2015/1/12 up

大人の英文法092−現在分詞を使った分詞構文(3) 

 

090 では,次のように説明しました。

@ 会話では,完成した文の後ろに-ingで始まる形を置いて「〜しながら」の意味を表すことができる。

A リーディングで「コンマ+-ing」が出てきたら,次の2つのうちどちらかの意味に解釈すればよい。

(A) 「そして〜」 / (B) 前の名詞に対する補足説明(継続用法の関係詞節と同じ意味)

さらに091で,書き言葉では文頭に現在分詞を置く次のような形もあると説明しました。

(b)は「1億人の英文法」(p.451)からの抜粋です。

(a) Getting lost in town, I looked for a police box.

(町中で道に迷ったので,私は交番を探した)

(b) Pushing open the door, I was shocked to see a body lying on the floor. 

(玄関のドアを開けたそのとき,床に転がっている死体を見てショックを受けた)

どちらの例も本質的な意味は「同時性」ですが,学校文法に即して言えば(a)は「理由」,(b)は「時」を表すと

考えることもできます。

さらに,文法参考書(および大学入試)には次のような分詞構文も時に出てきます。

(c)は〈条件〉,(d)は〈譲歩〉を表すとされています。

?(c)Turning left at that corner, you’ll find a bank.

(あの角を左へ曲がると,銀行があります)

?(d)Admitting what you say, I still doubt her sincerity.

(君の言うことは認めるけれど,私はそれでも彼女の誠実さを疑う)

しかし私の経験では,(c)を自然な英語と認めるネイティブはほとんどいません。ネイティブはたいてい,

「Turn left at that corner, and you’ll find a bank. と普通に言えばいいじゃないか」と言います。

(d)については,「詳説レクシスプラネットボード」(旺文社)に,ネイティブ103人に「この文を使うか」と

いうアンケート調査を行った結果が載っており,使用率は米18%,英44%となっています。つまり,

少なくともアメリカでは(d)のような文を使う人の比率は(この調査結果を信じるなら)2割以下です。


では,(c)や(d)はなぜあまり使わないのでしょうか。理由は簡単です。分詞構文の本質は「同時性」

ですから,〈条件〉や〈譲歩〉の意味を表したいのなら接続詞のifやthoughを使う方が意味が明確に

なるからです。(a)のGetting lost in townも,「道に迷ったので」ではなく「道に迷ったとき」と解釈する

こともできます。話し手が「理由」の意味を明確に表したければ,たとえばI got lost in town, so I 

looked for a police box. と言うでしょう。逆に言えば,(a)で分詞構文を使っているのはコンマの前後の

意味的なつながりをあまり明確にしたくないという心理が働いた結果であり,「町中で道に迷った私は,

交番を探した」と訳すこともできます。

 

以上のように,「分詞構文がどの接続詞の意味を表すか」のように考える必要はなく,そういう発想は

分詞構文の本質的な意味を誤解する結果につながります。念のためもう1つ例を挙げておきます。

(e) Living in the country, we have very few amusements.

(田舎に住んでいるので,私たちにはほとんど娯楽がない)

この文の本質的な意味は,「田舎に住んでいる」という状態と「娯楽が少ない」という状態とが同時に

存在しているということです。多くの文法書では「分詞構文は接続詞の働きを持つ」と説明していますが,

そのことと「分詞構文は(特定の)接続詞を使って言い換えられる」ということは決してイコールではありません。

私なら上の文は,「田舎に住んでいる私たちには,ほとんど娯楽がない」と訳します。その根拠として,

主語を the people に置き換えれば次のような文も自然な英語として成り立つことを挙げておきます。

(e') The people, living in the country, have very few amusements.

(田舎に住むその人々には,ほとんど娯楽がない)

この文の living は,who live で置き換えることができます。つまり(e')のlivingは補足説明用法の形容詞

(→083)に準じたものであり,(e)のLivingもそれと同じ働きをしている(weに対して補足説明を加えている)

と考えることができるわけです。

【参考】 (e')で We, living in the country, have very few amusements. という文は文法的には可能ですが,自然ではありません。

 

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