2014/5/11 up

大人の英文法083−形容詞の働き 

 

準動詞に関してはここまでに不定詞・動名詞を説明したので,ここからは分詞の説明になります。

その前に,形容詞の働きを再確認しておきます。

一般に形容詞には,次の2つの働きがあるとされています。

 

(A) 限定用法 = 名詞を修飾する

(B) 叙述用法 = C(補語)の働きをする

 

たとえば big(大きい)という形容詞には,次の2つの使い方があります。

(A) That's a big car. (あれは大きな車だ) ※限定用法(big. は car を修飾する)

(B) That car is big. (あの車は大きい) ※叙述用法(big はSVCのCとして働く)

 

big は1語の形容詞ですが,複数の語がまとまって形容詞の働きをすることがあります。

上の(A)(限定用法)を拡張したルールとして,一般に次のように説明されます。

 

@1語の形容詞が名詞を修飾するときは,名詞のに置く。

A2語以上の形容詞句・節が名詞を修飾するときは,名詞の後ろに置く。

 

上のルールには例外もありますが,ひとまずこれを前提として次のような例を見てみましょう。

どの例でも,下線部がひとまとまりの形容詞として,前の名詞(黄色)を修飾しています。

(a) Our school has a swimming pool 25 meters long.

   (私たちの学校には25mの長さのプールがある) ※下線部は形容詞句。

(b) He bought a car made in Germany.

   (彼はドイツ製の[ドイツで作られた]車を買った) ※下線部は形容詞句。

(c) I have a friend who can speak Chinese.

   (私には中国語を話せる友人がいる) ※下線部は(SVの形を含むので)形容詞節。

これらの例からわかるとおり,形容詞の働きをする(語句を作る)代表的な品詞には,純粋な

形容詞のほかに,分詞(例=(b)のmade)と関係詞(例=(c)のwho)とがあります。


 

以上が高校で学ぶ標準的な内容ですが,形容詞,あるいは修飾語をどう理解するかについては

別のアプローチがあります。「1億人の英文法」(大西泰斗/ポール・マクベイ)〈東進ブックス〉

お持ちの方は,p.23以下を再読してみてください。ここには,次のような説明が出てきます。

(一部アレンジしています)

 

(a) That is a red sweater. (あれは赤いセーターです)

(b) That sweater is red. (あのセーターは赤い)

(a)では修飾のターゲット(修飾される語句)を前から,(b)では後ろから修飾している。

前に置く修飾語は限定の働き。(a)は「青でも白でもない赤いセーター」。ある種類のセーターに

意味を限定しています。一方,後ろに置いた修飾語は説明の働き。(b)は「あのセーターは赤い

よね」と,単に that sweater を説明しています。

 

同書では,副詞などの修飾語についても「前から限定(限定ルール)」「後ろから説明(説明ルール)」

という汎用的なルールを適用しています。私は東進ブックスの依頼でこの本の校閲を行いましたが,

多くの高校生はこの説明を読んで混乱するだろうな,と思いました。なぜなら,一般に高校の文法では

上の That sweater is red. のような叙述用法の形容詞を「修飾語」とは呼んでいないからです。

ただし,大西先生のこの説明は,オーセンティックな[正統派の]文法理論に沿ったものです。

学校文法は,説明を単純化するために標準的な文法理論をアレンジしている面が多々あります。

たとえば「時制(tense)」と「相(aspect)」を区別しないことなどもその例です。(→000 時制と相

 

そこで,最初に挙げた例をもう一度見てみましょう。

(A) That's a big car. (あれは大きな車だ) ※限定用法(big. は car を修飾する)

(B) That car is big. (あの車は大きい) ※叙述用法(big はSVCのCとして働く)

この2つの文の big は,正統派の文法理論ではどちらも「修飾語」だと考えます。

そして,少なくとも形容詞(相当語句)には,次の一般的ルールがあるとされます。

 

