2017/1/9 up

大人の英文法123−第3文型(SVO) 

 

学校で習う5つの文型のうち,最も使用頻度が高いのは第3文型(SVO)だと言われています。

その理由については「英語のしくみ」でも説明していますが,単純化して言うと次のようになります。

英文の意味は基本的に「単語を並べる順番」によって決まります。

たとえば Jack loves Betty. は「ジャックはベティを愛している」という意味であり,

「ベティはジャックを愛している」という意味には解釈できません。

これを定式化して言うと,次のようになります。

A+V[述語動詞]+B = AB〜する

このように英語の文は,Vを中心にしてその前後に言葉を並べることによって作られます。そして,

・Vの前にあるものが主語(〜は)である。

・Vの後ろにあるものが目的語(〜を)である。

この基本的なルールによって,Jack loves Betty. の意味が1つに決まるわけです。

参考までに言うと,日本語では単語の順番ではなく助詞が文の意味の決定に大きな役割を果たします。

たとえば Jack loves Betty. は「ベティを愛しているのだ,ジャックは」と訳すこともできます。

ジャックとベティの順番は入れ替わっていますが,「ベティ」「ジャック」という助詞が文の意味を決めています。

 

英文の構造としてSVOの頻度が最も高いという事実は,コーパスなどの統計からも実証できます。

また,次のような表現はSVOが無標である(他の文構造よりも優先して使われる)ことを物語っています。

(a)○This is the bag John gave to me

    ×This is the bag John gave me

       (これが,ジョンが私にくれたバッグです)

(b)○What did you give to Lisa

    What did you give Lisa

       (君はリサに何をあげたの?)

giveはSVOOの形で使う動詞ですが,これらの例では to が必要な点に注意してください。

((b)の△の文は使われることもありますが,toを入れるのがベターです)

×や△の文は,「gave me=私を与えた」「give Lisa=リサをあげる」のように響くからです。

このことは,giveのようなSVOOの動詞であっても〈give+O(1つ)〉の形で使われると

「Oを与える[あげる]」という解釈が優先される(つまりSVOの解釈が無標である)ことを意味します。

(c1)○The patient recovered quickly

              S                V

(c2)The patient made a quick recovery. 

               S          V             O

       (その患者は素早く回復した)

どちらも正しい文ですが,語数としては(c1)の方が少ないので,普通に考えると(c1)が好まれるはずです。

しかし実際には(c2)もよく使われます。(c2)はSVOの構造を持るので,ネイティブにとってなじみ深い形だからです。

このように,SVで表現できるのにわざわざSVOの形を使う例が英語には多くあります。

たとえば「電話する」は1語なら call ですが,〈V+O〉の形にして make a (phone) call とも表現できます。

また「彼は大いに進歩した」は He has progressed greatly. よりも He has made great progress. の方が普通です。

 

(d1) I think it necessary to change the plan.

        S     V    O        C  

(d2) I think (that) it is necessary to change the plan.

         S    V                        O  

   (その計画は変更する必要があると思う)

学校では(d1)と(d2)の書き換えを教えます。どちらも正しい文ですが,(d1)は堅い表現であり,実際には

(d2)の方がよく使われます。つまり「SVOの方がSVOCより好まれる」ということです。

 

(e) This book made [the writer famous]. (この本がその作家を有名にした)

           S           V      ネクサス目的語

学校英語ではこの文はSVOCですが,「この本は[その作家が有名である状況]を作った」のように説明できます。

つまり the writer famous の全体がmadeの目的語(O)であると考えるわけです。

そして,Oの中に主述関係が含まれているものを「ネクサス目的語」と言います。(ネクサスについては後述)

そう考えると,SVOCの構造も基本的にはSVOの延長としてとらえることができます

以上のような説明が可能なことからも,SVOが英文の最も基本的な構造の1つであることがわかります。

 

なお,SVOは普通は「SはOを〜する」の意味ですが,そうでない場合もあります。

(f) He entered the room. (彼はその部屋入った)

(g) She married a rich man. (彼はある金持ちの男性結婚した)

