アトラス総合英語 著者からのメッセージ(3)

著者からのメッセージ(2)へ戻る      著者からのメッセージ(1)へ戻る

 

◆「教師の勉強不足」という問題

 

ここからは,私(佐藤誠司)の体験談を交えて語ります。

 

私は仕事柄,中学英語の問題集からTOEIC対策本まで,英語学習に関する

さまざまな本を執筆してきました。同時に,「他人が書いた原稿のチェック」の

仕事も頻繁に入ってきます。そうした仕事に携わる中でよく感じるのは,

世間に出回っている「英文法」に関する本の中には,相当に怪しげなものも

少なからず含まれているということです。

 

私は予備校の勤務経験があり,かつては「受験英語」にどっぷり浸かっていました。

その世界では予備校の先生は神様であり,「ここは受験に出るからな!」と一言

言えば,生徒たちは新興宗教の信者のようにその言葉に洗脳されていきます。

その中に,たとえばこんな「知識」があります。

 

「先行詞が〈人+人以外〉のとき,関係代名詞はthatを使う」

 

この知識の例は,次の問いに見ることができます。2011年度に,関東のある

私立高校で出題された問題です。

 

 Look at the boy and the dog (      ) are playing over there.  〈空所補充〉

 @whose   Awho    Bwhich    Cthat (正解) 

 

この文の意味は「向こうで遊んでいる少年と犬を見なさい」ですが…

 

高校入試ではこのような問いが今でも時々見られますが,果たして実際にこんな

文を使うような状況があるのでしょうか?私は,この知識は「受験英語」という狭い

世界の中にだけガラパゴスのように残っている,都市伝説のようなものの1つだと

思っています。一般に日本の文法参考書や辞書は,外国(主にイギリス)で出版

された文法書の記述をベースにしています。それらは基本的に文法研究家が

書いたものなので,一般の学習者が知らなくてもいいようなこともたくさん含んで

います。また,著者ごとに主張する内容が違っており,1人の研究者の言うことに

他のみんなが同意するわけでは決してありません。上の「先行詞が少年と犬なら

関係代名詞はthatになる」のような「実用の役に立たないルール」が今日の入試に

残っている経緯は,およそ次のようなものです。

 

@外国のある文法書の中に,この「ルール」が出てくる。

Aそれを日本人の誰かが読み,自分が書いた文法参考書の中に入れる。

Bそのルールが日本の英文法学習の中で定着する。

C高校入試・大学入試にも出題されるようになる。

D「この知識は入試に出る」という共通理解が生まれる。

E入試の出題者が,自分が持っている「入試に出る[出してもよい]知識」の

  1つとしてこのルールを認識するようになる。

 

このプロセスには,改善すべき普遍的な問題点が内在しています。それは,

出題者が「自分の知っている受験英語」を無条件に正しいものだと盲信し,

誤った,あるいは価値のない知識を再生産しているということです。

私もかつては自分の教えている受験英語に疑問を感じてはいませんでしたが,

仕事の幅が広がって現実の英語に接する機会が増えるにつれて,自分が

今までいかに「ヘンな英語」を教えていたかを自覚するようになったわけです。

 

では,アトラスではそんな「入試には出るけれどヘンな英語」をどう扱って

いるのか?という疑問は当然出るでしょう。それは後で説明します。

 

◆インプットとアウトプットの違い

 

そうした「ヘンな英語」の1つに,「分詞構文」という学習分野があります。

私が高校生の頃も,あるいは高校教師として教壇に立っていた頃も,

文法参考書では次のような「書き換え」によって分詞構文を教えていました。

今でも高校の指導現場ではこのような方式が主流だと思います。

 

(a) When I was walking in the park, I saw an old friend.

→ (b) Walking in the park, I saw an old friend.

