(3) if
節が省略されて主節だけが残ったもの
センター試験の出題例を見てみましょう。(空所補充語句選択)
"What did you think of last night's game?"
"The team played well, but they (
) better in the first twenty minutes."
@ could've done A didn't do
B hadn't done C must've done (2000追試験)
→
正解は@。「ゆうべの試合をどう思いましたか」「そのチームはよくやったけれど,
最初の20分はもっとうまくやれたでしょう」。
この文では,could've done
が「彼らがもしもっとがんばればできたのに」という
残念な気持ちを表しています。このように,if
節が省略されて主節だけが残った形が
しばしば見られます。仮定法であることは,助動詞の過去形が使われていることから
判断できます。次の例も同様です。
・Probably we could meet tomorrow and have lunch.
(明日会っていっしょに昼食を食べるのはどう?)
→
もともとは「(もしその気になれば)そうすることもできるので」という意味を含む言い方
ですが,仮定の意味が薄れて could が(can
よりも)控えめでていねいな響きを持つように
なりました。このように助動詞の過去形(would,could,mightなど)の多くは仮定法過去や
仮定法過去完了がもとになっており,現在形(will,can,may)を使うよりも穏やかに響きます。
・Most people would say this is a good movie.
((もし尋ねたら)ほとんどの人がこれはいい映画だと言うだろう)
このような would
の使い方も,日常的によく見られます。この文で will
ではなく would を
使える人は,かなり高い英語の表現力を持っていると言えます。
(4) if(もし〜なら)以外の表現を含む文中で仮定法を使うもの
学校で学ぶ主なものは,次の3つです。
@ I wish+仮定法過去
〜((今)〜ならよいのに)
I wish+仮定法過去完了
〜(あのとき〜ならよかったのに)
(a) I wish I were
rich. ((今)金持ちならいいのに)
(b) I wish I had
seen the movie.
(その映画を見ればよかったのに)
(a)は現在の事実の反対を,(b)は過去の事実の反対を述べています。
wish に続く節(that節ですがthatは普通は省略します)中では仮定法を使います。
これには例外はありません。仮定法を使う理由は,たとえば(a)は「もし(今)金持ち
ならいいのになあ」という気分を表すことから理解できるでしょう。なお,wish
は
「望む」の意味ですが,似た意味を表す hope や want
の後ろでは仮定法は
使いません。
また,(b)は I should have seen the movie.(私はその映画を見るべきだったのに)
とも表現できます。これは「もし可能だったなら」のような
if節が省略されて主節
だけが残った形(仮定法過去完了)と考えることもできます。
【参考】もう少し細かいニュアンスの違いを言えば,wish
は〈願望〉を表すので,I wish I had seen
the movie.
は「その映画を見たかったが,忙しくて行く時間が取れなかった(のが残念だ)」
というような状況で使うのに適しています。一方
I should have seen the movie. は「見に
行こうと思えば行けたのになあ」という〈後悔〉の気分を表す言い方です。
A as if [though]+仮定法過去(まるで(今)〜であるかのように)
as if [though]+仮定法過去完了(まるであのとき〜だったかのように)
(c) He speaks English as if he
were [was/is] a native
speaker.
(彼はまるでネイティブスピーカーのように英語を話す)
as if は,as(〜のように)とif(もし〜なら)を組み合わせた表現です。
as if he were a native speaker
の原義は「もし彼がネイティブスピーカーならそうする
ように」となります。as if の代わりに as though
とも言いますが,その場合は「彼は
ネイティブスピーカーではないけれどそのように」という意味が元になっています。
「彼は実際にはネイティブではないのにまるでネイティブのように」という意味だから,
仮定法を使うことは理解できるでしょう。仮定法の
be 動詞は were が原則ですが,
話し言葉では I や he などが主語のときは was
も使います。
ところで,as if
の後ろで直説法(この文なら is)
を使うネイティブも多いことに注意
してください。look as if
の場合は特にその傾向が見られます。
・He looks as if
he is [△were] sick.
(彼はまるで病気のように見える)
「実際には病気ではないのにまるで病気のように見える」という意味だから
were を
使ってもよさそうですが,多くのネイティブはこの文では
is しか認めません。
(d) He spoke English as if he
were [was] a native speaker.
(彼はまるでネイティブスピーカーのように英語を話した)
この文の主節の動詞は過去形(spoke)ですが,「話した」のと同じ時点で「まるで
ネイティブのようだった」というときは,as if
の節中では仮定法過去(were)を使います
(直説法なら was)。as if
節中で仮定法過去完了を使うのは,次のような場合です。
(e) He speaks [spoke] English
as if he had lived in
America.
(彼はまるでアメリカに住んでいたかのように英語を話す[話した])
この場合は「話す」時点よりも前に「住んでいた」ことになるので,主節がspeaksでも
spokeでも as if 節中の動詞は had lived になります。
【参考】ただしこれも絶対的なルールではなく,私の経験ではネイティブの中にも(d)の意味で(e)の英文を
使う人もいます。
B It is time+仮定法過去
((今は)もう〜してもいい頃だ)
(f) It is time you
went [×go]
to bed.
(もう寝る時間だよ)
「あなたはもう寝るはずの時間だ(しかし実際には寝ていない)→早く寝なさい」という
非難の響きを含む表現です。It
is time for you to go to bed. とも言いますが,こちらは
ニュートラルな表現であり,非難のニュアンスはありません。また,It
is about time 〜
(そろそろ〜してもいいくらいの時間だ),It is
high time 〜(とっくに〜しているはずの
時間だ)などとも言います。これらの後ろに〈S+V〉の形を置くときは,Vは常に過去形に
します。
【参考】この過去形は仮定法ではなく直説法だという説もあります。その根拠は,たとえば
It's high time
I was going.(もうおいとまする時間です)の
was を were で言い換えることはできない(仮定法過去
ならwereも使えるはずなのに)というものです。
そのほか,次のような仮定法の使い方もあります。
(g) "Can I smoke?" "I'd
rather you didn't."
(「たばこをすってもいいですか」「できればやめてください」)
*would rather の後ろに〈S+V〉の形を置いて「(むしろ)〜ならよいのに」という意味を
表せます。この例のように,相手に遠慮がちに頼むときによく使われます。この場合の
動詞は仮定法過去にします。
(f) I'd appreciate it
if you would help me.
(お手伝いいただけるとありがたいのですが)
*I'd [I would] appreciate it if you would
[could] 〜 の形で「〜していただけるとありがたい
のですが」と相手に遠慮がちに頼む意味になります。非常にていねいな言い方です。
直訳すると「もしあなたが〜する意志があるなら[〜することができるなら],私は(それに)
感謝するのですが」となります。
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