2014/6/21 up

大人の英文法084−名詞を修飾する分詞(1) 

 

この項の説明は,アトラス総合英語 著者からメッセージ(3)から部分的に引用しています。

 

学校英語で最初に教えるのは,次のような知識です。

 

@ 1語の現在分詞+A[名詞]=〜しているA

 

A 1語の過去分詞+A[名詞]=〜される[された]A

 

たとえば boiling water(沸騰している水=お湯)は@の例,boiled egg(ゆでられた卵=ゆで卵)

はAの例です。

 

このように〈分詞+(人間以外の)物〉のときはあまり問題が起きないのですが,

 

〈現在分詞+人〉の形には要注意です。「〜している○○」の

意味では,この形は使わないのが賢明です。

 

上の「アトラス」の項にも書いていますが,次の文は誤りです。

 

× Look at that running boy. (あの走っている少年を見なさい)

 

083 形容詞の働き で説明したとおり,一般に名詞の前に置かれた形容詞は,その名詞の

恒常的な特徴を表します。したがって上の文は,「今走っている少年」ではなく「走ることを

専門に行っている少年」のように響きます。同様に a dancing girl は「踊っている少女」ではなく

「(プロの)踊り子の少女」という意味に解釈されます。

 

ただし,a sleeping baby(眠っている赤ん坊)のように,許容されるケースもあります。

これに関しては,「英語教育」(大修館)・2013年6月号の Question Box に興味深い記事が

載っています。a sleeping baby およびこれに似た形の許容度に関するものです。

 

(1a) ○   Wake up the sleeping baby.

(1b) △? Wake up the baby sleeping.

            (眠っている赤ちゃんを起こしなさい)

 

(2a) ○   Look at the sleeping baby.

(2b) ○   Look at the baby sleeping.

            (眠っている赤ちゃんを見なさい)

 

詳しい説明は省きますが,(1b)の文が不自然であることは何となくわかると思います。

参考までに,この例に続いて「英語教育」に書かれていた説明も引用しておきます。

(「英語語法大辞典・第4集」からの孫引きです)

 

Look at the sleeping baby. の場合は,その前にThe baby is sleeping. とか何か

そういった意味のことがすでに出ているときに使われる表現だと思います。

つまり眠っている赤ちゃんの存在が前提にあって,「その眠っている赤ちゃんを

見てごらん」といった意味です。

それに対して,Look at the baby sleeping. は,The baby's here. といったようなことが

前提にあるだけで,「眠っている」ということはまだ知られていません。この「眠って

いる」ということはこの文で初めて導入された新しい情報なのです(Look at the baby.

The baby is sleeping. のような2文をいっしょに表現したものと考えれば分かりやすい

でしょう)

 

この説明を念頭に置いて(2a)と(2b)を文強勢の面から考えてみましょう。

無標の強勢は次のようになります。

 

(2a) Look at the sleeping báby.

(2b) Look at the baby sléeping.

 

一般に〈形容詞+名詞〉のフレーズでは後ろの名詞を強く読みます。(2a)のsleepingも

一種の形容詞と考えることができるので,強勢はbabyに置かれます。したがって当然,

babyが新情報である(逆にsleepingは旧情報である)と解釈するのが自然です。

一方(2b)はSVOCの形に解釈され,上の黄色の説明中にあるとおり,the baby is 

sleeping というネクサス(主述)関係を含んでいます。よってtheのついているbabyは

旧情報であり,end-focus(文末焦点)の原理によってsleepingに強勢が置かれてこれが

新情報となります。これを単純化して言えば,こういうことです。

 

(2a)の話し手は,「赤ん坊を見なさい」と言っています。

(2b)の話し手は,「その赤ん坊の寝姿を見なさい」と言っています。

 

ただ,このあたりの説明は,文法マニア向けです。

大事なのは,最初に述べたとおり,「〈現在分詞+人〉の形は使わない方がいい」ということ。

さらに〈現在分詞+物〉の形も,下のように使うことはできません。(よく見かける間違いです)

 

 「彼女が歌っている歌は何?」 → × What's her singing song?

この日本語の正しい英訳は,What's the song she's singing? です。

あるいは,次のように言ってもいいでしょう。

・Do you know the name of the song she's singing?

  (彼女が歌っている曲の名前を知ってる?)

日本語は「彼女が歌っている+曲」のように修飾語を名詞の前に置くので,どうしてもその

習慣が抜けずに her singing song のような間違いをしがちです。英語では,長い修飾語は

名詞の後ろに置くということをくれぐれも忘れないように。

ちなみに,「私が通っている学校」は my attending school ではなく単に my school。

同様に「私が入っているクラブ」も my joining club ではなく my club です。


 

話を進めます。「分詞+名詞」の形の全体像をまとめると,次のようになります。

動詞

現在分詞

過去分詞

自動詞

@ a sleeping baby

(眠っている赤ちゃん)

B fallen leaves 

(落ち葉)

他動詞

A an exciting game

(わくわくする試合)

C a boiled egg

(ゆで卵)

 

