英文法理論の発展の歴史の中に,構造主義文法と呼ばれるものがありました。
私が大学で英文法を学んだ頃は既に変形文法が一般的になっており,構造主義文法は
それよりひと世代前の理論です。その代表的な学者の一人に,ホーンビーという人がいます。
この人は英文の型を25の類型に分類したことで知られています。
それによれば「V+to do」の形は大きく次のように分類されます。
(A)自動詞+to do
(B)他動詞+to do
この分類は今日でも一般的です。この記事の主な目的は文法理論の説明ではありませんが,
皆さんから時々いただくメールを読むと,かなりまじめに文法を勉強しようとしている方が
多いようなので,以下はホーンビーさんの学説を紹介しながら論を進めます。
※以下の記事は,「英語の型と語法」(ホーンビー著・伊藤健三訳注/オックスフォード出版局)
を参考にしています。
◆ 自動詞+to do
ホーンビーさんはこの形を次の4つの下位区分に分類しています。
(ここでは〈be動詞+to do〉の形は省きます)
(1)
副詞的用法の不定詞が目的・結果を表す場合
・We stopped to have a rest.
(私たちは停止して[手を休めて]休憩した)
・Will he live to be ninety? (彼は90歳まで生きられるでしょうか)
(2)
副詞的用法の不定詞が節に相当する場合
・The drunken man awoke to find himself in
a ditch.
= He awoke and found ... または When he awoke he found ...
(酔っ払いは目を覚ましてみたら,みぞにはまっていた)
(3)
副詞的用法の不定詞が「自動詞+前置詞」に相当する場合
・She hesitated to tell anyone.
= She hesitated about telling anyone.
(彼女は誰にも知らせるのをためらった)
(4) seem/appearなどに主格補語の不定詞が続く場合
・This seems (to be) important.
(これは重要であるように思われる)
※to beは省略可能。
【参考】この文の to be
が不定詞の3用法のどれに当たるかについては,学者の間では
意見が分かれていますが,学習者はその分類にこだわる必要はありません。
構造主義文法では,このように「どんな形で使うか」を分類の基準にします。
参考までに言えば,変形文法では文の最終的な形ではなく,深層構造を問題にします。
文型のところで挙げた次の2つの文の違いはその例です。
(a) He / lived in London. (b) He died / in London.
この2つの文は構造主義的な分析では同じグループに入りますが,変形文法的な分析では
荒っぽく言えば(a)と(b)の文構造上の区切りの位置を上のように考えます。
話が脱線しましたが,学習者目線でまとめるなら次のようになります。
●「自動詞+to do」は一種の熟語として覚えるのが効率的です。
●日常的によく使う主な動詞には,次のようなものがあります。
・bother
to do = わざわざ〜する
・Don't bother to call
me. ((わざわざ)電話していただかなくて結構です)
・come
[get] to do = 〜するようになる
・I've come to like
this game. (このゲームが好きになりました)
※この意味で become to do とは言いません。
・happen
to do = たまたま〜する
・Do you happen to know
him?. (ひょっとして彼をご存知ないですか)
・hesitate
to do = 〜するのをためらう
・Don't hesitate to call
me, please. (ご遠慮なくお電話ください)
※Feel free to call me, please.
とも言います。
・tend
to do = 〜する傾向がある
・He tends to be
too pessimistic. (彼は悲観的になりすぎる傾向がある)
なお,(4)のseem型の動詞については別項で取り上げます。
◆ 他動詞+to do
SVOの形で使う他動詞は「SはOをVする」という意味なので,「他動詞+to
do」は
「〜することをVする」と訳すことができます(上の「自動詞+to
do」はそうではない
点に注意)。ホーンビーさんは今日では助動詞と考える
have to/ought to もこの
グループに入れていますが,それを除けばこの型の他動詞はすべて「〜することを
Vする」の意味です。
・I prefer (not) to start early.
(私は早く出発する[しない]方を選びたい)
※このタイプの動詞は,toの前にnotを置いて「〜しないことをVする」の意味を
表すことができます。「自動詞+to do」タイプのtoの前にはnotは置けません。
ところで,このタイプの動詞はさらに細かく言えば次の3つに分けることができます。
(1)to doの代わりに〜ing(動名詞)も置けて,意味がほとんど変わらないもの
・I like to play [playing]
baseball. (私は野球をするのが好きだ)
*この文ではどちらを使っても同じ意味。would
likeの後ろにはto doのみ可。
likeの反意語のdislike(〜を嫌う)の後ろには〜ingのみ可。
このタイプの主な動詞は,like/prefer(〜を好む),begin/start(〜を始める),
continue(〜を続ける)などです。
(2)to doの代わりに〜ing(動名詞)も置けるが,意味が変わるもの
→ remember/forgetなど。別項で説明します。
(3)to doは使えるが〜ing(動名詞)は使えないもの
・I want to go [×going] out with her.
(彼女とデートしたい)
※このタイプの主な動詞は,agree(同意する),decide(決心する),expect
(予想する),hope(望む),intend(意図する),manage(どうにか〜する),
offer(申し出る),plan(計画する),promise(約束する),refuse(拒む),
want(欲する)など。不定詞は未来志向の表現なので(→057
不定詞の本質),
「これから〜することを…する」という意味を表す場合,つまり動詞の後ろに
〈未完了の行為〉を置く場合は,その行為を不定詞で表すのが原則です。
(3)とは逆に,「〜ingは使えるがto
doは使えない動詞」もあります。
そちらは動名詞の項で説明します。
上に挙げたどの場合でも,「動詞+to
do」をセットで覚えておくことが大切です。
たとえばmanageとかaffordという動詞で出会ったら,〈+to
do〉の形が即座に
頭に浮かぶようにしましょう。
・I managed to get
the ticket. (どうにかチケットを手に入れることができた)
・I can't
afford to buy a new car. (新車を買うほどの金銭的な余裕はない)