仮定法には4つの形式がありますが(→038),ここでは学校で習う代表的な形で
ある「仮定法過去」「仮定法過去完了」を取り上げます。
繰り返しますが,「仮定法」とは「述語動詞の形の変化の一種」だと考えてください。
一般的な仮定法過去の形と働きは,次のようにまとめることができます。
・if 節中で過去形,主節中で〈would/could/might+原形〉を使う。
・現在の事実の反対を仮定して,現状に対する話し手の願望などを述べる。
例文を1つ挙げます。
(a) If I knew his e-mail address, I could
contact
him.
(もし彼のメールアドレスを知っていれば,彼に連絡を取れるのに)
昔流の「書き換え」パターンで言えば,この文は次の文に近い意味を表します。
・I don't know his e-mail address, so I can't contact him.
(私は彼のメールアドレスを知らないので,彼に連絡を取れない)
・I'm sorry I don't know his e-mail address (and so I can't contact
him).
(彼のメールアドレスを知らない(だから彼に連絡を取れない)のが残念だ)
仮定法過去のバリエーションをいくつか挙げておきます。
(b) If I could
speak Italian, I would
move to Rome.
(もしイタリア語を話せれば,ローマへ引っ越すのに)
※if 節中では助動詞の過去形を使うこともできます。
(c) If it weren't
[wasn't]
raining,
we could play
baseball.
(もし雨が降っていなければ,私たちは野球をするのに)
※if 節中では進行形や受動態のbe動詞もwere(口語ではwas)にします。
(d) If you got
100 million yen, what would
you do?
(もし1億円を手に入れたら,どうしますか)
※主節が疑問文などになることもあります。
(e) If I were
you, I wouldn't change
jobs.
(もしぼくが君なら,転職しないよ)
※ if I were you は一種の慣用表現であり,if
I was you とはあまり言いません。
なお,(a)〜(d)では,仮定法の代わりに直説法を使うこともできます。ただし意味は
違ってきます。既に述べたことをもう一度確認しておきましょう。
たとえば(d)を,直説法を使った次の文と比べてみます。
(d') If you get 100 million yen,
what will you do?
(d')(直説法)では,話し手は「あなたが1億円を得る可能性」と「そうでない可能性」とを
同等に考えています。一方(d)(仮定法)では,話し手は「まずそんなことはないだろうが,
もし1億円を手に入れたら」という控えめな(しかし実現の可能性がゼロではない)仮定を
行っています。(d)を「現在の事実の反対」という観点から説明することはできません。
一方(e)では,直説法を使って If I am you, I won't
change jobs. と表現することは
できません。「私があなたである」可能性はゼロだからです。このように直説法は,
可能性がゼロである仮定(却下条件)を表すことはできません。しかし(d)からも
わかるとおり,仮定法は「可能性がゼロの場合」「可能性が(少ないけれども)
ある場合」の両方の仮定を表すことができます。
続いて,仮定法過去完了の例を示します。
(f) If I had
known his e-mail address, I could
have contacted
him.
(もし彼のメールアドレスを知っていたら,彼に連絡を取れたのに)
仮定法過去完了の形と働きは,次のようにまとめることができます。
・if 節中で過去完了形,主節中で〈would/could/might+have+過去分詞〉を使う。
・過去の事実の反対を仮定して,実現しなかったことがらに対する話し手の願望などを述べる。
仮定法過去完了は大学入試では非常によく問われる項目ですが,基本形を暗記しておきさえ
すれば容易に正解を出せます。センター試験(2010)から1つ例を挙げてみましょう。
・If I hadn't broken up with Hannah last month, I (
) going out with her for two years.
@ had been A have been
B will have been C would have been
この問いの正解はC。文の意味は「もし先月ハンナと別れていなければ,私は彼女と
2年間付き合ったことになっただろう」です。if節中で過去完了形が使われているので,
文の意味を考えなくても機械的にCが正解だと判断できます。
また,仮定法過去と仮定法過去完了を組み合わせた,「混合仮定法」と呼ばれる形が
あります。これもテストではよく出ます。次の例もセンター試験(1998)からの引用です。
・If I ( ) a computer last year, I’d still
be using my old typewriter.
@ hadn’t bought A haven’t bought
B shouldn’t buy C wouldn’t buy
正解は@。文の意味は「もし去年パソコンを買わなければ,私は今でも古いタイプ
ライターを使っていることだろう」。条件節は過去(去年)のことを,主節は現在のことを
語っています。この形は次のように一般化できます。
If S+V[過去完了形],S+V[would/could/might+原形].
=もし(過去に)〜だったら,(今)…だろう[できるだろう,かもしれない]
【参考】逆のケースも(まれですが)あります。
・If dogs could speak, my dog would
have said "I'm happy."
(もし犬が話せるとしたら,私の犬は「うれしい」と言っただろう)
この例では if
節が(現在の)一般的事実に,主節が過去のことがらに言及しています。
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