2015/8/9 up

大人の英文法104−補足説明用法の関係代名詞 

 

ここで取り上げる関係代名詞は,下のピンク色の分類に入るものです。全体像は 097 を参照してください。

品詞分類 その関係詞が作る節 該当する関係詞 用法の分類 関係代名詞の格
関係代名詞 名詞節 what    
形容詞節 who/whose/whom/which/that 限定用法/補足説明用法 主格/所有格/目的格
副詞節 what    
関係形容詞 名詞節 what(/which)    
副詞節 which    
関係副詞 名詞節 when/where/why/how    
形容詞節 when/where/why 限定用法/補足説明用法  
副詞節 when/where    

     ※上の表では複合関係詞(whoeverなど)は省略しています。

 

ここで言う「補足説明用法」は,学校文法では「継続用法」または「非制限用法」と呼ばれているものです。

まず例を見ておきます。

(a) I hate people who tell lies. (私はうそをつく人が大きらいだ) 〈限定用法〉

(b) I hate John, who tell lies. (私はうそをつくジョンが大きらいだ) 〈補足説明用法〉

(a)の下線部は先行詞(people)の意味を限定しており,who以下を省略すると「私は人間が嫌いだ」という

全く違う意味になってしまいます。一方,(b)は I hate John. だけで意味が完結しており,下線部は(なぜ

自分はジョンがきらいなのかという)補足説明ですね。

 

既に述べたことの確認になりますが,形容詞(に相当する語句)にはすべて上の2つの用法があります。

まず,083 形容詞の働き で,次の例を出しました。

(c) I live in a small town.(私は小さな町に住んでいます) 〈限定用法〉

(d) This small town is my birthplace.(この小さな町が私の故郷です) 〈補足説明用法〉

(c)の small は town の意味を限定しており,この文の中で重要な情報を担っています。

一方(d)の small はthis town に対する補足説明であり,省略しても意味に大差は生じません。

 

さらに 085 名詞を修飾する分詞 では,次の例を出しました。

(e1) All the novels written by Keigo Higashino are interesting. 〈限定用法〉

     =(e2) All the novels which were written by Keigo Higashino are interesting. 〈限定用法〉

     (東野圭吾によって書かれた小説は全部おもしろい)

(f1) The novel, written by Keigo Higashino, isn't very interesting.   〈補足説明用法〉

     =(f2) The novel, which was written by Keigo Higashino, isn't very interesting.  〈補足説明用法〉

     (東野圭吾によって書かれたその小説は,あまりおもしろくない)

(e1)では下線部を省略すると「すべての小説はおもしろい」という全然違う意味になります。

(B3)では下線部を省略した「その小説はおもしろくない」という文は,元の文の意味をそこねません。

 

この「大人の英文法」では,学校文法では使わない「補足説明用法」という言葉をあえて使っています。

その理由は,上に挙げた(b)(d)(f1)(f2)のような形容詞(に相当する語句)の使い方が,この言葉1つで

まとめて説明できるからです。

 

 

which,who(m),whose は,補足説明用法の関係代名詞として使えます。

この用法では,前にコンマを入れるのが普通です。いくつか例を追加しておきます。

(g1) I have an uncle who lives in Hokkaido. (私には北海道に住むおじが(1人)いる)   

(g2) I have an uncle, who lives in Hokkaido. (私には北海道に住むおじが(1人)いる)   

(g2)はコンマがあるので,下線部は補足説明用法です。前半だけで意味が確定しており,

「私にはおじが1人いて,その人は北海道に住んでいる」ということです(話し手のおじは

1人しかいません)。一方(g1)の下線部は限定用法であり,次の2つの可能性があります。

@ 話し手には2人以上のおじがいる。

A 話し手のおじは1人だけである。

この点を誤解している人が多いので注意してください。(g1)はAの意味にも解釈できます

 

これに関して,098 限定用法の関係代名詞 で挙げたクイズを再掲し,正解を示します。

注:読者の方の質問を受けて,以下の記述は2021年11月に修正しました。

次の2つの英文に関するア〜エの説明が正しければ○,正しくなければ×をつけてください。

(a) This is a photo I took there.

