詞とか言うんだ?」という疑問が当然わきますね。

この疑問に明確に答えるのは難しく,分詞の名称は学者によってもまちまちです。

たとえば古典的な英文法学者として知られるイエスペルセンは,現在分詞と動名詞を

まとめて ing-Form,つまり「ing形」と呼びました。今日でも両者を区別しない立場で

文法理論を構築する人もいます(たとえば「1億人の英文法」の大西先生など)。

ここでは,学校英語にならって「現在分詞」「過去分詞」という分類をベースに話を

進めます。

まず「分詞の本質的な意味は何か」を確認しておきます。次のことをしっかりと頭に

入れておいてください。

・現在分詞は「進行」「能動」を表す。

↑        ↑

↓        ↓

・過去分詞は「完了」「受動」を表す。

「進行」と「完了」は対になる概念です。「008 時制と相」の説明を再確認しておきます。

動作や状態が基準時に完了していれば「完了相」を,継続していれば「進行相」を使います。

(a) I am eating lunch now. (今昼食をとっているところだ) 〈現在進行形〉

(b) I have eaten lunch. (昼食をとり終えたところだ) 〈現在完了形〉

(a)は進行相だから,本質的に「進行」の意味を持つ現在分詞(eating)が使われています。

一方(b)は完了相だから,「完了」の意味を持つ過去分詞(eaten)が使われています。

このように進行形や完了形は,分詞の本質的な意味を利用した時制だと言うことができます。

【参考】「それなら,eatingは「進行分詞」,eatenは「完了分詞」と呼べばいいのではないか?という疑問がわきます。

 実際にそういう立場もありますが,その用語だと両者のもう1つの性質である「能動」「受動」の違いが表現

できません。そちらを重視すればeatingは「能動分詞」,eatenは「受動分詞」と言うべきだということになり,

結局うまい言葉が見つからないので便宜的に「現在分詞」「過去分詞」と呼んでいる,というところでしょう。


 

ここで「能動」「受動」についても説明しておきます(詳しくは「態」のパートで説明します)。

簡単に言えば,「能動」とは「〜する」,「受動」とは「〜される」という意味です。

上の(b)の文をもう一度見てみましょう。

(b) I have eaten lunch. (昼食をとり終えたところだ) 〈現在完了形〉

この文は,古い英語では次のように表現していました。

(c) I have lunch eaten

この文の eaten は「受動」つまり「食べられる」という意味です。日本語に直すと,

「私は食べられた昼食を持っている」となります。ここから eaten が前に出て(b)になり,

eaten には「食べるという動作が完了している」という意味にもなりました。

I have eaten lunch. を文字通りに訳すと,「私は[昼食を食べることが完了した状態]を

持っている」という感じになります。このように,過去分詞の「受動」と「完了」の意味には

発達上の接点があります。過去分詞が持つこの「完了」「受動」という本質的な意味が,

英語のさまざまな表現のベースになっています。それは現在分詞の場合も同様です。


 

視点を変えると,次のような説明もできます。

たとえば過去を表すには「過去形」という動詞の活用形があります。それと同じように,

1つの動詞を「進行形」とか「完了形」のように活用させてはどうでしょうか。

たとえば eat という動詞を,ate(過去形),eatol(未来形),eatep(進行形),eatant

(完了形)などと活用させるわけです。実際に世界にはこのように多くの活用形を持つ

言語もありますが,いかにも覚えるのが大変そうですね。英語では,たとえば過去分詞は

完了形(have eaten)にも受動態(is eaten)にも使うことができます。そのようにして

種類の少ないパーツをうまく組み合わせていろんな表現をすることで,言語体系全体を

シンプルなものにしようという心理が,英語(を含むあらゆる言語)の発達の背景にあります。

かつての英語には今よりも多くの活用形がありました。日本語の場合でも,かつては間違いと

されていた表現がどんどん許容されるようになっています。言語には,時代を経るにつれて

単純化していくという性質があるわけです。

 

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