ここで取り上げる関係代名詞は,下のピンク色の分類に入るものです。全体像は
097 を参照してください。
品詞分類 |
その関係詞が作る節 |
該当する関係詞 |
用法の分類 |
関係代名詞の格 |
関係代名詞 |
名詞節 |
what |
|
|
形容詞節 |
who/whose/whom/which/that |
限定用法/補足説明用法 |
主格/所有格/目的格 |
副詞節 |
what |
|
|
関係形容詞 |
名詞節 |
what(/which) |
|
|
副詞節 |
which |
|
|
関係副詞 |
名詞節 |
when/where/why/how |
|
|
形容詞節 |
when/where/why |
限定用法/補足説明用法 |
|
副詞節 |
when/where |
|
|
※上の表では複合関係詞(whoeverなど)は省略しています。
ここで言う「補足説明用法」は,学校文法では「継続用法」または「非制限用法」と呼ばれているものです。
まず例を見ておきます。
(a)
I hate people who tell lies.
(私はうそをつく人が大きらいだ) 〈限定用法〉
(b)
I hate John, who tell lies.
(私はうそをつくジョンが大きらいだ)
〈補足説明用法〉
(a)の下線部は先行詞(people)の意味を限定しており,who以下を省略すると「私は人間が嫌いだ」という
全く違う意味になってしまいます。一方,(b)は
I hate John. だけで意味が完結しており,下線部は(なぜ
自分はジョンがきらいなのかという)補足説明ですね。
既に述べたことの確認になりますが,形容詞(に相当する語句)にはすべて上の2つの用法があります。
まず,083
形容詞の働き で,次の例を出しました。
(c) I live in a small
town.(私は小さな町に住んでいます)
〈限定用法〉
(d) This small town is
my birthplace.(この小さな町が私の故郷です) 〈補足説明用法〉
(c)の small は town
の意味を限定しており,この文の中で重要な情報を担っています。
一方(d)の small はthis town
に対する補足説明であり,省略しても意味に大差は生じません。
さらに 085
名詞を修飾する分詞 では,次の例を出しました。
(e1) All the
novels written by Keigo Higashino are interesting. 〈限定用法〉
=(e2) All the novels which were written by Keigo Higashino
are interesting. 〈限定用法〉
(東野圭吾によって書かれた小説は全部おもしろい)
(f1) The
novel, written by Keigo Higashino, isn't very interesting.
〈補足説明用法〉
=(f2) The novel, which was written by Keigo Higashino, isn't
very interesting. 〈補足説明用法〉
(東野圭吾によって書かれたその小説は,あまりおもしろくない)
(e1)では下線部を省略すると「すべての小説はおもしろい」という全然違う意味になります。
(B3)では下線部を省略した「その小説はおもしろくない」という文は,元の文の意味をそこねません。
この「大人の英文法」では,学校文法では使わない「補足説明用法」という言葉をあえて使っています。
その理由は,上に挙げた(b)(d)(f1)(f2)のような形容詞(に相当する語句)の使い方が,この言葉1つで
まとめて説明できるからです。
which,who(m),whose
は,補足説明用法の関係代名詞として使えます。
この用法では,前にコンマを入れるのが普通です。いくつか例を追加しておきます。
(g1) I have an uncle
who lives in Hokkaido.
(私には北海道に住むおじが(1人)いる)
(g2) I have an
uncle, who lives in Hokkaido.
(私には北海道に住むおじが(1人)いる)
*(g2)はコンマがあるので,下線部は補足説明用法です。前半だけで意味が確定しており,
「私にはおじが1人いて,その人は北海道に住んでいる」ということです(話し手のおじは
1人しかいません)。一方(g1)の下線部は限定用法であり,次の2つの可能性があります。
@
話し手には2人以上のおじがいる。
A
話し手のおじは1人だけである。
この点を誤解している人が多いので注意してください。(g1)はAの意味にも解釈できます。
これに関して,098
限定用法の関係代名詞
で挙げたクイズを再掲し,正解を示します。
注:読者の方の質問を受けて,以下の記述は2021年11月に修正しました。
次の2つの英文に関するア〜エの説明が正しければ○,正しくなければ×をつけてください。
(a)
This is a photo I took there.
(b)
This is the photo I took there.
ア
(a)の話し手はその写真を初めて話題に出している。
イ
(a)の話し手がそこで撮った写真は2枚以上である。
ウ
(b)の話し手はその写真を既に話題にしている。
エ
(b)の話し手がそこで撮った写真は1枚である。
<正解>
ア ○ イ × ウ 〇 エ ○
<解説>
たとえばI went to X Museum yesterday. This is a photo I took there.
と言う場合,
第2文全体が新情報を提示しています(だからアは○)。この文のI took thereは,
This is an interesting book. の下線部と同じ働きと考えてよいでしょう。これらのa/anは
新情報を示す一種の記号であり,「複数の中の1つ」という前提はありません(だからイは×)。
一方(b)のthe
photoは「その1枚の写真」の意味です(だからエは〇)。一方,このtheは
旧情報のマーカーであり,その写真のことが既に話題に出ていることを意味します(だからウは〇)。
(例) I went to X Museum
yesterday and took a photo. This is the photo I took there.
逆に言えばこのtheは前方照応の用法であり,後方照応ではありません(つまり「後ろに
修飾語があるからtheがついている」わけではありません)。
上の解説をふまえて,(g1)をもう一度見てみましょう。
(g1) I have an
uncle who lives in Hokkaido.
(私には北海道に住むおじが(1人)いる)
この文では,下線部はたとえば
I have a kind uncle.
の下線部と同じ働きをしていると考えることが
できます。話し手は「私には親切なおじさんがいるんですよ」という情報の全体を新たに提示して
いるわけです。話し手はこの文を「複数のおじのうちで親切な一人」という意味で使っているわけでは
ありません。話し手のおじが1人でもこの文は使えます。
ところで,ここで1つの疑問が起きます。I
have a kind uncle.
がそういう(全体が新情報を提示する)
意味であるなら,この
kind
は「補足説明用法の形容詞」ではないのか?という疑問です。
つまり話し手の伝えたい情報の中心は
I have an uncle. であり,kind という形容詞を削っても
その情報を伝わるということです。確かにそういう解釈も可能です(もちろんこの文の
kind は限定用法
とも解釈できますが)。もし
I have a kind uncle. の kind
が補足説明用法の形容詞であるなら,上の
(g1)の下線部も同じ理屈で補足説明用法だと考えることができます。
(g1) I have an
uncle who lives in Hokkaido.
(私には北海道に住むおじが(1人)いる)
この文で話し手が伝えたい情報の中心は
I have an uncle であり,who以下は補足情報だ,つまり
(g1)はwhoの前にコンマを置いた文(すなわち(g2))と同じ意味を表しうることになります。
そうすると,
関係代名詞の前にコンマがなくても,関係詞節が補足説明用法の場合もある
ことになります。その例を1つ挙げておきます。