         (公園を歩いていたら,古い友人に会った)

 

(b)の文は間違っているわけではありません。しかし,アトラスでは基本的に

このような説明はしていません。その理由を以下に述べます。

 

英文法の知識は,次の2つに大別することができます。

 

@インプット(「読む」「聞く」)に必要な知識

Aアウトプット(「書く」「話す」)に必要な知識

 

たとえば「〜するとすぐに」という表現で考えると,as soon asは@Aの両方に

該当しますが,no sooner 〜 than ... は話し言葉ではまず使わず,日本人が

書く英文中にわざわざこんな難しい表現を入れる必要はありませんから,

「書く」「話す」についてはas soon as だけを知っていれば事足ります。

つまりno sooner 〜 than ... は,@だけに該当する知識です。

※ちなみに,ニュースなどを聞いていると as soon as もあまり出てこず,

類似表現で最も多く耳にするのは shortly after(〜してまもなく[すぐに])です。

 

では,分詞構文はどうでしょうか。日本人(少なくとも高校生)が「分詞構文」と

いう文法知識を身に付ける意味はどこにあるのか?と考えると,それは主に

「読む」「聞く」ためだと言ってよさそうです。つまり分詞構文という学習項目は

@のタイプの知識です。書いたり話したりする際に分詞構文をうまく使うのは

容易ではなく,またその必要もあまりありません。さらに言えば,大学入試でも

上の(a)→(b)のような「書き換え問題」はまず出題されません。

 

要するに一般の高校生にとって,分詞構文は読んで理解できれば十分なのです

しかし実際には,上の「書き換え」からもわかるように,多くの学校現場では

「分詞構文の作り方」を重点的に教えています。これは入試対策学習としても

非効率ですが,もっと根本的な問題があります。

 

  (b) Walking in the park, I saw an old friend.

 

日常会話で,このような文を使う人はいません。なぜなら,現在分詞を文頭に

置く形は文語的な表現であり,物語文などでしか使わないからです。

 

一方,現在分詞を後ろに置く形は,日常的にもよく使います。

 

(c)"Where were you?"  "I was in the garden, watering the flowers."

(「どこにいたの?」「庭にいたんだよ。花に水をやっていたんだ」)

 

この例では,答える側は「庭にいた」と言ってから「花に水をやりながらね」という

情報を(後から思いついて)加えています。このように分詞構文は,「〜しながら」

という情報を追加するのに使えます。ただし,高校生がこうした文をすらすら作る

のは簡単ではありませんが。(上の(b)の文が文語的に[=堅苦しく]響くのは,

この文が「あらかじめ全体の形を完成させから発せられている」からです。

一方(c)の文は,「途中で別の考えが浮かんで情報を継ぎ足す」というスタイルで

発せられています。したがって(c)の方が話し言葉には適しています)

 

また,新聞記事では次のようなタイプの文もよく見られます。

 

(d)The typhoon hit Okinawa, causing great damage to crops.

(台風が沖縄を襲い,作物に大きな被害を与えた)

 

この例の分詞構文は「そして〜」の意味であり,記事や客観的な説明文に出てくる

分詞構文はほとんどがこのタイプです。まとめると次のようになります。

 

●現在分詞の分詞構文を文の最初に置く例は,物語文以外では少ない。

●日常会話では「〜しながら」の意味で使うことが多い。

●客観的文章では「そして〜」の意味で使うことが多い。

 

現在分詞で始まる分詞構文については,入試対策としても実用上も,この程度の

ことを知っておけば十分だと私は思います。まして,次のような「独立分詞構文」

などは,実際に目にすることはまずないと言っていいでしょう。

 

(e)It being Sunday, the shop was close.

(日曜日だったので,店は閉まっていた)

 

アトラスでは,基本的に上のような考えに沿って,「読んで理解する」という観点から

分詞構文の説明を行っています。ちなみに独立分詞構文は,次の例を示しました。

 

(f)The damaged car was left on the road, its engine still running.

(壊れた車は路上に放置されており,エンジンはまだ動いていた)

 

この分詞構文も「〜しながら」(付帯状況)の意味を表しており,「情報を継ぎ足す」という

働きをしているので口語的です。... with its engine still running. と表現することもできます。

 

◆TM(教授用資料)について

 

分詞構文について上のような方向で説明するに当たっては,編集部とのやりとりの

中でいろんな意見が出ました。ラディカルな方針を取るなら「Walking in the park, ...

のようなタイプの文は載せない」という選択肢もあり得ましたが,結局このような形

(文頭の分詞構文が「時」「理由」などを表す例)も補足的に入れることになりました。

 

ここでは,「実際に使われる英語」と「大学入試に出る英語」との関係をどう考えるか?

