次の表の黄色の助動詞は,「推量」の意味を表すことができます。
現在形
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will
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shall
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can't
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may
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must
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過去形
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would
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should
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could
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might
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−
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ここでは,これらが表す推量の意味をまとめて見ておきましょう。
話し手の確信の度合いが強い順に並べると,次のようになります。
@must(〜に違いない)
Awill/would(〜だろう)
Bshould(〜のはずだ)
Cmay/might(〜かもしれない)
Dcould(〜でありうる)
*can't(〜のはずがない)は,この序列の中で考えることはできません。
たとえば,次の文中にこれらの助動詞を当てはめてみましょう。
The rumor
( ) be true. =
そのうわさは本当である
。
mustを入れれば「きっと本当だ」という強い確信を表します。
couldを入れれば「ひょっとしたら本当の可能性もある」という程度の確信を表します。
数字で表現すると,mustは100%に近い確信を,mayは50%の確信を表します。
その中間にあるのがwill/would/shouldであり,couldはmayよりも低い確信度です。
推量を表す個々の助動詞の使い方を,もう少し詳しく見ておきましょう。
@must(〜に違いない)
(1) 018で説明した「意志動詞と無意志動詞」を思い出してください。
〈推量〉の意味のmustの後ろには,無意志動詞を置きます。
・He must be
studying now. (彼は今勉強しているに違いない)
*beは無意志動詞。
・He must study
hard.
(○彼は熱心に勉強しなければならない)
(×彼は熱心に勉強するに違いない)
*studyは意志動詞なので,このmustは〈推量〉の意味ではありません。
(2) 推量のmustは,否定文では使いません。
(3) 「未来に向けての確信」をmustで表すことはできません。
× Mom must
get angry if she sees this mess.
○ Mom is sure to
get angry if she sees this mess.
(この散らかりようを見たらママは怒るに違いない)
Awill/would(〜だろう)
willは「現在の推量」に使うことができます。次の文のwillは,単純未来
(未来進行形)ではありません。
・He will be
at home now. (彼は今家にいるだろう)
・She won't
be sleeping now. (彼女は今寝てはいないだろう)
046で説明したとおり,助動詞の過去形を使うと意味を和らげることができます。
wouldはwillよりも控えめな推量を表します。
・The rumor would
be true.(そのうわさは(もしかしたら)本当だろう)
*willを使うよりも確信の度合いがやや弱い感じ。
Bshould(〜のはずだ)
次のような使い方です。
・The package should
arrive this afternoon. (荷物は今日の午後に届くはずだ)
・He shouldn't
know my e-mail address.
(彼は私のメアドを知らないはずだ)
1つ目の例文からわかるとおり,should
は「これから〜するはずだ」という
未来に向けての推量を表すこともできます。
Cmay/might(〜かもしれない)
(1) may/might以外の推量の助動詞は,「後ろに無意志動詞を置く」という共通点があります。
しかし,「〜かもしれない」の意味のmay/mightの後ろには意志動詞を置くこともできます。
・He may
come here tomorrow.
comeは意志動詞ですが,この文は次の2通りの解釈が可能です。
「彼は明日ここへ来るかもしれない」「彼は明日ここへ来てもよい」
また,この例からもわかるとおり,mayは未来に向けての推量も表せます。
「彼は来ないかもしれない」は He
may not come. で表せます。
(2) mightはmayよりも控えめな推量を表しますが,実際にはほとんど意味の違いはありません。
特にアメリカ英語では
might が好まれます。なお,mightは「〜してもよい」〈許可〉の意味では
使いません。上の文を He
might come here tomorrow. と言えば,〈推量〉の解釈だけが
成り立ちます。
Dcan't(〜のはずがない)/could(〜でありうる)
(1) can とcould
は使い方が違う点に注意してください。
○ The rumor could
be true.
× The rumor can
be true.
「そのうわさは(ひょっとしたら)本当の可能性もある」という意味では,couldは使えますが
canは使えません。canは一般的な可能性を意味します。
○ Rumors can
be true. (うわさは本当であることもありうる)
この文が正しいのは,「うわさ一般」を語っているからです。もちろんcouldも使えます。
(2)
〈推量〉を表す can(〜でありうる)
は,肯定文中では使えません。
○ The rumor can't
be true. (そのうわさは本当であるはずがない)
○ Can the
rumor be true?
(そのうわさは本当でありうるだろうか[いや,本当のはずがない])
このように,否定文や疑問文(実質的には否定文の意味を表す「修辞疑問文」)で使います。
これらの文では could(n't)
を使うこともできます(より控えめな言い方になります)。
なお,上の Rumors can be true.
という文は,話し手の推量ではなく客観的な可能性を表します。
(3) can't
は未来に向けての推量には使えません。could
はその意味で使えます。 下記を参照
・He can't
become a doctor.
*この文は「彼は医者になることはできない」の意味であり,「彼は医者になるはずがない」と
いう解釈は成り立ちません。(その意味を表す文はHe is
unlikely to become a doctor. など)
・He could
become a doctor.
*この文は次の2通りに解釈できます。
・「彼は(がんばれば)医者になれるかもしれない」〈仮定法過去〉
・「彼は(ひょっとしたら)医者になるかもしれない」〈確信の度合いの低い推量〉
繰り返しになりますが,後者の意味でcouldをcanに置き換えることはできません。
※以下の記事は2016年4月29日に加筆しました。
上記の(3)に関して読者の方から,「can'tを未来の推量に使った例」として次の文をいただきました。
(a)Mary can't fail the examination.
メアリーが試験に落ちるはずはない. [研究社ルミナス英和辞典canの項]
(b)It can't possibly rain tomorrow. あすはとても雨は降らないだろう. [小学館プログレッシブ英和辞典第四版 canの項]
私の方でも調べてみたところ,「can't
は未来に向けての推量には使えない」は不正確でしたので訂正します。
can't
を未来の推量に使う例はあります。次の文は Practical
English Usage(和訳版p.519) からの引用です。
(c) You can't win.
(=You certainly won't win.)
(君は勝てるはずがない[君はきっと勝てないだろう])
(c)では「can't+無意志動詞(win)」が未来の1回限りの出来事に言及しており,「〜できるはずがない
[きっと〜することができないだろう]」という推量の意味を表しています。この文の場合は,
「正確には You won't be able to win.
と言うべきだが,回りくどいので下線部をcan't
で代用した」
というとらえ方もできるかもしれません。読者の方からいただいた(a)も同様です。
しかし(b)の It can't possibly rain tomorrow.
では can=be able toではないから,その説明は無理です。
つまり can't
は,「未来の1回限りの出来事が起こりえない」という意味でも使えることになります。
なお,肯定文中の can
はその意味では使えません。「明日は雨が降る可能性がある」を
It can rain tomorrow.
と英訳するのは誤りです(It could rain tomorrow.
なら正しい文です)。