この本の制作経緯

 

この本の基本的なコンセプトは,

 

「世の中のあらゆるジャンルの日常英単語を網羅して示す」

 

というものです。

私の知る限り,こういうコンセプトの単語集は一つも市販されていません。

 

ジャンル別の単語集自体は,山ほどあります。

しかしそれらはすべて,特定の分野しか取り上げていません。

「すべての分野を網羅した単語集を作ろう」と考えた人は,過去に大勢いたはずです。

しかしそうした本がなぜ1冊もないのかと言えば,考えられる理由はただ1つです。

 

原稿作成に膨大な労力がかかる。

 

これに尽きます。

チャレンジしてみたが挫折した,という人も,過去には多数いたことでしょう。

それに,私は挑もうと考えました。

 

※ この本を書くヒントとなった本はあります。國弘正雄氏の「英語ハンドブック」です。

   大学生の頃,私はこの本で単語を覚えました。基本的なコンセプトは同じですが,

   この本もまた語数とジャンルの網羅性の面で十分とは思えませんでした。

   私が今回書こうとしたのは,この本の「発展形」のようなものです。


 

 

構想を立て,作業を開始して数年目。

とうてい1冊の本には収まりきらないことがわかりました。

そこで何冊かに分けて,最初の1冊目だけでも先行して出版しようと思いました。

もっとも,当初は市販本を作るつもりではありませんでした。

私の本業は,予備校の契約社員(英語教材制作スタッフ)です。

その予備校では既に市販の大学受験向け単語集を出版しています。

私は,私の作っている単語データベースを企画書にまとめて本社へ提出しました。

 

「これからは,大学受験向けに限定した英単語集の顧客は減っていく」

「社会人,趣味で英会話を学ぶ人など,幅広いニーズに対応すべきだ」

「そのために,この単語データベースは役立つはずだ」

 

私は,私の単語データベースを大学受験生,一般社会人など幅広く英語学習者を

対象とする教育ソフト制作に応用したいという構想を持っていました。

企画は毎年提出し続けましたが,ついに会社からは返事が来ませんでした。

 

そうなると,せっかく作ったデータベースを無駄にするわけにはいきません。

そこで,出版社に企画を持ち込みました。

私のほとんどの本を出してもらっている懇意の編集者さんに,企画を話しました。

返事は,私の予想に反して,芳しくないものでした。

正直私は,驚きました。

確かに出版業界を取り巻く状況は厳しく,新刊本も減少しています。

しかし私は,この本にだけは大きな自信がありました。

最終巻まで完成するのにどれだけの年月を要するかは見当がつかないけれど,

全巻揃った暁には,必ずや多くの英語学習者がこの本を評価してくれるはずだ ―――

 

ところが,世の中は甘くありませんでした。

この出版社がダメなら,他を当たるしかない。

しかし私には,ここ以外にコネがありません。

 

幸い私には,絶大の信頼を置く味方がいます。

それが,小池直己さんです。

2001年1月の年賀状に,書きました。

「現在,市販の単語集の原稿を書いています。

どこかの出版社から出したいのですが,何とかならないでしょうか?」

 

小池さんから,すぐに返事が来ました。

たまたま小池さんはその直前にI書店から本を出したので,

自分の担当の編集者に紹介してあげよう,と言われるのです。

その編集者が,驚いたことに私の大学時代のクラスメイトのKさん(女性)でした。

日本でも指折りの老舗出版社であるI書店から出版できるなら,言うことなしです。

さっそく翌月,小池さんとKさんと3人で東京で会いました。

Kさんは企画に乗り気で,社内に根回ししてみるという返事をくれました。

 

ところがその後の人事異動で,Kさんは別の部署に異動になりました。

その後1年近く,こちらからは連絡することができませんでした。

理由は,原稿作成がはかどっていなかったからです。

Kさんと初めて会ったとき「1冊目の原稿は90%完成しています」と言いました。

ところが,残りの10%が大変だったのです。

完璧を目指そうとして次々に新しい辞書などに当たり,作業量が予想より増えました。

執筆作業は本業の合間に行うわけですから,なかなかはかどりません。

しかも,I書店の内部でも企画が検討されている形跡がなく,

このままではたとえ原稿が完成しても宙ぶらりんになる可能性が高くなってきました。

 

そこで,再び小池さんです。

小池さんは本当に面倒見のよい方で,いろんな出版社を当たっていただきました。

大手のK社,新書を多く出しているP社,最近急激に業績を上げているD社・・・

しかし,どこからも色よい返事がもらえません。

小池さんはこの業界では知らぬ者がないほどたくさんの本を出しておられる方で,

その小池さんの口添えをもってしても企画が通らないことは,私にはショックでした。

残された道は自費出版しかないか,というところまで思いつめた末,

一つのアイデアが浮かびました。

 

企画書を送るのではなく,実際の本の形の見本を作って提出したらどうだろうか?

幸い,原稿はほぼ完全に完成しています。

EXCELのデータをWORDに貼り付け,A4版で見開き2ページになるよう編集します。

それをコピー機で両面印刷して綴じ,実際の本と同じものを作るわけです。

原稿の分量は300ページ強。いくつかの出版社に持ち込むつもりだったので,

見本は数セット作る必要があります。コピー枚数は2,000枚以上。

仕事のコピー機は10年前に買ったもので,とてもそんな作業には耐えられません。

福山の事務機器会社に電話して,そちらのコピー機を使わせてもらうことに。

事務所へ行ってコピー機を借り,2時間ほどかけて印刷完了。

サンプルを7セット作り,そのうち2つを小池さんに送りました。

とりあえず1つの出版社に持ち込んでもらって,ダメなら追加を送るということで。

 

そして,最初に持ち込んでもらったのが宝島社です。

実はここにも企画案だけは既に持ち込んでいたのですが,OKはもらえませんでした。

本の現物に近いサンプルを見てようやく,前向きな姿勢になってもらえた,

というところです。

2002年9月,編集の方々と小池さんを交えて初めての打ち合わせをしました。

この段階ではこちらの企画を示しただけで,社内の決裁は降りていません。

担当の方には前向きな返事をもらいましたが,それから待つ時間の長かったこと。

 

ようやく社内で稟議が通ったと小池さんから連絡があったのが,2003年2月。

その後紆余曲折を経て,3月24日,宝島社の佐藤さんから連絡がありました。

ページ数が予定より大幅に増えたので,原稿の一部をカットしたい,とのこと。

物理的な事情なのでやむを得ません。

 

そしてようやく,4月18日に見本が送られて来ました。

原稿は単なる文字の羅列でしかないけれど,出来上がった本は

イラストも豊富な上に二色刷りで,音声CDまでついています。

出版のプロの方々に,いろんな工夫をしていただいたことがよくわかります。

 

ただ,この本が売れるか?と言われると,書いた本人も確信が持てません。

この種の本は,はっきり言って「どこにでもある」からです。

収録されたジャンルがほぼ衣食住に限定されており,とうてい「網羅的」とは言えない

からです。

 

中身には自信を持ってはいますが,「この本を単体で評価してほしくはない」

という矛盾した気持ちも持っています。

 

ともあれ,このHPをごらんの方の中で,英語の勉強でもしてみるか,と思っておられる方が

もしおられましたら,お近くの本屋さんで立ち読みでもしてみてください。

 

 

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