2013/6/5 up

大人の英文法−044 仮定法を含む表現A 

 

043に引き続き,仮定法を使うさまざまなケースを見ていきます。

(1) if 節と同等の意味を表す別の表現を使ったもの

(2) 〈if+S+V〉→〈V+S〉と言い換えたもの

(3) if 節が省略されて主節だけが残ったもの

(4) if(もし〜なら)以外の表現を含む文中で仮定法を使うもの

(1)と(2)は043で取り上げたので,ここでは(3)(4)を説明します。


 

(3) if 節が省略されて主節だけが残ったもの

 センター試験の出題例を見てみましょう。(空所補充語句選択)

"What did you think of last night's game?"

"The team played well, but they (      ) better in the first twenty minutes."

@ could've done A didn't do   B hadn't done C must've done    (2000追試験)

→ 正解は@。「ゆうべの試合をどう思いましたか」「そのチームはよくやったけれど,

最初の20分はもっとうまくやれたでしょう」。

この文では,could've done が「彼らがもしもっとがんばればできたのに」という

残念な気持ちを表しています。このように,if 節が省略されて主節だけが残った形が

しばしば見られます。仮定法であることは,助動詞の過去形が使われていることから

判断できます。次の例も同様です。

・Probably we could meet tomorrow and have lunch. 

(明日会っていっしょに昼食を食べるのはどう?)

→ もともとは「(もしその気になれば)そうすることもできるので」という意味を含む言い方

ですが,仮定の意味が薄れて could が(can よりも)控えめでていねいな響きを持つように

なりました。このように助動詞の過去形(would,could,mightなど)の多くは仮定法過去や

仮定法過去完了がもとになっており,現在形(will,can,may)を使うよりも穏やかに響きます。

・Most people would say this is a good movie.

((もし尋ねたら)ほとんどの人がこれはいい映画だと言うだろう)

このような would の使い方も,日常的によく見られます。この文で will ではなく would を

使える人は,かなり高い英語の表現力を持っていると言えます。


(4) if(もし〜なら)以外の表現を含む文中で仮定法を使うもの

学校で学ぶ主なものは,次の3つです。

@ I wish+仮定法過去 〜((今)〜ならよいのに)

    I wish+仮定法過去完了 〜(あのとき〜ならよかったのに)

(a) I wish I were rich. ((今)金持ちならいいのに)

(b) I wish I had seen the movie. (その映画を見ればよかったのに)

(a)は現在の事実の反対を,(b)は過去の事実の反対を述べています。

wish に続く節(that節ですがthatは普通は省略します)中では仮定法を使います。

これには例外はありません。仮定法を使う理由は,たとえば(a)は「もし(今)金持ち

ならいいのになあ」という気分を表すことから理解できるでしょう。なお,wish は

「望む」の意味ですが,似た意味を表す hope や want の後ろでは仮定法は

使いません。

また,(b)は I should have seen the movie.(私はその映画を見るべきだったのに)

とも表現できます。これは「もし可能だったなら」のような if節が省略されて主節

だけが残った形(仮定法過去完了)と考えることもできます。

【参考】もう少し細かいニュアンスの違いを言えば,wish は〈願望〉を表すので,I wish I had seen

the movie. は「その映画を見たかったが,忙しくて行く時間が取れなかった(のが残念だ)」

というような状況で使うのに適しています。一方 I should have seen the movie. は「見に

行こうと思えば行けたのになあ」という〈後悔〉の気分を表す言い方です。

A as if [though]+仮定法過去(まるで(今)〜であるかのように)

    as if [though]+仮定法過去完了(まるであのとき〜だったかのように)

(c) He speaks English as if he were [was/is] a native speaker.

(彼はまるでネイティブスピーカーのように英語を話す)

as if は,as(〜のように)とif(もし〜なら)を組み合わせた表現です。

as if he were a native speaker の原義は「もし彼がネイティブスピーカーならそうする

ように」となります。as if の代わりに as though とも言いますが,その場合は「彼は

ネイティブスピーカーではないけれどそのように」という意味が元になっています。

「彼は実際にはネイティブではないのにまるでネイティブのように」という意味だから,

仮定法を使うことは理解できるでしょう。仮定法の be 動詞は were が原則ですが,

話し言葉では I や he などが主語のときは was も使います。

ところで,as if の後ろで直説法(この文なら is) を使うネイティブも多いことに注意

してください。look as if の場合は特にその傾向が見られます。

・He looks as if he is [were] sick. (彼はまるで病気のように見える)

「実際には病気ではないのにまるで病気のように見える」という意味だから were を

使ってもよさそうですが,多くのネイティブはこの文では is しか認めません。

(d) He spoke English as if he were [was] a native speaker.

(彼はまるでネイティブスピーカーのように英語を話した)

この文の主節の動詞は過去形(spoke)ですが,「話した」のと同じ時点で「まるで

ネイティブのようだった」というときは,as if の節中では仮定法過去(were)を使います

(直説法なら was)。as if 節中で仮定法過去完了を使うのは,次のような場合です。

(e) He speaks [spoke] English as if he had lived in America.

(彼はまるでアメリカに住んでいたかのように英語を話す[話した])

この場合は「話す」時点よりも前に「住んでいた」ことになるので,主節がspeaksでも

spokeでも as if 節中の動詞は had lived になります。

【参考】ただしこれも絶対的なルールではなく,私の経験ではネイティブの中にも(d)の意味で(e)の英文を

使う人もいます。

B It is time+仮定法過去 ((今は)もう〜してもいい頃だ)

(f) It is time you went [×go] to bed. (もう寝る時間だよ)

「あなたはもう寝るはずの時間だ(しかし実際には寝ていない)→早く寝なさい」という

非難の響きを含む表現です。It is time for you to go to bed. とも言いますが,こちらは

ニュートラルな表現であり,非難のニュアンスはありません。また,It is about time 〜

(そろそろ〜してもいいくらいの時間だ),It is high time 〜(とっくに〜しているはずの

時間だ)などとも言います。これらの後ろに〈S+V〉の形を置くときは,Vは常に過去形

します。

【参考】この過去形は仮定法ではなく直説法だという説もあります。その根拠は,たとえば It's high time

I was going.(もうおいとまする時間です)の was を were で言い換えることはできない(仮定法過去

ならwereも使えるはずなのに)というものです。

 

そのほか,次のような仮定法の使い方もあります。

(g) "Can I smoke?" "I'd rather you didn't."

  (「たばこをすってもいいですか」「できればやめてください」)

*would rather の後ろに〈S+V〉の形を置いて「(むしろ)〜ならよいのに」という意味を

  表せます。この例のように,相手に遠慮がちに頼むときによく使われます。この場合の

  動詞は仮定法過去にします。

(f) I'd appreciate it if you would help me.

  (お手伝いいただけるとありがたいのですが)

*I'd [I would] appreciate it if you would [could] 〜 の形で「〜していただけるとありがたい

  のですが」と相手に遠慮がちに頼む意味になります。非常にていねいな言い方です。

  直訳すると「もしあなたが〜する意志があるなら[〜することができるなら],私は(それに)

  感謝するのですが」となります。

 

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