英文法の学習は範囲が広いので,「今自分は何を学んでいるのか」「この知識は
どんな役に立つのか」という点を常に意識しておくことが大切です。ここまでの話を
ざっとおさらいしておきます。015
英文法の全体像 も参照してください。
この記事ではこれまで,大きな文法項目の1つである「時制」をひととおり学習しました。
このあと「受動態」「仮定法」と続きます。
「時制」「態」「法」の3つは,いわば兄弟のような関係にあります。
これらはすべて「V(述語動詞)を変化させた形」です。
時を表すVの形が「時制」,する・されるの関係を表すVの形が「態」,
話し手の気分を表すVの形が「法」です。
・ Jack loves Betty.
(ジャックはベティを愛している)
この文の loves は,時制で言えば「現在時制(現在形)」,態で言えば「能動態」,
法で言えば「直説法」です。
したがって「時制」「態」「法」という分野では,「Vの形をどう変化させるか」の学習が
中心になります。
態は次のように定義できます。
能動態 =
主語から見て「〜する」という意味を表すVの形
受動態 =
主語から見て「〜される」という意味を表すVの形
文構造の面から言えば,受動態とは「能動態のOをSにして言い換えた形」です。
・ Jack loves Betty.
(ジャックはベティを愛している)
S V
O
→ Betty
is loved by Jack.
(ベティはジャックに愛されている)
S
※ by
は「〜によって」の意味。その後ろに置く要素を「動作主」と言います。
【参考】 Betty is loved by Jack.
は第何文型か?とは普通考えません。しいて言えば,
S(Betty)+V(is loved)+修飾語(by Jack)で第1文型です。
したがって,「Oがない文」を受動態を使って言い換えることはできません。
つまり,第1文型(SV)や第2文型(SVC)は受動態で言い換えられないわけです。
・ Puppies bark.
(子犬はほえる)
S V
受動態は〈be動詞+過去分詞〉の形で「〜される」という意味を表します。
この形を使うのは,過去分詞が「〜される」という意味を本来的に持っているからです。
021 分詞とは
の説明を参照してください。
一般に自動詞は受動態にできません。日本語でも,たとえば「走る→走られる」とは
言えませんね。bark(ほえる)も同様です。この文では,barkを「能動態」とは言いません。
対応する受動態がないからです。
なお,「能動態」「受動態」とはVの形の一種であり,表現形式全体を指す言葉ではない
という点にも注意してください。
・Betty is loved by Jack.
(ベティはジャックに愛されている)
この文では,下線部のVの形(is loved)のことを「受動態」と言います。したがって,
「この文は受動態(という表現形式を使った文)だ」という理解は誤りであり,
「この文は受動態というVの形を使ったものだ」と考えるのが正しいのです。
「受動態=Vの受動形」と理解していいでしょう。同じことは仮定法についても言えます。
・If I were rich, I would
propose to her.
(もし私が金持ちなら,彼女にプロポーズするのに)
「仮定法」とは,下線部のVの形のことです。この表現形式全体ではありません。
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