※推量の意味を表す can/could については 047
推量の助動詞 を参照してください。
ここでは,〈可能〉〈許可〉などの意味を表す can /
could を説明します。
まず,次のように覚えておくとよいでしょう。
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可能
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許可
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can
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〜することができる
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〜してよい
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could
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@(過去に)〜することができた
A(今)〜できるかもしれない |
−
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このようにcanの意味はシンプルですが,couldの解釈には注意が必要です。
まず,〈可能〉(〜できる)の意味を表す例から見てみましょう。
(a) Nancy could
speak Spanish.(ナンシーはスペイン語を話せた)
(b) Nancy was able to
[×could] get the concert ticket.
(ナンシーはそのコンサートのチケットを手に入れることができた)
(c) Nancy could
get the concert ticket.
(ナンシーはそのコンサートのチケットを手に入れられるかもしれない)
couldは「(過去に)〜する能力があった」という意味です。したがって(a)ではcouldが使えます。
しかし,「過去に1回限りの行為ができた」の意味でcouldを使うことはできません。
その場合は(b)のようにwas [were] able toを使ったり,Nancy
managed to get ...,あるいは
Nancy succeeded in getting ...
と言うこともできます。
※couldn'tにはそのような制約はありません。(b)で「手に入れられなかった」と言いたい
ときは Nancy couldn't get ... でOKです。
(c)は仮定法過去に由来する表現で,「運がよければ」などの仮定の意味を含んでいます。
話し手の確信の度合いはmay/mightよりも低く,「ひょっとしたら〜できるかも」という感じです。
(c)は過去の事実ではなく現時点での話し手の推量を表している点に注意してください。
なお,「〜することができた」の意味のcouldは,次のような場合にも使えます。
・I could see a
light in the distance.(遠くに明かりが見えた)
*知覚を表すsee,hearなどは,1回限りの事実でもcouldを前に置けます。認識を表す
understand や remember
なども同様です。
・In those days, we could buy
a newspaper for 40 yen.(当時は新聞が40円で買えた)
*過去の習慣的行為,つまり「やろうと思えばいつでもできた」はcouldで表せます。
日常的な can/could
の使い方の別の例を見ておきましょう。
・I can [could] help
you now. (今(なら)手伝えるよ)
この文の直訳は「私は今あなたを手伝うことができる」ですが,「手伝いましょう」と相手に提案
する場合に使えます。canはここでは「〜する能力がある」ではなく「(状況的に)〜できる」という
意味。canを使うと自分の都合を客観的に説明している響きになりますが,could
だと「もし君が
望むなら」のような仮定の含みがこめられ,相手に判断を委ねることになるので,よりていねいに
響きます。「助動詞の過去形を使うと,現在形よりもていねいになるのはなぜだろうか」という
点を個々の文に即して常に考えるようにすえば,言葉のニュアンスが理解しやすくなります。
次の文も同様です。
(a) Can you help me?
(手伝ってくれる?)
(b) Could you help
me? (手伝っていただけますか?)
両者は,ていねいさの度合いが大きく違います。(a)はカジュアルな表現であり,親しい間柄で
使います。(b)は(a)よりもずっとていねいな表現です。詳しくは別項で説明します。
can
を使った慣用表現として,次のような形があります。
・You cannot
be too careful when you drive a
car.
(車を運転するときはいくら注意してもしすぎではない)
これは「ジーニアス英和辞典」に載っている例文で,〈cannot
... too ...=いくら…しても…しすぎではない〉
という見出しがついています。英和辞典の見出しはだいたいこれと同じですが,OALDなど英英辞典では
carefulの項に〈you cannot be too careful〉を1つの慣用表現として載せているものが多いようです。
つまりこの表現は,ほとんどこの形でしか使わないと考えてよいでしょう。
入試問題で
I can't thank you too much.(あなたにはどんなに感謝してもしすぎではない)のような
文を時々見かけますが,ネイティブの多くはこの文に違和感を覚える(「too much を enough
に直す
方がよい」と言う)ようです。
※以下の記事は2014/1/13に加筆したものです。
上の記事を読んだ読者の方から,「過去に1回限りの行為ができた」の意味で
could は幅広く
使えるのではないか?という指摘をいただきました。これに関して改めてネイティブ(イギリス人)
に尋ねた結果をご報告しておきます。
(a) I could
pass the math test last week.
