056 準動詞の全体像
で説明したとおり,準動詞(不定詞・動名詞・分詞)はS・O・C・修飾語の働きをします。
しかしV(述語動詞)の働きはできません。
(a) I like to sing
karaoke. (私はカラオケを歌うのが好きだ)
S
V O
この文のVは like であり,to sing はVではありませんね。
一方,Vの形を変える要素には,015
英文法の全体像 で説明したとおり,時制(および相)・態・法・
(法)助動詞の4つがあります。これらと準動詞との関係を考えてみましょう。
◆ 時制とは「時を表すVの形」,法とは「話し手の気分を表すVの形」ですから,Vになれない準動詞
にはこれらの概念は適用されません。たとえば to sing
は,それ自体が「時」や「話し手の気分」を表す
ことはありません。
◆ 法助動詞の働きは,045
助動詞の全体像
で説明したとおり,V(の中心となる動詞)にさまざまな
意味を加えることです。ただし助動詞の後ろには動詞の原形を置くというルールがあり,この原形は
文法的には(原形)不定詞です。
(b) I will buy a new
smartphone. (私は新しいスマホを買います)
will buy は「買うという行為(buy)を行うだろう(will)」の意味で,buy
自体は時を表しませんが,
will(現在形)があるので「現在の推量」だとわかります。(a)(b)からわかるとおり,準動詞を使った
文には時を表す動詞・助動詞が別に含まれており,それによって発話時(現在・過去)が示されます。
◆ 次に,相(進行相・完了相)についてはどうでしょうか。
008 時制と相
で示した「相」の定義を再掲しておきます。
・相=基準時(時の流れの中の1点)において出来事がどのように進行しているかを表す形
基準時は時制によって表されます。その基準時において出来事が「進行中」であったり「完了」
していたりするとき,準動詞を進行相や完了相で使うことができます。
(c) I happened to be watching
TV then. (私はそのときたまたまテレビを見ていた)
この文の下線部は「進行相の不定詞」です。(happen to do=たまたま〜する)
不定詞の基本形は〈to+動詞の原形〉ですが,この「動詞の原形」の位置に
be watching という
進行相(be動詞+〜ing)が置かれています。be動詞の原形は
be なので,to の後ろには be が
置かれます。
【参考】 I happened to was watching TV then.
と言えないのは,「不定詞の to の後ろには原形を置かねばならない
から」とも説明できますし,「不定詞は時の概念を表さないから過去形は使えない」と考えることもできます。
なお,不定詞と完了相の組み合わせについては次の項で説明します。
◆ 最後に,準動詞と態の関係を考えます。
030 「態」とは
で示した「態」の定義は,次のとおりです。
・能動態 =
主語から見て「〜する」という意味を表すVの形
・受動態 =
主語から見て「〜される」という意味を表すVの形
030では説明の便宜上「Vの形」としましたが,ここで次のように(より一般的な定義に)修正します。
・能動態 =
主語から見て「〜する」という意味を表す動詞の形
・受動態 =
主語から見て「〜される」という意味を表す動詞の形
ここで言う「動詞」とは,V(述語動詞)ではなく品詞としての動詞の意味です。
たとえば choose(〜を選ぶ)の受動態は be chosen(選ばれる)です。
そこで,準動詞と受動態を組み合わせた次のような形ができます。
(d) I happened to be chosen
MC. (私はたまたま司会者に選ばれた)
下線部は「受動態の不定詞」ということになります。
【参考】 態は時制や助動詞とも組み合わせることができます(例:was
chosen,will be chosen)。