ここまでで,英語ということばの大きな特徴の1つである「後置修飾」の学習が完了しました。
後置修飾とは,「名詞+形容詞に相当する語句」の形のことです。
基本的なところから,もう一度おさらいしておきます。
(a)
「鋭いナイフ」=a sharp knife
上の例では,日本語でも英語でも「鋭い」(形容詞)が「ナイフ」(名詞)を修飾しています。
sharp は
knife
の前に置かれているので,これは後置修飾ではありません(前置修飾とはあまり言いませんが)。
(b)
「パンを切るためのナイフ」=a knife to cut bread
上の例では,下線部が名詞を修飾する(形容詞の)働きをしています。
日本語では「パンを切るための+ナイフ」という語順になっていますが,英語の語順は逆ですね。
これが後置修飾です。083
で説明した形容詞の基本的な使い方を,もう一度見ておきます。
@
1語の形容詞(や分詞形容詞)は名詞の前に置く。
A
2語以上の形容詞句・形容詞節は名詞の後ろに置く。
このAのような形を,後置修飾と言います。上の例(b)の
to cut bread は,品詞の分類で言えば
「(形容詞的用法の)不定詞」であり,文の要素という観点から言えば「形容詞句」です。
後置修飾の基本形には,次の6種類があります。
(1)
名詞+形容詞句 : a bridge 200
meters long (200メートルの長さの橋)
(2)
名詞+前置詞句 : the name of
the company (その会社の名前)
(3)
名詞+不定詞 : a chance to speak
English (英語を話す機会)
(4)
名詞+現在分詞 : a girl singing
karaoke (カラオケを歌っている女の子)
(5)
名詞+過去分詞 : a car made in
Italy (イタリアで作られた車)
(6)
名詞+関係詞節 : a sport I like
(私が好きなスポーツ)
これらのうち,(1)〜(5)の下線部はすべて「句」です(SVの形を含まないから)。
つまり(1)〜(5)の下線部は,文の要素としてとらえればすべて「形容詞句」です。
一方,(6)の下線部は
S(I)+V(like) の形を含むので,これは「形容詞節」です。
このように関係詞は,「後置修飾の機能を持つ形容詞節を作る」という働きを持ちます。
逆に言えば,この働きができるのは関係詞だけです。
上の6つの表現パターンを使いこなせるようになることが,長い英文を作るためには大切です。
なお,(1)は
a bridge (that is) 200 meters long と考えてもかまいません。(4)(5)も同様です。
参考までに情報を追加しておきます。083
で,次のルールを説明しました,
B名詞の前に置かれた形容詞は,その名詞の恒常的な特徴を表す。
C名詞の後ろに置かれた形容詞は,その名詞の一時的な状態を表す。
このルールは1語の形容詞にだけ当てはまります。後置修飾の形容詞句・節は,名詞の後ろに
あっても「恒常的な特徴」を表すこともあります(例:a
man who speaks English)。言い換えれば,
BCの(意味の)ルールよりも,@Aの(形の)ルールの方が強いということです。
なお,1語の形容詞が後置修飾の形を作る例を1つ追加しておきます。
2013年公開の劇場アニメ映画「サカサマのパテマ」(ユーチューブで見ることができます)は,
主人公の少女パテマが上下がさかさまの世界に登って(落ちて?)いくお話ですが,英訳
バージョンのタイトルは Patema Inverse
(あるいは Patema Inverted)となっています。
inverse は「さかさまの」(形容詞),invert
は「さかさまにする」(動詞)という意味です。
このタイトルを Inverse Patema
と表現するのは非常に不自然です。これだと「さかさまである」
ことが主人公パテマの恒常的特徴と解釈されますが,映画の中では彼女は(一時的に)
さかさまの状態になっているだけだからです。「名詞+1語の形容詞」の形は,このような
感覚を理解することが大切です。