B名詞のに置かれた形容詞は,その名詞の恒常的な特徴を表す。

C名詞の後ろに置かれた形容詞は,その名詞の一時的な状態を表す。

 

上の例文(A)はBの,(B)はCのルールで説明されます。

a big car(大きい車)のbig は,car が持つ本来的な性質[恒常的な特徴]を表します。

一方(B)の文では,big がその車の一時的な状態を表す修飾語として意識されています。

「それはおかしいだろう。車のサイズが変化するわけじゃないんだから」と思うかもしれませんが,

あくまで一般的にそういう意識が働いているという話です。もう少しわかりやすい例を出してみましょう。

(C) This is an interesting novel. (これは面白い小説だ)

(D) This novel is interesting. (この小説は面白い)

(C)は「この小説は面白いという性質を持っている」というニュアンス。つまり「いつ読んでも面白い」

ということです。(D)は「この小説は面白い(と私は今思っている)」というニュアンス。したがって,

たとえば次のように言うことも可能です。

・This novel was interesting at first, but I'm gradually getting bored.

(この小説は最初は面白かったが,だんだん飽きてきた)

この文の前半を,This was an interesting novel at first と表現することはできません。

 

なお,たとえば people present(居合わせた人々)all the parties concerned(関係者一同)

ように,1語の形容詞や分詞が(冒頭に示した@のルールに反して)名詞の後ろに置かれる

ことがあります。これも,Cのルールで説明できます。たとえば people present の present

(出席した,居合わせた)はpeopleの恒常的性質を表すのではなく,「一時的にその場にいた」

という意味を表すから名詞(people)の後ろに置くのだ,というわけです。


 

上の話が分詞とどうつながるのかは後述しますが,形容詞に関するもう1つの重要なルールを

述べておきます。

 

D形容詞には,限定用法補足説明用法とがある。

  (前者は省略できない。後者は省略できる)

※ここで言う「限定用法」は,冒頭で挙げた形容詞の2用法(限定用法・叙述用法)の

「限定用法」とは意味が違うので注意してください。これらは私のオリジナルの用語で,

一般にはそれぞれ「制限用法」「非制限用法」と言います。

 

話が混乱するかもしれませんが,関係詞の2用法についてここで簡単に触れておきます。

(a) I have an uncle who lives in Osaka. (私には大阪に住むおじが1人いる)

(b) I have an uncle, who lives in Osaka. (私にはおじが1人いて,その人は大阪に住んでいる)

who(関係代名詞)の(a)のような使い方を限定[制限]用法,(b)のような使い方を継続[非制限]

用法と言います。ここでは,(a)を限定用法,(b)を補足説明用法と呼んでおきます。

【参考】大西先生は「前から限定」「後ろから説明」というルールを立てておられますが,それとは少し違います。

大西先生流だと上の(a)(b)はどちらも「下線部が先行詞を後ろから説明している」ということになりますが,

私流だと「説明」しているのは(b)だけです。

(a)の下線部はuncleを限定しており,「京都でも名古屋でもない大阪に住むおじ」という意味を

表します。一方(b)の下線部は,uncleに補足説明を加える働きです。

言い換えれば,(a)の下線部は省略できませんが,(b)の下線部は省略可能です。

 

形容詞の場合で見てみましょう。

(c) I live in a small town.(私は小さな町に住んでいます) 〈限定用法〉

(d) This small town is my birthplace.(この小さな町が私の故郷です) 〈補足説明用法〉

(c)の small は town の意味を限定しており,この文の中で重要な情報を担っています。

したがって(c)の small を省略すると文の意味が大きく変わってしまいます。

一方(d)の small はthis town に対する補足説明であり,省略しても意味に大差は生じません。

((d)のsmallは,「この大きな町」と「この小さな町」とを区別するような働きはしていません)

この2つを区別することが,分詞(および関係詞)を理解する上で重要なポイントになります。

 

以上,修飾語(形容詞)に関する @〜Dの5つのルールを,まず頭に入れておいてください。

 

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