上で述べたとおり,@のような「自動詞の現在分詞+名詞」という形は,なるべく使わない

方がいいと思います。一方,Aの exciting は他動詞の現在分詞ですが,純粋な形容詞と

考える方がわかりやすいと思います。Aのタイプの表現のほとんどは,「人に〜の

感情を起こさせる」という意味の他動詞にingをつけたものです。たとえば exciting は

excite(〈人〉を興奮させる)がもとになった形容詞で,「人を興奮させるような」という意味。

同様に surprise(〈人〉を驚かせる)からは surprising news(意外な[人を驚かせるような]

知らせ)という表現が作れます。(これについては形容詞の項で詳述します)

Bの「自動詞の過去分詞+名詞」は,「〜してしまった○○」という意味を表します

この過去分詞の基本的な意味は「完了」です。たとえば a retired businessman(引退した

実業家)など。ただし,例はあまり多くありません。

Cの「他動詞の過去分詞+名詞」は,「〜される[された]○○」という意味で,

これが日常的には最もよく使われます。

Cの過去分詞には,カタカナの日本語として取り入れられているものもたくさんあります。

たとえば「フライドチキン」は fried chicken(揚げられた鶏肉)の意味。

また,英語が日本語に取り入れられるとき子音が脱落する現象がよく起こります。

たとえば日本語の「アイスコーヒー」に当たる英語は iced coffee,つまり「氷で冷やされた

コーヒー」です。同様に「スクランブルエッグ」は scrambled eggs(かきまぜられた卵)です。


 

では「フライパン」はどうでしょうか。英語では frying pan と言います。

この〜ingは「〜している」の意味ではなく,「〜するための」の意味。fryingは動名詞です。

fryには「揚げる(deep-fry),炒める(stir-fry)」の意味があり,それらの料理をするためのなべ(pan)がフライパン。

学校では次のような対比で教えることもあります。

・a smoking chímney = 煙が出ている煙突  〈smoking=現在分詞〉

・a smóking room = 喫煙室 (たばこをすうための部屋) 〈smoking=動名詞〉

実際に使われるのは,下の形,つまり「〜するための○○」という意味を表すものの方が多いように思います。

たとえば「居間」は living room(暮らすための部屋),「ふくらし粉」はbaking powder(原義:焼くための粉)ですね。

shooting star(流れ星)やrising sun(朝日)はもちろん〈現在分詞+名詞〉ですが。

 

話のついでに,次の説明もしておきます。

(a) the rising sun = the sun that is rising (上っている太陽=朝日) 〈進行〉

(b) a working mother = a mother who works ((外で)働く母親) 〈能動〉

(b)の言い換えが is working ではなく works である点に注意してください。

(a)は「今まさに上っている太陽」つまり〈進行〉を表しますが,(b)は「習慣的に働いている母親」の意味であり,〈進行〉の意味はありません。

021 分詞とはで,現在分詞の基本的な意味は「進行」「能動」だと説明しました。上の(a)(b)はその例です。


 

補記(2024/1/8加筆)

We must adapt to changing customer needs. という文のchangingの意味:

次の2つの文を比較してみます。

@We must adapt to the changing customer needs.

AWe must adapt to changing customer needs.

下線部のの意味:

@(今まさに)変化している最中の顧客のニーズ[=the customer needs that are changing]

A変化する性質を持つ顧客のニーズ [=customer needs that change]

つまり,Aのchangingは「変化している[しつつある]」ではなく,「変化する(性質を持つ)」の意味です。

類例:

BThe increasing amount of carbon dioxide in the atmosphere is causing global warming.

CAn increased amount of carbon dioxide in the atmosphere causes global warming.

Bは進行中の出来事を,Cは一般論を表す文です。Cのincreasedは自動詞の過去分詞(完了の意味を表す)です。

@Bの〈the+-ing+X〉の形では,Xは個別具体的なものであり,「今まさに〜している(特定の)X」という意味を表します。

一方ACのように-ingの前にtheがない場合は,「〜する性質を持つXは(一般に)…」という意味を表します。

 


 

補記(2024/1/7加筆)

a broken glass(割れたコップ)について:

このbrokenは(分詞)形容詞ですが,もともと「他動詞の過去分詞」「自動詞の過去分詞」のどちらでしょうか。

brokenが他動詞の過去分詞なら,原義は「(誰かによって)割られたコップ」となります。

一方,「コップが割れた」は,The glass broke. と言います。このbrokeは自動詞です。

したがって,次のように説明することができます。

@a glass that has broken → Aa glass that is broken → B a glass (that is) broken → C a broken glass

@のbroken(過去分詞)が,Aでは(完了した結果としての)状態を表す形容詞に変化しています。

そして一般に「〈関係代名詞+be動詞〉は省略できます。

そこでBの that is を省くと a glass broken となりますが,「1語の形容詞は名詞の前に置く」というルールによってCができます。

つまり,a broken glassは,fallen leaves(落ち葉)やdeveloped countries(先進国)などと同類の表現と考えることができます。

次の例も同様です。

This unit kitchen is a dream come true for any cook.

(このユニットキッチンは,どんな料理人にとっても夢のような場所だ)

a dream come trueは「夢がかなうこと,実現した夢」の名詞句で,たとえばジーニアス英和では

「comeは過去分詞;come trueはdreamを修飾する」と説明されています。

ここでも,@a dream that has come true → Aa dream (that is) come true と考えることができます。

@のcomeは(自動詞の)過去分詞ですが,Aではcome trueが(状態を表す)1つの形容詞になっている,ということです。

 

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