これらについては,そもそもO(目的語=Object)とは何か?という点を理解しておく必要があります。

意味の面から言うと,目的語はたとえば次のような意味を表します(ほんの一例です)。

〈場所〉 We visited Kanazawa. (私たちは金沢を訪れた)

〈結果〉 She made a cake. (彼女はケーキを作った)

〈同族目的語〉 He lived a happy life. (彼は幸福な生活を送った)

しかしこのような分類には,実用的な価値はほとんどありません。次に,形の面から考えてみましょう。

(h1) I remember his name. (私は彼の名前を覚えている)

(h2) I remember staying with him. (私は彼の家に泊まったことを覚えている)

(h3) I remember that he invited me to dinner. (私は彼が夕食に招待してくれたことを覚えている)

大切なのは,これらの文の下線部がすべてOであり,3つともSVOという同じ文構造を持っていることを

理解することです。3つの下線部の共通点は,「名詞の働きを持つ」ということです。

016 品詞と文の要素との関係 で示した表を再掲します。

文の要素

S(主語)

V(述語動詞)

O(目的語)

C(補語)

修飾語

品詞

名詞

代名詞

動詞

名詞

代名詞

名詞

形容詞

形容詞

副詞

 

このように,Oの位置には名詞(または代名詞)を置きます。

したがって,「Vの後ろに名詞(句・節)があれば,それはOである」と考えてほぼOKです。

そして,それが不定詞・動名詞・名詞節であれば,その部分の意味は基本的に「〜を」です。

つまり,enter a room(部屋に入る)とか marry him(彼と結婚する)のようにOが「を」以外の意味に

なるのは,〈(他)動詞+(純粋な)名詞[代名詞]〉のときだけだと考えてかまいません。

なお,上の表からわかるとおり,〈S+V+名詞〉の形では,Vの後ろの名詞がC(補語)の場合もあります。

しかし,121 第2文型(SVC) で説明したとおり,

SVCのCとして名詞を置くことのできる動詞は,becomeだけである

と覚えておいてかまいません。(したがってbecome以外の動詞の後ろの名詞はO[目的語]です)

以上をまとめると,次のようになります。

@〈S+V+名詞(の働きをする要素)〉は,基本的にSVOである。

A〈V+不定詞(名詞的用法)・動名詞・名詞節〉の形は,「〜を…する」の意味である。

※ただし,〈自動詞+不定詞〉の形は「〜を…する」ではありません。(→073 V+to do

 

※以下の記事は2017年1月22日に追加しました。

SVOのOの働きをする語句には,次のようなものがあります。

(1) 名詞: I want a car. (私は車がほしい)

(2) 代名詞: I like him. (私は彼が好きだ)

(3) 不定詞(句): I want to buy a car. (私は車を買いたい)

(4) 動名詞(句): I like playing tennis. (私はテニスをするのが好きだ)

(5) that節(〜ということ): I hope (that) he will come. (彼が来てくれればいいと思う)

(6) if/whether節(〜かどうか): I wonder if he will come. (彼は来るだろうか)

(7) 疑問詞節(間接疑問): I don't know where she lives. (彼女がどこに住んでいるか私は知らない)

(8) 自由関係詞で始まる節: I believe what he said. (私は彼が言ったことを信じる)

(9) 複合関係詞で始まる節: I believe whatever he says. (私は彼が言うことなら何でも信じる)

 

なお,たとえば I want to buy a car. という文の構造は,2通りの説明ができます。

@ I want to buy a car.

      S    V            O

A I want to buy a car.

      S          V                 O

普通は@のように説明しますが,Aは want to を一種の助動詞だと考えたものです。

つまり I(S)+will buy(V)+a car(O). と同じ理屈で考えるわけです。

その説明の根拠は次のとおりです。

Aの答を引き出す疑問文は,What do you want to buy?(君は何を買いたいのか)です。

What do you want? ではありません。

(What do you want? という問いに対しては I want a car. と答えるべきであり,

I want to buy a car. という答えは不自然です)

したがって〈want+to buy a car〉ではなく,〈want to buy+a car〉だ,というわけです。

ただし一般の学習者にとっては,このような分析は重要ではありません。

実用上は I want to 〜(〜したい)というチャンクを覚えておくだけで十分です。

 

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