という点が問題になりました。もっと端的な例の1つが「関係代名詞のbut」です。

 

There is no rule but has some exceptions.

(例外のない規則はない)

 

これは一種のことわざなのでネイティブに聞けばたいてい「知っている」という答えが

返ってきますが,このような定型表現以外で関係代名詞のbutを使うことは,現代の

英語では決してありません。そんなことは常識であり,英語教師なら誰でも知っている

……はずです。しかし実際には,次のようなトンデモ問題も入試には出ています。

 

あなたの決心を称賛しない者は,私たちのなかにはほとんどいない。
There [ your / of / few / but / us / determination / admire / are ].

 

これは,1999年度に,箱根駅伝の常連でもある関東の某私立大学で出題された

整序作文問題です。正解は (There) are few of us but admire your determination.

です(but=関係代名詞)が,私が何人かのネイティブにこの問いを解いてもらった

ところ,解けた人は皆無であり,みな一様に「こんな英語はない」と言いました。

このような入試問題が今でも出題される理由は,先に述べた「犬と少年」を先行詞と

する関係代名詞thatの場合と同じです。

 

私はかつて予備校で入試問題を分析する仕事をしており,こうした「怪しい英語」を

さんざん見てきました。そして,「このままでいいのか?」と強く思うようになりました。

そこでアトラスでは,できるだけこのような「実際に使われない英語」を載せるのは

やめよう,という方針をベースにしました。そこに立ちはだかったのが,「実際には

使われなくても大学入試には出ている知識をどう扱うか?」という問題です。

これに関しては,できるだけ入試分析を緻密に行い,出題頻度がゼロではないに

してもヒット件数が一定以下のものは載せるのをやめよう,という方向で編集部との

話がまとまりました。その結果,関係代名詞のbutについてはアトラスには載せない

ことになりました(入試での出題頻度が少なく,出る形は「例外のない規則はない」と

いうことわざに限られていたからです)。

 

難しい判断を迫られるケースもありました。たとえば次のような知識です。

 

(a) no more than 〜 = 〜しかない

(b) no less than 〜 = 〜もある

(c) not more than 〜 = 多くても

(d) not less than 〜 = 少なくとも

 

これは「受験に必須」として昔から学校で教えられてきた知識ですが,次の2つの

問題点があります。

@入試での頻度に大きな差があります。(a)(b)はよく出ますが,(c)(d)は近年の入試

ではほとんど出題例がありません。それはおそらく,「実際にも下の2つはほとんど

使われない」ことと関係しているはずです。

Aネイティブは(a)と(b),(c)と(d)を必ずしも上のように細かく区別していません

たとえば「ロングマン英和辞典」では次のように説明されており,私の経験からも

この説明が妥当だと思います。(日本の英和辞典は従来どおりの説明をしていますが)


no more than:(not more than,nothing more thanとも)

    たった…だけ,わずか…(否定的にも肯定的にも用いる)

・The cottage is not more than five minutes from the beach.

(コテージは海浜からわずか5分です)  ※「少なくとも」ではない点に注意!

 

つまり,no more than も not more than も,実際には区別なく使われるわけです。

であるならば,上の4つの表現を,「意味の違いに注意!」とか,「入試によく出る!」

と強調して教える意味はないのではないか?ということに当然なります。

 

しかし,問題はその先です。実際にはアトラスには,no more [less] than は重要表現

として,not more [less] than は補足的な知識として,従来どおりの意味を添えて掲載

しています。両者の扱いに差をつけたのは「せめてもの抵抗」です。

 

著者的には,not more [less] than は載せなくてもいい(あるいはno more [less] than

と同じ意味だと説明すればよい)と思いました。ただ,「この表現が載っていないのは

文法参考書としてどうなのか?」と,私が編集者だったとしても考えるでしょう。

「どうなのか?」とは,not more [less] than の説明を省いた場合,「取り上げる項目に

漏れがある,という印象を読者に与えるのではないか?」あるいはもっと露骨に言えば

「入試で重要な(はずの)知識が抜けている」という批判が現場の先生から来るのでは

ないか?ということです。

 

