2015/2/1 up

大人の英文法095−その他の分詞構文 

 

082 動名詞のその他の用法と関連付けて説明します。

不定詞・動名詞・分詞はまとめて準動詞と言い,共通の性質を持っています。

主なものは次の3つです。

 

@ not を前に置くことができる。

・ I decided not to buy the car. (私はその車を買わないことに決めた) 《不定詞》

・ I'm sorry for not answering your e-mail. (メールに返事しなくてごめん)  《動名詞》

(A) Not knowing her phone number, I couldn't contact her.

 (彼女の電話番号を知らなかったので,私は彼女に連絡できなかった)  《分詞構文》

 

A 受動態と組み合わせて使える。

・ I don't want to be criticized. (私は批判されたくない) 《不定詞》

・ I don't like being criticized. (私は批判されるのを好まない)  《動名詞》

(B) All the work being done, the employees left the office. 

 (仕事が全部終わり,社員たちは職場を出た) 《(独立)分詞構文》

*受動態の分詞はほとんど独立分詞構文でしか出てこないため,実用的価値は低いと言えます。

 

B 述語動詞が表す時点から見た過去(または現在完了)は完了形で表す。

・ He seems to have changed his mind. (彼は決心を変えたらしい) 《不定詞》

*彼が決心を変えたのは,seems(〜のように思われる)の時点から見ると

   過去(または現在完了)のこと。

・ He admitted having stolen the money. (彼はその金を盗んだことを認めた)   《動名詞》

*彼が決心を変えたのは,「認めた」時点から見るとさらに過去のこと。

(C) Having seen the woman before, I recognized her easily. 

 (以前その女性を見たことがあったので,私は彼女だとすぐわかった) 《分詞構文》

*その女性を見たのは,recognized(それとわかった)の時点から見ると

   過去のこと。


 

◆@のような分詞構文の実用的価値

@の〈not+分詞〉の形の分詞構文が大学入試でどのような形で問われるかを考えてみます。

次の問いはセンター試験からの抜粋です。(2002年度・追試)

Not (     ) which course to take, I decided to ask for advice. 

@ being known A to know B known C knowing (正解)

意味は「どのコースを選択すればよいかわからなかったので,私は助言を求めることに決めた」。

この例も含め,入試で問われる〈not+分詞〉の形の9割以上は次の形です。

not knowing 〜 = 〜を知らないので

したがって大学受験対策としては,この形を熟語として覚えておけば十分です。

(分詞構文の原義に立ち返れば「〜を知らない状態で」〈付帯状況〉と理解することができます)

では,実際に上のような文はどの程度使われるのでしょうか。この点については,英英辞典の

記述が参考になります。一般に英英辞典は日本で作られた英和辞典よりもコーパスに忠実であり,

「日常的によく使う形は見出しとして載せる,そうでない形は載せない」という姿勢が徹底しています。

たとえばLDOCEをベースにした「ロングマン英和辞典」には,not knowing という見出しはありません。

その代わりに,knowingを使った次のような例文が載っています。

(a) She took the money knowing she could never pay it back.

    (彼女は絶対返せないとわかっていながらその金を受け取った)

*knowingは「〜を知っている状態で」ということ。

(b) Knowing Susan, she'll probably be late.

    (スーザンのことだからたぶん遅れるよ)

*〈knowing+人〉で「〜のことだから(きっと)」の意味。「スーザンを知っている状態で

  (考えると)」と理解すればいいでしょう。

なお,(a)(b)ではそれぞれ下線部により大きな情報的価値があります。knowing 〜を主節の前に置くか

後ろに置くかは,それによって決まるわけです。

結局,not knowing 〜 の形は日常的に使わないわけではないけれど,使う必要もないと言えます。

上のセンター試験の文は,より口語的に表現するなら次のようになります。

・I didn't know which course to take, so I decided to ask for advice.

一方,(a)(b)のknowingは,このように別の文で言い換えにくいものです。したがって学習者にとっては,

not knowingよりも(a)(b)のような形を覚えておく方が重要だと言えます。


 

◆Bのような分詞構文の実用的価値

2013年11月刊行の「ネイティブが使う英語・避ける英語」(佐久間治著・研究社)は,英語の指導者や

学習者にとって貴重な情報を提供してくれる良書だと思います。この本では,Googleなどの検索

エンジンを使って,学校英語でよく見られる文法知識や表現の実際の使用頻度を分析しています。

その中に,次の記述があります。(訳文は私がつけたものです)

「…以下のような自動詞の完了分詞形は不適切と見なされる。

・Having fallen from the roof, the cat was not hurt. (屋根から落ちたが,そのネコはけがをしなかった)

・Having run for the train, he was out of breath. (電車に乗るために走って,彼は息切れした)

前者はEven thoughを使って,後者はAfterを使って,ふつうに表現すればいいじゃないか,と

彼ら[native speaker]は必ず言う。」

したがって次のような問い(大学入試問題から引用)は,実際の使用頻度を無視した悪問と言えます。

(      ) late without an appointment, I had to wait to see the doctor.

@ Arrived  A Arriving  B Had arrived  C Having arrived(正解)

文意は「アポなしで遅れて着いたので,私は医者にみてもらうために待たねばならなかった」。

このような日常的な内容を表現するのに,having arrived のような堅苦しい形を使う必要はありません。

I arrived late without an appointment, and (so) I had to wait to see the doctor. と言えば十分です。

何度も指摘していることですが,この種の入試問題の欠点は,「読んで理解できればいい文」を

自分で作るよう求めている点です。

 

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