(b) It stopped raining, so we could
play tennis in the afternoon.
上の説明からわかるとおり,(a)では
could は使えない,というのが一般的な説明です。
この点をネイティブに尋ねたところ,「(a)では文法的には
was able to を使うべきだ。ただ,
実際にはcould を使う人もいるだろう」との回答を得ました。ちなみに文法書や英和辞典では,
一般に(a)のような文では
could は使えないと説明されています。
一方,(b)はどうでしょうか。私はネイティブに次のように質問してみました。
If (a) refers to an action and (b) refers to
a situation, I assume that (b) is more acceptable
than (a). What do you think? (もし(a)が行為を,(b)が状況を語っているのだとしたら,(b)の
方が(a)よりも容認度が高いと私は仮定します。あなたはどう思いますか)
私のこの問いに対してネイティブは,I
agree with you.(賛成だ)と答えました。つまり,
×(a)
I could pass the math test last week.
○(b)
It stopped raining, so we could play
tennis in the afternoon.
これが,今回尋ねたネイティブの判断です。(a)は「先週数学の試験に合格できた」という
1回限りの行為を表しますが,(b)は「雨がやんだので私たちは午後にはテニスをする
ことができる状況になった」という解釈が可能です。このように話し手が「状況」を意識
している場合は,結果として「テニスができた」という1回限りの行為であっても
could を
使える,と言ってよいかと思います。
※以下の記事は2014/2/2に加筆したものです。(やや細かい話ですが)
上の説明を裏付ける記述を見つけました。
「謎解きの英文法
時の表現」(くろしお出版・久野ワ/高見健一著)のp.142に,
次のようなことが書かれています。
・・・つまり助動詞の can
は,本動詞以下で示される行為を「することができる状態に
ある」ということを表わし,(現在の)行為,出来事ではなく,(現在の)状態を表わす
表現です。
この説明が正しいなら,can の過去形
could も「(そのとき)できる状態にあった」と
いう意味を表すと考えられます。同書のp.146には,次のような文が誤りであるとも
説明されています。
× (c) I could
swim all the way across Walden Pond yesterday.
× (d) When I
went to that coffee shop, I could buy a cup of coffee for sixty
cents.
× (e) She could
borrow their car when she visited her parents last weekend.
これらは1回限りの行為を表すので,下線部を(c)では
be able to [managed to] に,
(d)では bought [was able to buy] に,(e) では
borrowed [was allowed to borrow] に
変えねばならない,というのが同書の説明です。
さらに同書から引用します。同書では,「不可能性と可能性とが対照されているときは
過去の1回だけの行為にも could
が使える」とあります。
○ (c)'
I could swim all the way across Walden Pond yesterday, though I
hadn't
managed it the day before.
(一昨日はウォールデン湖を泳いで渡ることができな
かったけれど,昨日はそうすることができた)
(c)が誤りなのに(c)'が許容されるのは,
不可能状態との対比があるからです。
私がネイティブに尋ねるために作った文も,同じような状況を表しています。
○(b)
It stopped raining, so we could play
tennis in the afternoon.
この文には「雨が降っている間はテニスができなかった」という含意があるので,
could
の使用が許容されるのだと考えられます。
ある読者の方にいただいた質問のおかげで,私自身も1つ勉強になりました。
ありがとうございます。これをお読みの皆さんも,「素朴な疑問」があれば何でも
お気軽にご質問ください。