(b) This is the photo I took there.

ア (a)の話し手はその写真を初めて話題に出している。

イ (a)の話し手がそこで撮った写真は2枚以上である。

ウ (b)の話し手はその写真を既に話題にしている。

エ (b)の話し手がそこで撮った写真は1枚である。

 

<正解>  ア ○  イ ×  ウ 〇  エ ○

<解説>

たとえばI went to X Museum yesterday. This is a photo I took there. と言う場合,

第2文全体が新情報を提示しています(だからアは○)。この文のI took thereは,

This is an interesting book. の下線部と同じ働きと考えてよいでしょう。これらのa/anは

新情報を示す一種の記号であり,「複数の中の1つ」という前提はありません(だからイは×)。

一方(b)のthe photoは「その1枚の写真」の意味です(だからエは〇)。一方,このtheは

旧情報のマーカーであり,その写真のことが既に話題に出ていることを意味します(だからウは〇)。

(例) I went to X Museum yesterday and took a photo. This is the photo I took there. 

逆に言えばこのtheは前方照応の用法であり,後方照応ではありません(つまり「後ろに

修飾語があるからtheがついている」わけではありません)。

 

上の解説をふまえて,(g1)をもう一度見てみましょう。

(g1) I have an uncle who lives in Hokkaido. (私には北海道に住むおじが(1人)いる)   

この文では,下線部はたとえば I have a kind uncle. の下線部と同じ働きをしていると考えることが

できます。話し手は「私には親切なおじさんがいるんですよ」という情報の全体を新たに提示して

いるわけです。話し手はこの文を「複数のおじのうちで親切な一人」という意味で使っているわけでは

ありません。話し手のおじが1人でもこの文は使えます。

 

ところで,ここで1つの疑問が起きます。I have a kind uncle. がそういう(全体が新情報を提示する)

意味であるなら,この kind は「補足説明用法の形容詞」ではないのか?という疑問です。

つまり話し手の伝えたい情報の中心は I have an uncle. であり,kind という形容詞を削っても

その情報を伝わるということです。確かにそういう解釈も可能です(もちろんこの文の kind は限定用法

とも解釈できますが)。もし I have a kind uncle. の kind が補足説明用法の形容詞であるなら,上の

(g1)の下線部も同じ理屈で補足説明用法だと考えることができます。

(g1) I have an uncle who lives in Hokkaido. (私には北海道に住むおじが(1人)いる)   

この文で話し手が伝えたい情報の中心は I have an uncle であり,who以下は補足情報だ,つまり

(g1)はwhoの前にコンマを置いた文(すなわち(g2))と同じ意味を表しうることになります。

そうすると,

関係代名詞の前にコンマがなくても,関係詞節が補足説明用法の場合もある

ことになります。その例を1つ挙げておきます。

(h) The letter was from her fiancé who was working in London.

    (その手紙はロンドンで働く彼女の婚約者からのものだった)   

これはある英語の文章から抜粋したものですが,下線部は明らかに補足説明用法です。

(なぜなら「彼女の複数の婚約者のうちで,ロンドンで働いている1人」という解釈は非常識だから)。

このように,コンマの有無は限定用法と補足説明用法とを区別する本質的な指標ではありません。

 

補足説明用法の which には,前の内容全体(または一部)を先行詞とする用法があります。

このwhichは「そしてそのことは〜」の意味に解釈してかまいません。

(i) The boss said nothing, which made him uneasy.

    (上司は何も言わなかったが,そのことが彼を不安にした)   

    *この文のwhichの先行詞は「上司が何も言わなかったこと」です。

 

なお,補足説明用法(学校英語で言う継続[非制限]用法)の関係詞は,学校ではしばしば「接続詞を

使って言い換えられる」と教えられていますが,これは好ましくありません。上に挙げたいくつかの例から

わかるとおり,関係詞節をことさらに接続詞で言い換える必要はなく(またそれができない場合も多く),

その部分が補足的な説明であることがわかっていれば十分です。

 

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