2014/3/16 up

大人の英文法077−原形不定詞  

 

原形不定詞とは,to がなく動詞の原形だけの形の不定詞のこと。

英語では Bare Infinitive と言うので,直訳して「はだか不定詞」と言う人もいます(bare=裸の)。

文中で動詞の原形が出てくるケースを3つ見てみましょう。

(1) Come here. (ここへ来なさい)

(2) He will come here. (彼はここへ来るでしょう)

(3) Did he come here? (彼はここへ来ましたか)

これらのうち,(1)のcomeは「命令法」という動詞の活用形です。(→005 「法」とは

(2)のcomeは,文法的には原形不定詞です。助動詞の後ろに置く動詞の原形は原形不定詞と

されています。したがって(3)のcomeも原形不定詞。(3)のDidは助動詞です。

 

以下はどうでもいいことなので読み飛ばしていただいてかまいませんが,そもそも不定詞とは

何ぞや?という点については次のように説明できます。

たとえば come(来る)の品詞は動詞ですが,文中での使い方には次の2種類があります。

(A)V(述語動詞)として使う場合:主語の人称・数・時制・法によって形が決まります。つまり

主語によって制約[限定」を受けているので,これを finite form(定型)と呼びます。

(B)不定詞・分詞・動名詞として使う場合:たとえば to come のcomeは,主語が何であろうと

comeであり,主語による限定を受けません。これを non-finite form(非定型)と呼びます。

不定詞は英語で infinitive と言いますが,これは in(〜ではない)+finite(有限の,定型の)が

もとになった言葉です。つまり不定詞とは「不定+詞」ではなく「不+定詞」ということであり,

「(主語による)限定を受けないことば[動詞の形」」というのがもとの意味です。

 

原形不定詞の用法は,一般には次の2種類に大別されます。

@ 助動詞の後ろに置く。→ 最初に挙げた(2)(3)の例文

A SVOCの形の文で,Cの位置に使う。

学校文法で原形不定詞と言えば,Aの用法で使うものを指します。

この形で使うVには,次の3つの種類があります。

(A) 知覚動詞(see,watch,hear,feel など)+O+原形不定詞

I saw her enter the shop. (私は彼女がその店に入るのを見た) 

  S    V     O      C

※ see+O+原形不定詞 = Oが〜するのが見える

    watch(じっと見る),hear(聞こえる),feel(感じる)なども使います。

    原形不定詞の代わりに現在分詞も使いますが,その説明は別項で。

(B) 使役動詞(make,let,have)+O+原形不定詞

I'll have her call you later. (後で彼女に電話をかけさせます) 

  S     V        O     C

(C) help+O+原形不定詞

I helped her wash the dishes. (私は彼女が皿を洗うのを手伝った) 

  S    V          O     C

※ 原形不定詞の代わりに toつきの不定詞も使いますが,アメリカ英語では

  toは省略するのが普通です。

 

これらのうち,(B)の使役動詞について補足説明をしておきます。

075 で見たとおり,「Oに働きかけて〜させる」という意味を持つ動詞は,一般には

〈V+O+to do〉の形で使います。

・ I persuaded him to give up the plan. (私は彼を説得してその計画をやめさせた)

【参考】〈persuade+O+to do〉(Oを説得して〜させる)の形は,不定詞で表される動作が実際に行われた

    という意味を含みます。したがって「その計画をやめるよう彼を説得したが,彼は私の言うことを聞かなか

    った」 は,I tried to persuade [×I persuaded] him to give up the plan, but he didn't listen to me. です。

上の文の persuade は「説得して〜させる」なので,〈使役〉「〜させる」の意味合いを

含みます。したがってこれも広い意味では使役動詞です。

そう考えると,一般の使役動詞は〈V+O+to do〉の形で使うのに対して,make・let・

have の3語だけは例外的に原形不定詞を使う,と言うことができます。

 

make は「むりやり〜させる」,let は「〜させておく,〜するのを許す」の意味です。

次の問い(空所補充問題)は,1993年度のセンター試験に出題されたものです。

Although her parents had said "no" for a long time, they finally (       ) her go to 

Europe alone.

 @ allowed    A got     B let     C made

この問いの正解はB。意味は「両親は長い間『ノー』と言っていたが,最後には彼女を

一人でヨーロッパへ行かせた」。let her go で「彼女を行かせる[彼女が行くのを許す]」

の意味になります。Cの made を使うと「強制的に生かせた」という意味になるので

状況に合いません。

 

また〈have+O+原形不定詞〉は,「頼めば当然そうしてくれる人に〜してもらう」と

いう意味を表します。Oには係員や専門職の人を置くのが普通です。

I had a porter carry my baggage. (ポーターに手荷物を運んでもらった)

※ポーター[赤帽]は荷物を運ぶのが仕事なので,この文はOKです。

× I had the boss  read my report. (上司に報告書を読んでもらった)

※have を使うと「上司に(むりやり)読ませた」のような響きになります。

I got the boss to read my report. が適切です(get+O+to do=

(説得して)Oに〜してもらう)。なお,最初に挙げた I'll have her call you

later.(後で彼女に電話を入れさせます)は,her が自分の上司でも使えます

(相手に対する謙譲のニュアンスで)。

 

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