そのような一種の「自主規制」によって,基本的に文法参考書の内容は「横並び」に

なる傾向があります。「あっちの本に載っているのに,こっちの本に載っていないのは

まずいんじゃないの?」というわけです。その結果,「わかっちゃいるけど載せない

わけにいかない」という類の,入試対策としても実用的にも価値の低い知識が,

今日の日本の文法参考書を必要以上に分厚いものにしている,という印象を,

私個人は持っています。

 

アトラスの執筆を開始したとき(約2年前です),この状況に何とか風穴を開けたい,

と私は強く思いました。しかし,たとえば「関係代名詞のbutなんか,今の入試には

ほとんど出ませんよ」と私がいくら言ったところで,「いや,出るはずだ」と思いこんで

いる人は納得しないでしょう。私の主張に説得力を持たせるためには,たとえば

「入試問題データベースで検索しても,これだけしかヒットしません」というような,

何らかの客観的な証拠が必要です。しかしそんなデータをアトラス本体に載せる

ことはできません(学習者にとっては「入試に出ない」という情報は無意味です)。

 

そこで,「教師用マニュアル(TM=Teacher's Manual)を詳しくして,その種の情報は

TMの中で説明する」ということにしました。TMは現在(2012年12月)制作が進行中です。

一般に,教科書や文法書を学年(あるいはクラス)単位で採用した場合,先生用に

TMが出版社から提供されます(TMは市販されてはいません)。

 

アトラスのTMには,主に次の3つの情報が入っています。

 

@大学入試に関する情報

入試問題データベースの分析に基づいて,入試で問われやすい知識やよく出る問題の

具体例を説明しています。センター試験など過去の入試問題例も多く紹介しています。

Aコミュニケーションに役立つ情報

情報構造や音声の観点から,主に話す力・書く力をつけるための知識を説明しています。


B文法・語法のより深い知識を身につけるための情報

アトラス本体に盛り込めなかった,文法概念の説明などに関する補足情報です。

 

「大学入試に出るはずなのになぜアトラスには載っていないのか?」という疑問は,

@の情報を読めば理解できるはずです。ABは,いわばフォレストのPart1をより

詳しくしたものです。

 

アトラスのTMに入っている情報の例を,1つご紹介します。たとえば「中学英語から

やり直そう」というタイプの一般書の中には,次のような文がときどき見られます。

 

Look at that running boy. (あの走っている少年を見なさい)

 

この文には「1語の現在分詞は名詞の前に置く」という解説が添えられています。

 

しかし,この文は誤りです。ちょっとネイティブに聞けば間違いだとわかるはず

ですが,全部の本がネイティブチェックを受けているわけではありません。

実は私も,若い頃は高校生たちを相手にこの文を教えていました。

なぜなら,当時は文法参考書にもこのような例文が載っていたからです。

だからあまり偉そうなことは言えないのですが,自分が得てきた知識をより広く

世の中の英語学習者のために役立てたい,という思いはあります。

 

上のような文に関して,アトラスのTMに次の説明を入れました。

 

たとえば「走っている少年」をa running boyとは言えない点に注意。

× a running [swimming] boy

○ a boy (who is) running [swimming]

(走って[泳いで]いる少年)

 

名詞を修飾する形容詞には,次の原則がある。

・名詞の前では「恒久的・分類的特徴」を表す。

・名詞の後ろでは「一時的な状態」を表す。

この原則は分詞にも当てはまる。上の×の表現は,「走る[泳ぐ]のが専門の少年」と

解釈される。同様にa dancing [singing] girlは「踊り子[歌手]の少女」と解釈するのが

普通であり,「踊って[歌って]いる少女」ではない。


ただし,「〜ing+無生物」の形は「〜している○○」の意味で使える。

・a falling leaf(はらはらと散る木の葉)〈PEU〉

 *boiling water(お湯),a burning candle(燃えているろうそく)なども同様。


一方,「〜ing+人」の形が許容される度合いは,動詞の意味に関係していると思われる。

概して言えば,本人の意志による主体的な活動を表す動詞の現在分詞は〈人〉の

前に置けないが,そうでない動詞の場合は許容される

screaming children(ギャーギャー泣きわめいている子どもたち)〈PEU〉

この形やa sleeping baby(眠っている赤ん坊)が許容されるのは,screamがsleepは

動物的本能による活動であり,主体性が低いからだと考えられる。同じ理由で,

a singing girl(歌っている少女)とは言えないがa singing bird(鳴いている鳥)とは言える

(「鳴く(という性質を持つ)鳥」の意味にも解釈できる)。

【参考】working mothers(働く母親たち)が許容されるのは,mothers who work 

[×are working] の意味であり,現在分詞が恒久的・分類的特徴を表すから。

また,a smoking chimney(煙が出ている煙突)は問題ないが,a smoking manは

「(主体的に)たばこをすっている男性」ではなく「煙が出ている男性」という

不自然な意味になる。


以上の説明のとおり,一時的状態を表す分詞(形容詞)は名詞の後ろに置くのが

原則であって,それは1語であっても変わらない。ただしthat girl singing(あの歌って

いる少女)のような形はバランスが悪く,that girl singing over thereのように副詞的

要素を加えて後置修飾の形にすることが多い。

 

筆者的には,このTMはアトラス本冊と同じくらい価値があると思っています。

大学受験に関する説明は高校生にしか役立ちませんが,英文法のより深い知識

(たとえば上の説明)を扱った部分は,高校生,一般社会人,あるいは

英語の本を書いたり編集したりする仕事をしている人にも役立つはずです。

今のところTMを市販する予定はありませんが,これを読んだ読者の皆さんの中から

「自分もアトラスのTMがほしい」と編集部に多数のリクエストがあれば,もしかしたら

学校単位でアトラスを採用した高校の先生でなくても手に入るようになるかも…です。

(あくまで私の個人的な気持ちです)

 

※2016年4月に,アトラスのTMの中から一般の英語学習者に役立つ知識を抜粋した

ような内容の次の本が出ましたので,興味のある方はご一読ください。

「英語のしくみ」を5日間で完全マスターする本」(PHP文庫・共著)

 

最後に,TMの最終ページの原稿をここに掲載して,アトラスの営業トークを終えたいと

思います。長々とお付き合いいただき,ありがとうございました。

 

この冊子(TM)を執筆した本当の目的は,次の2つです。

「受験に必要だ」と一般に思われている知識の中には,今日の入試には必要ないと

思われるものも含まれています。そのような情報を高校の先生方に提供することが,

第1の目的です。

「多くの受験生が学習しているはずだ」と大学の先生方が予想して出題する文法問題

の中には,現実にはほとんど使われないような英語も含まれています。そのような

情報を大学の入試問題作成担当の先生方に提供することが,第2の目的です。

したがってこの冊子は,高校の先生方だけでなく,大学で入試問題を作っておられる

先生方にも読んでいただきたいと思っています。某産業になぞらえて言えば,英語の

世界にも「受験英語(英文法)村」のようなものの存在が感じられます。

その村の主な住人は,次の三者です。

(A)大学の(英文法の)入試問題作成者

(B)英語関連の出版社・文法参考書の著者

(C)高校教師

「実用性の低い知識でも,(A)が入試に出し(B)が参考書に載せているから,仕方なく

教えているのだ」と(C)が言います。「(A)が入試に出していることを全部入れておかないと

(C)からクレームが来るから,仕方なく無駄な情報も参考書に入れているのだ」と(B)が

言います。「(B)が参考書に載せ,(C)が学校で教えていることを大学入試に出すのは

当然ではないか」と(A)が言います。

そうした「責任の押し付け合い」,あるいは「赤信号をみんなで渡っている状況」が,

日本の英語教育に悪影響を与えているように思えてなりません。そして,自分自身が

その村の一員であることに,筆者はひどく心の痛みを感じています。

それが,この冊子を執筆した動機です。

端的に言えばこの冊子には,Atlas本冊で書けなかったことが書いてあります。

この冊子が,お読みいただいた「村人」の皆さんの問題意識を少しでも高める

手助けとなれば,筆者にとってそれに勝る喜びはありません。

 

アトラスに関するご意見などがあればお寄せください。  メール  

 

 

ここまでお読みいただいた方には,次の記事もぜひお勧めします。

 

大人の英文法

 

プロフィール(佐藤誠司)へ